行年三十憶南遊, 穩駕滄溟萬斛舟。 常記早秋雷雨霽, 柁師指點説流求。 |
昔に感ず
行年 三十 南遊を憶 ふ,
穩 かに駕 す滄溟 萬斛 の舟。
常 へに記す 早秋 雷雨霽 れ,
柁師 指點して流求 を説 きしを。
◎ 私感訳註:
※陸游:南宋の詩人。宣和七年(1125年)〜嘉定二年(1209年)。山陰 (現・浙江省紹興県)の人。字は務観。号して放翁。夔州通判、厳州権知事、軍器少監、礼部郎中兼実録院検討、宝謨閣待制などを歴任した。尤袤、楊万里、范成大とともに南宋四大家と称された。祖国を憂うる愛国詩人といわれるとともに、日常の生活をもこまやかに歌い上げた。
※感昔:昔の事に感じて思いを起こす。 *郷里・山陰の作といわれる。
※行年三十憶南遊:(作者の)三十歳の時、南方に旅をしたことを思い起こして。 ・行年:〔かうねん;xing2nian2○○〕その人の今までに経た年齢。その人の現在の年齢。 ・憶:思い出す。思い起こす。記憶する。 ・南遊:南方に旅をする。年表より、作者は紹興二十八年(1158年)(満三十四歳)、福建省寧徳県主簿となって、赴任した。
※穏駕滄溟万斛舟:青海原(あおうなばら)に、大きな船で静かに乗り出した。 ・駕:(乗り物に)乗る。(乗り物を)運転する。 ・滄溟:青海原(あおうなばら)。 ・万斛:はかりきれないほどに多い分量を謂う。1斛=10斗。
※常記早秋雷雨霽:初秋の雷雨が晴れて(舵取りが、指し示しながら台湾を説明してくれたことを)いつまでも覚えている。 ・常記:いつまでも覚えている。とこしえに記す。=長記。北宋・蘇軾の『水調歌頭』快哉亭作「落日繍簾卷,亭下水連空。知君爲我、新作窗戸濕紅。長記平山堂上,欹枕江南煙雨,渺渺沒孤鴻。認得醉翁語,山色有無中。」とある。 ・霽:晴れる。
※柁師指点説流求:舵取りが、指し示しながら台湾を説明してくれた(ことをいつまでも覚えている)。 ・柁師:かじとり。現代・『大海航行靠舵手』「大海航行靠舵手,萬物生長靠太陽。雨露滋潤禾苗壯,幹革命靠的是毛澤東思想。魚兒離不開水呀,瓜兒離不開秧。革命群衆離不開共産黨,毛澤東思想是不落的太陽。」とある。 ・柁:〔だ;duo4●〕(船などの)かじ。船尾に附けて、船の方向を決める道具。 ・指点:指し示す。教える。現代・毛沢東の『沁園春・長沙』一九二五年に「獨立寒秋,湘江北去,橘子洲頭。看 萬山紅遍,層林盡染;漫江碧透,百舸爭流。鷹撃長空,魚翔淺底,萬類霜天競自由。悵寥廓,問 蒼茫大地,誰主沈浮? 携來百侶曾游。憶往昔、崢エ歳月稠。恰 同學少年,風華正茂;書生意氣,揮斥方遒。指點江山,激揚文字,糞土當年萬戸侯。曾記否,到 中流撃水,浪遏飛舟?」とある。 ・説:物事を分けて明らかにすること。解釈する。教える。説(と)く。 ・流求:台湾。(=小琉球)のこと。或いは琉球(沖縄)(=大琉球)。台湾の地について、『中国歴史地図集』(中国地図出版社1996年北京)では: ・戦国時代…無し ・前漢…無し ・後漢…夷洲 ・呉…夷洲 ・西晋…夷洲 ・南朝・斉…夷洲 ・南朝・陳…夷洲 ・隋…流求 ・唐…流求 ・北宋…流求 となっている。『宋史』巻四百九十一 列伝二百五十「外国七」(中華書局版14127ページ)のトップに 「流求國在泉州之東,有海島曰彭湖,烟火相望。」とある。(現在と地名が同じ場所で移動していないとすると)「彭湖」は台湾西岸の島嶼名なので、 『宋史』の編輯段階では、「流求」は台湾の地を指していたことになろう。
◎ 構成について
2019.2. 7 2. 8 2. 9 2.10 2.11 2.12 |