喜見外弟又言別 | |
李益 |
十年離亂後,
長大一相逢。
問姓驚初見,
稱名憶舊容。
別來滄海事,
語罷暮天鐘。
明日巴陵道,
秋山又幾重。
******
外弟に見ゆるを喜び 又別れを言ふ
十年 離亂の後,
長大にして 一たび 相ひ逢ふ。
姓を問ひて 初見を 驚き,
名を稱して 舊容を 憶ふ。
別れしよりこのかた 滄海の事,
語り罷れば 暮天の鐘。
明日 巴陵の道,
秋山 又た 幾重ぞ。
****************
◎ 私感註釈
※李益:中唐の詩人。749年?(天寶八年?)〜827年(太和元年)。大暦年間の進士。燕趙の間(現・河北山東の間)の軍幕にいた。辺塞詩の七絶をよくする。字は君虞。隴西姑臧の人。
※喜見外弟又言別:従弟(いとこ)に喜んで会ったが、またしても(すぐに)別れを告げた。 ・喜見:喜んで会う。 ・外弟:従弟(いとこ)。同じ母から生まれた父の異なる弟。 ・又:またしても。ふたたび。さらに。 ・言別:別れを告げる。
※十年離亂後:十年間、戦乱で離れ離れになった後に。 ・十年:八世紀後半から九世紀初頭の変乱のことになろうが、何を指すかは不明。ただ、歴史的に見ると750〜760年代年代の安史の乱の期間と見るのが自然。 ・離亂:戦争や自然災害等の混乱のために、家族が離れ離れになること。名詞。安史の乱や吐蕃の入寇を指す。中唐・韋應物の『與村老對飮』に「鬢眉雪色猶嗜酒,言辭淳朴古人風。ク村年少生離亂,見話先朝如夢中。」とある。
※長大一相逢:(いとこが)大きくなってから、出逢った。 ・長大:〔ちゃうだい;zhang3da4●●〕育つ。成長する。体が大きくなる。 ・相逢:(偶然に)出逢う
※問姓驚初見:姓をたずねて、初めての出会いに驚き。 ・問姓:姓をたずねる。苗字を尋ねる。中唐・司空曙の『雲陽館與韓紳宿別』に「故人江海別,幾度隔山川。乍見翻疑夢,相悲各問年。孤燈寒照雨,濕竹暗浮煙。更有明朝恨,離杯惜共傳。」とある。 ・初見:はじめて会う。
※稱名憶舊容:名を述べて、むかしの姿を思い出した。 ・稱名:名前をとなえる。 ・憶:(昔のことを)思い出す。思い起こす。 ・舊容:むかしの姿。むかしのかたち。むかしの様子。
※別來滄海事:別れてよりこのかたの激しく変化した事を。 ・別來:分かれてよりこのかた。 ・−來:(…より)このかた。 ・滄海事:滄海が桑田となる出来事。世の移り変わりの激しいこと。滄海桑田。滄海變成桑田。
※語罷暮天鐘:語りおわったのは、夕暮れの鐘が鳴る時だった。 ・語罷:語り終わる。 ・−罷:〔ひ(はい);ba4●〕(宴会などが)終わる。やむ。 ・暮天:夕暮れの空。
※明日巴陵道:(今日、肉親と出逢えたが、)明日は、岳陽の巴陵(はりょう)への道を辿(たど)る(ため、また再び別れることになる)。 ・巴陵:〔はりょう;Ba1ling2○○〕湖南省岳陽県の地方。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)57−58ページ「唐 江南西道」にある。現・岳陽。
※秋山又幾重:秋の山は、さらにまた、幾重(いくえ)にも続いている。(二人の別離は一層厳しいものとなる)。 ・又:さらに。その上。またしても。再び。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAAA」。韻脚は「逢容鐘重」で、平水韻上平二冬。この作品の平仄は、次の通り。
●○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
○●○○●,
○○●●○。(韻)
2008.10. 5 10. 6完 2010. 6.24補・心細 2013. 6. 8 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |