茶陵道中 | |
南宋〜元・蕭立之> |
山深迷落日,
一徑窅無涯。
老屋茅生菌,
饑年竹有花。
西來無道路,
南去亦塵沙。
獨立蒼茫外,
吾生何處家。
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茶陵 道中
山 深くして落日 に迷ひ,
一徑 窅 として涯 無し。
老屋 茅 に菌 を生 じ,
饑年 竹に花 有り。
西より來 たるに 道路 無く,
南に去 くに 亦た塵沙 。
獨 り立つ蒼茫 の外 ,
吾が生 何 れの處にか家 せん。
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◎ 私感註釈
※蕭立之:〔せう(現・しょう)りつし;Xiao1Li4zhi1〕南宋末〜元の詩人。1203年〜歿年不詳。字は斯立。号して氷崖。寧都(江西省内)の人。
※茶陵道中:茶陵(ちゃりょう)への旅路で。 *一つの王朝(明)が倒れ、混乱の中を旅行く作者自身の姿と昏迷の祖国の姿を共にして描いたのか。 ・茶陵:地名。現・湖南省の株洲市に位置する県で、岳陽楼の南南東250キロメートルのところ。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)63−64ページ荊湖南路 荊湖北路 京西南路にある。 ・道中:旅の途中。
※山深迷落日:山の奥深くで、夕暮れに迷ってしまって。 ・落日:日暮れ。日没。夕方。
※一径窅無涯:一本の小道が、深く遠くまで果(は)てしがない。 ・径:小道(こみち)。 ・窅:〔えう (現・よう);yao3●〕深く遠い。 ・無涯:涯(はて)が無い。
※老屋茅生菌:古い家の萱(かや)葺(ぶ)きの屋根には茸(キノコ)が生えて。 ・茅:〔ばう;mao2;○〕カヤ。チガヤ。カヤ葺(ぶ)きの屋根。 ・生:はえる。 ・菌:きのこ。くさびら。たけ。山野の朽ち木などに生じるきのこ。また、かび。菌。
※饑年竹有花:「飢饉の年には、竹が花をつける」(と謂われるが、目前の景では)、竹が花をつけている。 *実際の自然界の聯関は: 「竹が花をつける⇒種子ができる。種子は食べられる⇒結果、自然界に多くの食べ物が出回る⇒小型の野生動物が増える⇒増えた小動物が人間の田畑を荒らす⇒人間の社会に飢饉が発生する」、ということだそうだ。 ・饑年:飢饉の年(とし)。 ・竹有花:竹が花を著(つ)ける。
※西来無道路:西の方から来たが、道らしい道もなくて。 ・西来:西の方から来る。
※南去亦塵沙:南の方へ行くのだが、そちらもまた塵(ちり)や砂ぼこり(のよう)だ。 ・南去:南の方へ行く。 ・亦:…もまた。 ・塵沙:(俗世間の)塵や砂ぼこり。
※独立蒼茫外:(供もなく)ただ独(ひと)りで薄暗くひろい中で佇(たたず)み。 ・独立:(供もなく)ひとり佇(たたず)む。 ・蒼茫:〔さうばう;cang1mang2○○〕目のとどく限りうす暗くひろいさま。また、(空、海、平原などの)広々として、はてしのないさま。見わたす限り青々として広いさま。ここは、前者の意。蛇足になるが、「蒼莽」は〔さうまう(ばう);cang(1)mang3●●(上声上声)〕となる。「蒼」は多音字。明・楊一Cの『山丹題壁』に「關山偪仄人踪少,風雨蒼茫野色昏。萬里一身方獨往,百年多事共誰論。東風四月初生草,落日孤城早閉門。記取漢兵追寇地,沙上猶有未招魂。」とある。(また、清末/中華民国・梁啓超の『黄河』に「黄河黄河出自崑崙山,遠從蒙古地,流入長城關。古來聖賢,生此河幹,獨立堤上,心思曠然。長城外,河套邊,黄沙白草無人煙。思得十萬兵,長驅西北邊,飮酒烏梁海,策馬烏拉山。誓不戰勝終不還,君作鐃吹,觀我凱旋。」)とあり、現代・毛沢東の詩詞に:『沁園春・長沙』一九二五年に「獨立寒秋,湘江北去,橘子洲頭。看 萬山紅遍,層林盡染;漫江碧透,百舸爭流。鷹撃長空,魚翔淺底,萬類霜天競自由。悵寥廓,問 蒼茫大地,誰主沈浮? 携來百侶曾游。憶往昔、崢エ歳月稠。恰 同學少年,風華正茂;書生意氣,揮斥方遒。指點江山,激揚文字,糞土當年萬戸侯。曾記否,到 中流撃水,浪遏飛舟?」とある。
※吾生何処家:わたしの人生は、何処で落ち着けるのだろうか(と考えてしまった)。 ・何処:どこ(に)。 ・家:家を構える。家す。動詞。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAA」。韻脚は「涯花沙家」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
○●●○○。(韻)
●●○○●,
○○○●○。(韻)
2021.10.27 10.28 10.29 |
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