再下第 | |
唐・孟郊 |
一夕九起嗟,
夢短不到家。
兩度長安陌,
空將涙見花。
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再下第
一夕 九 たび起 きて嗟 き,
夢は短くして 家に到 らず。
両 び度 る 長安の陌 ,
空 しく涙を将 って 花を見る。
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◎ 私感註釈
※孟郊:中唐の詩人。字は東野。諡は貞曜先生。湖州武康(現・浙江省湖州)の人。不遇な一生を送った。751年(天寶十年)~814年(元和九年)。
※再下第:またしても、科挙の試験に落第した。 ・下第:〔かだい;xia4di4●●〕官吏登用試験に不合格になる。=落第。⇔登第。また、試験の成績が悪いもの。ここは、前者の意。
※一夕九起嗟:ひと晩に九回、目覚めて歎息をして。 ・一夕:ひと晩。 ・九起:九回、目覚める。九回、起きる。 ・嗟:〔さ;jie1○〕なげく。歎息する。ああ。
※夢短不到家:(そのため、眠りが浅いので)見る夢も短くて、郷里の家にまで辿り着けないでいる。 ・夢短:(眠りが浅いので)見る夢も短いことを謂う。 ・不到家:郷里の家にまで届かないことを謂う。
※両度長安陌:(前にも受験でここにやって来たが)二回めとして長安の都にやって来た。また二度にわたって長安の都で過ごす。前者の意では「両 び度 る長安の陌 」で、後者の意であれば「兩度 の長安の陌 」と読み下すことになる。 ・兩度:二回過ごす。また、二回。ここの「兩」の意は「ふたつ」だが、「前回も長安にやってきて、今回も長安で過ごして、合計二回過ごしている」という意味の「兩」であって、「今回が二度目」の意ではない。「度」は、わたる。暮らす。過ごす。(科挙の試験は相当期間の宿泊が必要)=渡。また、…回(量詞・助数詞)。 ・長安:唐の首都。現在の西安。 ・陌:〔はく;mo4●〕町の道。街路。みち。また、あぜ道。ここは、前者の意。中唐・白居易の『洛陽春』に「洛陽陌上春長在,昔別今來二十年。唯覓少年心不得,其餘萬事盡依然。」とある。
※空将涙見花:むなしく涙目で、花を見るともなく見ている。 *後世、晩唐~・韋莊は『長安春』「 長安二月多香塵,六街車馬聲轔轔。家家樓上如花人,千枝萬枝紅豔新。簾間笑語自相問,何人占得長安春。長安春色本無主,古來盡屬紅樓女。如今無奈杏園人,駿馬輕車擁將去。」 と、 ・將:…を。…を以て。〔「將+名詞(賓語)+動詞」〕の構成。「將」は、賓語(目的語≒名詞(句)等)を動詞の前に押し出す働きをする。「以」、口語の「把」に似た働きをする。 ・見花:花を見るともなく見ている。なお、作者が官吏登用試験に合格した後の作は、喜びに満ちあふれ「昔日齷齪不足誇,今朝放蕩思無涯。春風得意馬蹄疾,一日看尽長安花。」(『登科後』)と、科挙及第者の特権として、積極的に花を看て回ったことがよく分かる表現で詠った。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「嗟家花」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
●●●●○,(韻)
●●●●○。(韻)
●●○○●,
◎○●●○。(韻)
2011.1.30 1.31完 2.22補 |
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