湖上 | |
南宋・徐元傑> |
花開紅樹亂鶯啼,
草長平湖白鷺飛。
風日晴和人意好,
夕陽簫鼓幾船歸。
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湖上
花は 紅樹に開きて亂鶯 啼 き,
草は 平湖に長 じて白鷺 飛ぶ。
風日 晴和 にして人意 好く,
夕陽 に簫鼓 幾船 か歸る。
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◎ 私感註釈
※徐元傑:南宋の人。(1196年〜1246年)。字は伯仁。号して梅野。現・江西省の上饒の人。紹定五年(1232年)の進士。殉職をしたため、忠愍との諡を賜った。上饒県に、旧居と祠がが現存する。
※湖上:湖の畔(ほとり)。ここの湖は、杭州の西湖。 ・…上:(…の)ほとり。場所を指す。この用例には、金・完顏亮の『呉山』「萬里車書盡混同,江南豈有別疆封。提兵百萬西湖上,立馬呉山第一峰。」や盛唐・岑參の『與高適薛據同登慈恩寺浮圖』「塔勢如湧出,孤高聳天宮。登臨出世界,磴道盤虚空。突兀壓~州,崢エ如鬼工。四角礙白日,七層摩蒼穹。下窺指高鳥,俯聽聞驚風。連山若波濤,奔走似朝東。松夾馳道,宮觀何玲瓏。秋色從西來,蒼然滿關中。五陵北原上,萬古濛濛。淨理了可悟,勝因夙所宗。誓將挂冠去,覺道資無窮。」や中唐・白居易の『送春』「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」や中唐・張籍の『征婦怨』「九月匈奴殺邊將,漢軍全沒遼水上。萬里無人收白骨,家家城下招魂葬。婦人依倚子與夫,同居貧賤心亦舒。夫死戰場子在腹,妾身雖存如晝燭。」や元・楊維驍フ『西湖竹枝歌』「蘇小門前花滿株,蘇公堤上女當壚。南官北使須到此,江南西湖天下無。」があり、明・袁宏道の『江上』に「二月山花接郡城,絳桃垂柳獨分明。請看高恚{人草,別作春一段情。」とある。現代でも張寒暉の『松花江上』「我的家在東北松花江上,那裡有森林煤鑛,還有那滿山遍野的大豆高粱。我的家在東北松花江上,那裡有我的同胞,還有衰老的爹娘。」がある。
※花開紅樹乱鶯啼:ヒルギ(/マングローブ)に花が咲いて、枝から枝へと飛び移るウグイスが鳴き。 ・花開紅樹:ヒルギ(/マングローブ)に花が咲く、意。 ・紅樹:ヒルギ。マングローブ。南方の木。 ・乱鶯啼:枝から枝へと飛び移って啼くウグイス。
※草長平湖白鷺飛:草が伸びた、風が無くて浪が静かな湖では、シラサギが飛んでいる。 ・長:〔ちゃう;zhang3●〕生える。伸びる。大きくなる。 なお、〔ちゃう;chang2○〕は、ながい。ここは、前者の意。 ・平湖:風が無くて浪が静かな湖面、の意。 ・白鷺:シラサギ。水鳥の一。
※風日晴和人意好:風や日光は、晴れてのどかであって、人の気持ちは素晴らしい。 ・風日:風と日光。風や日光。 ・晴和:空が晴れてのどかである。 ・人意:人の考え。人の気持ち。人の願望。南宋・李清照の『永遇樂』に「落日熔金,暮雲合璧,人在何處? 染柳烟濃, 吹梅笛怨, 春意知幾許。元宵佳節,融和天氣,次第豈無風雨?來相召,香車寶馬,謝他酒朋詩侶。 中州盛日,閨門多暇,記得偏重三五。鋪翠冠兒,撚金雪柳,簇帶爭濟楚。如今憔悴,風鬟霜鬢,怕見夜間出去。不如向、簾兒底下,聽人笑語。」とある。
※夕陽簫鼓幾船帰:夕日(≒夕方)になって、笛や太鼓(等の各種の楽器の音が聞こえる遊興の船の)いくらかの船が帰(りかける)。 ・簫鼓:〔せうこ;xiao1gu3○●〕笛や太鼓(等の各種の楽器)。 ・簫:ハーモニカ状に横一列になったふえ。 ・幾船帰:どれほどの船が帰るだろうか、いくらかの船が帰る、の意。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「啼飛帰」で、平水韻上平八齊(啼)・五微(飛帰)。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2019.9.25 9.26 |
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