蠶婦 | |
北宋・張俞 |
昨日入城市,
歸來涙滿巾。
遍身羅綺者,
不是養蠶人。
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蠶婦
昨日 城 の市 に入り,
歸り來 りて 涙巾 に滿たす。
遍身 羅綺 の者は,
是 れ養蠶 の人ならず。
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◎ 私感註釈
※張俞:北宋の詩人。生歿年不詳。字は少愚、叔才。号して白雲居士。益州・郫(現・四川省郫県)の人。
※蚕婦:養蚕業にたずさわる女性。 *似た趣の詩に、北宋・梅堯臣の『陶者』「陶盡門前土,屋上無片瓦。十指不霑泥,鱗鱗居大廈。」や唐・李紳の『憫農』「春種一粒粟,秋成萬顆子。四海無闢c,農夫猶餓死。 鋤禾日當午,汗滴禾下土。誰知盤中餐,粒粒皆辛苦。」や南宋・謝枋得の『蠶婦吟』「子規啼徹四更時,起視蠶稠怕葉稀。不信樓頭楊柳月,玉人歌舞未曾歸。」がある。
※昨日入城市:昨日、街の市(いち)に出かけた(が)。 ・入城市:街の市(いち)に行く。 ・城市:街(まち)の市(いち)の意。なお、現代語では「都市」の意となるが、ここでは関係が無い。
※帰来涙満巾:(街から)帰ってきたら、涙がハンカチにいっぱいになっていた。 ・帰来:(街から)もどってくる。 ・涙満巾:涙がハンカチにいっぱいになっていた、の意。
※遍身羅綺者:全身に美しい絹織物を着た者は。 ・遍身:〔へんしん;bian4shen1●○〕からだじゅう。全身。満身。=遍体。 ・羅綺:〔らき;lio2qi3○●〕うすぎぬとあうあぎぬ。美しい絹織物。美しい衣服。美しい衣服を着た人。 ・者:もの。…ものは…。「〔……〕+者」で、「者」の前を名詞化して、…は、…とは、の意で「…ものは」と読む。
※不是養蚕人:養蚕を(生業(なりわい)としている)者ではなかった。 ・不是:(…は)…ではない。そうではない。〔A不是B:Aは、Bではない〕「是」の否定。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:Aは、Bである〕。 ・養蚕:蚕を飼い育て、繭をとり、絹をつくること。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「巾人」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
●●●○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
2012.10.17 10.18完 2019. 8.14補 |
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