夜雪 | |
唐・白居易 |
已訝衾枕冷,
復見窗戸明。
夜深知雪重,
時聞折竹聲。
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夜雪
已に訝る 衾枕の冷ややかなるを,
復た見る 窗戸の明らかなるを。
夜 深くして 雪の重きを知り,
時に聞く 折竹の聲を。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号して香山居士。官は翰林学士、左拾遺を歴任するが、江州の司馬に左遷され、後、杭州刺史に任じられる。やがて刑部侍郎、太子少傅、刑部尚書を歴任する。その詩風は、平易通俗な語彙表現を好み、『楊柳枝』シリーズや、『竹枝詞』、『新楽府』シリーズと詩歌、音楽上の実験に精力的に挑戦し、諷諭詩や感傷詩でも活躍し、仏教に帰依した。本サイトでは、『抒情詩の頁』に多く集めている。
※夜雪:夜に降る雪。「蒲団をきているのに冷える」、「夜なのに窓の外が明るい」(視覚)、「雪に竹が折れる音が聞こえる」(聴覚)と、五感に伝わったことをそのまま詩に詠んだもの。
※已訝衾枕冷:掛け布団とまくらが冷えてきているのを、すでに訝(いぶか)ってはいたが。 ・已:とっくに。すでに。 ・訝:〔が;ya4●〕いぶかる。 ・已…復…:すでに…なのに、その上…。 ・衾枕:〔きんちん;qin1zhen3○●〕掛け布団とまくら。晩唐・温庭筠は『更漏子』で「玉爐香、紅蝋涙。偏照畫堂秋思。眉翠薄、鬢雲殘。夜長衾枕寒。 梧桐樹。三更雨。不道離情正苦。一葉葉、一聲聲。空階滴到明。」と使う。
※復見窗戸明:その上また、窓の外が明るくなってきたのが見えてきた。 ・復:また。ふたたび。かさねて。 ・見:目に入ってくる。見える。蛇足になるが、「瞳を凝らして見つめる」「(自分から積極的に)見る」意は「看」など。 ・窗戸:〔さうこ;chuang1hu4(0)○●〕まど。(蛇足になるが、現代語では、「窗戸」の意は「まど」であって、取り立てて「…の戸(と)」の意は無い)。 ・明:明るい。ここでは、夜なのに明るい。雪明かりを謂う。
※夜深知雪重:夜が更ける(につれて、周りが静かになり)、雪が重く積もってきたのが分かる。 ・夜深:夜が更ける。中唐・韓愈は『山石』で「山石犖确行徑微,黄昏到寺蝙蝠飛。升堂坐階新雨足,芭蕉葉大支子肥。僧言古壁佛畫好,以火來照所見稀。鋪床拂席置羹飯,疏糲亦足飽我飢。夜深靜臥百蟲絶,清月出嶺光入扉。天明獨去無道路,出入高下窮煙霏。山紅澗碧紛爛漫,時見松櫪皆十圍。當流赤足蹋澗石,水聲激激風吹衣。人生如此自可樂,豈必局束爲人鞿。嗟哉吾黨二三子,安得至老不更歸。」とする。
※時聞折竹聲:(それは)時々、(雪の重みのために)竹の折れる音が聞こえてくる(からだ)。 ・時:時々。時折。時に。 ・聞:聞こえる。(聞く気がなくても)耳に入ってくる。蛇足になるが、聴こうと思って耳を欹てて聴く場合は「聴」。 ・聲:音。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「明聲」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
●●○◎●,
●●○●○。(韻)
●○○●●,
○○●●○。(韻)
2010.4.20 |
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