雜詩 | |
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唐・王維 |
已見寒梅發,
復聞啼鳥聲。
愁心視春草,
畏向階前生。
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雜詩
已 に 寒梅の發 くを見,
復 た 啼鳥の聲を聞く。
愁心 春草を視 て,
階前に向 いて生 ぜんことを畏 る。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?〜761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※雜詩:興の趨(おもむ)くままに作った、型にとらわれない詩。これは『雜詩三首』のうちの第三首め。第一首めは「家住孟津河,門對孟津口。常有江南船,寄書家中否。」で、第二首めは「君自故ク來,應知故ク事;來日綺窗前,寒梅著花未?」。
※已見寒梅発:もうとっくに早咲きの梅の咲くのが見かけられ/早咲きの梅の咲くのが、すでに出現し。(春の兆しはとっくに現れていることを謂う。) ・已:とっくに。すでに。 ・見:〔けん;jian4(xian4)●〕目にふれる。見える。なお、現(あらわ)れる意では〔xian4〕。後出・「復聞」と対になるところ。 ・寒梅:寒中に咲く梅。早咲きの梅。 ・発:(花が)咲く。前出・王維『雜詩』「君自故ク來,應知故ク事;來日綺窗前,寒梅著花未?」。後世、金・段繼昌は『一溪』で「一溪流水走蛇,春在江邊漁父家。竹外寒梅看欲盡,C香移入小桃花。」と使う。
※復聞啼鳥声:さらに、鳥の鳴き声が聞こえてくる。(春の訪れは確実なものだ。) ・復:また。二度と。さらに。ふたたび。また、語調を整えるために添える。 ・聞:耳に自然と入ってくる。聞こえる。 ・啼鳥声:鳥の鳴き声が聞こえてくる意。
※愁心視春草:(「春草萋萋」=「新たな年の春」となる頃には、愛しい人は、旅から帰ってくるというのに、愛しい人の姿はまだ現れないで)寂しい気持ちで、春の草を見つめていると。 ・愁心:寂しい気持ち。うれえる心。「心心」ともする。 ・視:(見ようとして)見る。よく見る。 ・春草:春に生える草。≒芳草。香りよい花をつけた草。この句の前後を合わせ、「芳草萋萋」を謂う。『楚辞・招隱士』「王孫遊兮不歸,春草生兮萋萋。歳暮兮不自聊,蛄鳴兮啾啾。」に基づき、漢・王昭君の『昭君怨』(『怨詩』)「秋木萋萋,其葉萎黄。有鳥處山,集于苞桑。養育猪ム,形容生光。既得升雲,上遊曲房。離宮絶曠,身體摧藏。志念抑沈,不得頡頏。雖得委食,心有徊徨。我獨伊何,來往變常。翩翩之燕,遠集西羌。高山峨峨,河水泱泱。父兮母兮,道里悠長。嗚呼哀哉,憂心惻傷。」や唐・崔の『黄鶴樓』「昔人已乘白雲去,此地空餘黄鶴樓。黄鶴一去不復返,白雲千載空悠悠。晴川歴歴漢陽樹,芳草萋萋鸚鵡洲。日暮ク關何處是,煙波江上使人愁。」や、唐〜・温庭の『折楊柳』に「館娃宮外城西,遠映征帆近拂堤。繋得王孫歸意切,不關春草萋萋。」唐・温庭の『菩薩蠻』に「玉樓明月長相憶。柳絲娜春無力。門外草萋萋。送君聞馬嘶。 畫羅金翡翠。香燭消成涙。花落子規啼。坂x殘夢迷。」とある。
※畏向階前生:(誰も訪れないので)(堂の)階(きざはし)の前に(愁いの心が、そしてまた、新たな季節を告げる春の草が)生じてこないかと心配だ。 ・畏:おそれはばかる。おそれる。おそれてうやまう。おそれおののく。かしこまる。 ・向:…で。…にて。…に於いて。≒於。また、…に向かって。ここは、前者の意。 ・階前:きざはしの前。きざはしのところ。「玉階」(=後宮の美しい階(きざはし))ともする。「階」は、堂に上る階段。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「聲生」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●,
●○○●○。(韻)
○○●○●,
●●○○○。(韻)
2014.8.17 8.18 8.23 |
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