Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


飮中八仙歌 
                                                  

     唐・杜甫

知章騎馬似乘船,
眼花落井水底眠。
汝陽三斗始朝天,
道逢麴車口流涎,
恨不移封向酒泉。
左相日興費萬錢,
飮如長鯨吸百川,
銜杯樂聖稱避賢。
宗之瀟灑美少年,
舉觴白眼望青天,
皎如玉樹臨風前。
蘇晉長齋繡佛前,
醉中往往愛逃禪。
李白一斗詩百篇,
長安市上酒家眠。
天子呼來不上船,
自稱臣是酒中仙。
張旭三杯草聖傳,
脱帽露頂王公前,
揮毫落紙如雲煙。
焦遂五斗方卓然,
高談雄辨驚四筵。



******

飲中八仙の歌

@知章( ち しゃう) 馬に()るは  船に乘るに似て,
  ()(かす)み ()に落ちて  水底(すゐてい)に眠る。
A汝陽(じょやう)は 三()にして  始めて(てん)(てう)し,
  (みち)にて 麴車(きくしゃ)()へば  口より(よだれ)を流す,
  (うら)むらくは  (ほう)を移して 酒泉(しゅせん)()かはざるを。
B左相( さ しゃう)は 日興(にっきょう)に  萬錢(ばんせん)(つひ)やし,
  飲むこと 長鯨(ちゃうげい)の  百川(ひゃくせん)を吸ふが如く,
  (はい)(ふく)みて  「(せい)を樂しみ (けん)()く」と稱す。
C宗之(そう し )は 瀟灑(せうしゃ)なる  ()少年(せうねん)
  (しゃう)()げ 白眼(はくがん)にて  青天(せいてん)を望み,
  (けう)として 玉樹(ぎょくじゅ)の  風前(ふうぜん)(のぞ)むが如し。
D蘇晉( そ しん)は 長齋(ちゃうさい)す  繡佛(しうぶつ)の前,
  醉中(すゐちゅう) 往往(わうわう)にして  逃禪(たうぜん)を愛す。
E李白は 一斗(いっ と )にして  詩 百篇(ひゃっぺん)
  長安 市上  酒家(しゅ か )に眠る。
  天子 呼び(きた)れども  船に(のぼ)らず,
  (みづか)ら稱す:「(しん)()れ  酒中(しゅちゅう)(せん)なり」と。
F張旭(ちゃうきょく)は 三杯にして  草聖(さうせい)(つた)ふ,
  脱帽して 露頂( ろ ちゃう)す  王公(わうこう)の前,
  (ふで)(ふる)ひ 紙に落とせば  雲煙(うんえん)の如し。
G焦遂(せうすゐ)は 五()にして  (まさ)卓然(たくぜん)たり,
  高談(かうだん) 雄辨(ゆうべん)は  四筵( し えん)を驚かす。

             ****************





◎ 私感註釈

※杜甫:盛唐の詩人。712年(先天元年)〜770年(大暦五年)。字は子美。居処によって、少陵と号する。工部員外郎という官職から、工部と呼ぶ。晩唐の杜牧に対して、老杜と呼ぶ。さらに後世、詩聖と称える。鞏県(現・河南省)の人。官に志すが容れられず、安禄山の乱やその後の諸乱に遭って、流浪の一生を送った。そのため、詩風は時期によって複雑な感情を込めた悲痛な社会描写のものになる。

※飲中八仙歌:八人の酒豪の詩。八人の酒仙(酒豪)の歌。「酒中八仙」の歌。八人とは、賀知章、汝陽(じょやう)(わう)李璡( り しん)()適之(せき し )崔宗之(さいそう し )蘇晋( そ しん)、李白、張旭(ちゃうきょく)焦遂(せうすゐ)で、当時「酒中八仙」と呼ばれていた。 ・八仙:八人の世俗を離れた高尚な人。八人の仙人。

※知章騎馬似乗船:(八仙の一番目は)賀知章のことで、(酔って馬に乗れば)船に乗っているのに似ており(ゆらゆらと揺れている)。 ・知章:八仙の其一:賀知章のこと。 ・似乗船:船に乗っているのに似たさまを謂う。ゆらゆらと揺れていることを謂う。

※眼花落井水底眠:目がかすんで、井戸に落ちても、井戸の底で眠っている。 ・眼花:目がかすむ。目がくらむ。「花」は:(目が)かすむ。(目や耳が)ぼんやりしてはっきりしない。(目が)ちらちらする。盛唐・杜甫の『小寒食舟中作』に「杜甫佳辰強飯食猶寒,隱几蕭條帶鶡冠。春水船如天上坐,老年
似霧中看。娟娟戲蝶過陋,片片輕鴎下急湍。雲白山青萬餘里,愁看直北是長安。」とあり、中唐・白居易の『觀幻』に「有起皆因滅,無不暫同。從歡終作,轉苦又成空。次第生眼,須臾燭過風。更無尋覓處,鳥跡印空中。」とある。 ・落井:井戸に落ちる意。 ・水底眠:井戸の底で眠っている意。

※汝陽三斗始朝天:(八仙の二番目は)汝陽(じょよう)(おう)李璡( り しん)のことで、三斗(酒を飲んでから)やっと天子に拝謁する。 ・汝陽:八仙の其二:汝陽(じょやう)(わう)李璡( り しん)のこと。「汝陽」とは地名で、ここでは、封地の汝陽(現・河南省洛陽市にある汝陽県)のこと。 ・三斗:約18リットル。1斗=5.944リットル(唐代)。3斗=17.832リットル。 ・始:やっと。はじめて。 ・朝天:天子に拝謁する。盛唐・王維の『凝碧詩』菩提寺禁,裴迪來相看説:逆賊等凝碧池上作音樂,供奉人等舉聲,便一時涙下。私成口號,誦示裴迪。に「萬戸傷心生野煙,百官何日再
朝天。秋槐葉落空宮裏,凝碧池頭奏管絃。」とあり、南宋・岳飛の『滿江紅』に「怒髮衝冠,憑闌處、瀟瀟雨歇。抬望眼、仰天長嘯,壯懷激烈。三十功名塵與土,八千里路雲和月。莫等閨A白了少年頭,空悲切。   康耻,猶未雪。臣子憾,何時滅。駕長車踏破,賀蘭山缺。壯志饑餐胡虜肉,笑談渇飮匈奴血。待從頭、收拾舊山河,朝天闕。」とある。

※道逢麹車口流涎:道で、(酒の原料である)麹(こうじ)を積んだ車に出逢えば、口から涎(よだれ)を流している。 ・麹車:〔きくしゃ;qu2ju1(qu2che1●○)〕(酒の原料である)麹(こうじ)を積んだ車。 ・口流涎:口から涎(よだれ)を流す意。

※恨不移封向酒泉:怨めしいことには、領地を酒泉郡(現・甘粛省酒泉県で、その地に酒の味がする泉があった)に移しかえてもらうことは無かった。 ・移封:諸侯の領地を他に移しかえること。 ・酒泉:漢代の酒泉郡(現・甘粛省酒泉県)。その地に酒の味がする泉があったという。また、周代の地名。そこの泉の水が酒を造るのに適していたので名づけられた。また、多量の酒。ここは、前者・漢代の酒泉郡の意。

※左相日興費万銭:(八仙の三番目は)左丞相・()適之(せき し )のことで、日々の楽しみに大金を費やしており。 ・左相:〔さしゃう;zuo3xiang
4〕(左丞相:〔さ-じょうしゃう;zuo3-cheng2xiang4●○●〕)八仙の其三:左丞相・()適之(せき し )のこと。 ・日興:〔にっきょう;ri4xing4〕日々の楽しみ。または、〔にっこう;ri4xing1●○〕日々にさかんになる。ここは、前者の意。 ・万銭:大金。

※飲如長鯨吸百川:大きな鯨が多くの川を吸い込むように(酒を)飲んだ。 ・長鯨:大きな鯨。南宋・陸游の『長歌行』に「人生不作安期生,醉入東海騎
長鯨;猶當出作李西平,手梟逆賊清舊京。金印煌煌未入手,白髮種種來無情。成都古寺臥秋晩,落日偏傍僧窗明。豈其馬上破賊手,哦詩長作寒螿鳴?興來買盡市橋酒,大車磊落堆長瓶。哀絲豪竹助劇飮,如巨野受黄河傾。平時一滴不入口,意氣頓使千人驚。國讎未報壯士老,匣中寶劍夜有聲。何當凱還宴將士,三更雪壓飛狐城。」とある。 ・百川:多くの川。漢・古樂府の『長歌行』に「青青園中葵,朝露待日晞。陽春布コ澤,萬物生光輝。常恐秋節至,焜黄華葉衰。百川東到海,何時復西歸。少壯不努力,老大徒傷悲。」とある。

※銜杯楽聖称避賢:さかづきをふくんで(酒を飲み)、清(す)んだ酒を楽しんで、白く濁った酒を退けた。 *この句、李適之の『罷相作』本事云:適之疏直坦夷,爲相,時譽甚美。爲李林甫所搆,及罷免。朝客雖知無罪,謁問甚稀。適之意憤,日飲醇酣恣,且爲此詩。林甫愈怒,終遂不免。「
避賢初罷相,樂聖銜杯。爲問門前客,今朝幾箇來。」に基づく。 ・銜杯:酒を飲む。さかづきをふくむ。 ・楽聖:聖(=清酒)を楽しむ。透明に澄んだ清酒を飲む意。「聖」は清(す)んだ酒、「賢」は白く濁った酒。『魏志・魏書二十七・徐胡二王傳・徐邈傳』(中華書局版196ページ上段 七三九頁)に「時科禁酒,而邈私飲,至於沈醉。校事趙達問以曹事,邈曰:『中聖人。』達白之太祖,太祖甚怒。度遼將軍鮮于輔進曰:『平日醉客謂者爲聖人者爲賢人,邈性修慎,偶醉言耳。』竟坐得免刑。」とある。このことから、清酒を『聖人』、白酒や濁酒を『賢人』と言うようになった。『太平御覽』にもこのことがあるというが、原典未確認。 ・避賢:賢(=濁り酒)を避く。白く濁った酒は飲まないで退ける。「世賢」ともする。

※宗之瀟灑美少年:(八仙の四番目の)崔宗之(さいそう し )は、すっきりしてあかぬけている美少年である。 ・宗之:八仙の其四:崔宗之(さいそう し )のこと。 ・瀟灑:〔せうしゃ;xiao1sa3○●〕さっぱりして清らか。すっきりしてあかぬけているさま。スマートである。

※挙觴白眼望青天:杯(さかづき)を挙(あ)げて(冷淡に見る目つきの)白眼(はくがん)で、青空をながめ。 ・挙觴:杯(さかづき)を挙(あ)げる。 ・白眼:人を冷淡に見る目つき。軽蔑する目つき。晋の阮籍が礼教に拘(こだわ)る俗人を白眼で見た故事。尊敬し好む人に対しては青眼(=黒目。黒目(瞳(ひとみ))を中央にして正視する)で迎えた。『晉書・阮籍』(中華書局版354ページ下段6行目 列傳第十九阮籍 一三六一頁)に「又能爲青白眼。見禮俗之士,以白眼對之。及嵇喜來吊,作白眼,不懌而退。聞之,乃齎酒挾琴造焉,大ス,乃見青眼。」とある。

※皎如玉樹臨風前:清らかなさまは、美しい木(=美しい姿の人の喩え)が風の前に臨んでいるかのようである。 ・皎如:〔かうじょ;jiao3ru2●○〕明らかなさま。色の白いさま。盛唐・李白の『把酒問月』故人賈淳令余問之に「天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人相隨。
皎如飛鏡臨丹闕,拷喧ナ盡C輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲陝刀B白兔搗藥秋復春,姮娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」とある。 ・皎:〔かう、けう;jiao3●〕白い。月光が白い。光る。清い。・-如:形容詞・副詞の接尾語(字)として用い、状態を表す。 ・玉樹:美しい木。美しい姿の人の喩え。優れた才能の喩え。 ・風前:風の前。

※蘇晋長斎繍仏前:(八仙の五番目の)蘇晋は、長期間に亘(わた)って午後の食事をしない物忌みを刺繍した仏像の前で行っている(が)。

※酔中往往愛逃禅:酔っぱらって、時々禅の戒律から逃れることをしばしばやっている。 ・往往:時々。しばしば。 ・愛+〔動詞〕:…することを好む。…することを喜ぶ。(あまり良くないことを)…しやすい。 ・逃禅:俗世を遁れて参禅する。また、禅の戒律から逃れる。

※李白一斗詩百篇:(八仙の六番目の)李白は、(酒)一斗で詩を百篇を作り。 ・李白:八仙の其六。 ・一斗:5.944リットル(唐代)。 *「斗」には、「(容量の単位で)十升」の意と「少しの量」の意がある。そのため、「斗酒」を「多くの酒」と解する場合と「少しの酒」と解する場合がある。漢・卓文君の『白頭吟』に「皚如山上雪,皎若雲間月。聞君有兩意,故來相決絶。今日
斗酒,明旦溝水頭。躞蹀御溝上,溝水東西流。淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。願得一心人,白頭不相離。竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。男兒重意氣,何用錢刀爲」とあり、東晉・陶潛の『雜詩十二首 其一』に「人生無根蒂,飄如陌上塵。分散逐風轉,此已非常身。落地爲兄弟,何必骨肉親。得歡當作樂,斗酒聚比鄰。盛年不重來,一日難再晨。及時當勉勵,歳月不待人。」とある。

※長安市上酒家眠:長安の都の中の酒場で眠る。 ・長安:唐の首都。 ・市上:市中。町中。 ・酒家:酒場。

※天子呼来不上船:(たとえ、)天子が呼んでも、(天子の)船に乗ろうとはしない。 ・不上船:(天子の)船に乗ろうとしない。意志の否定。

※自称臣是酒中仙:「私めは、酒浸(びた)りの仙人でございます」と、自分で言う。 ・臣:私め。臣(しん)。君主に対し、謙遜して言う官吏の自称。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・酒中仙:酒浸(びた)りの仙人。

※張旭三杯草聖伝:(八仙の七番目の)張旭は三杯(の酒)で草書の名人と伝播(でんぱ)している。 ・張旭:八仙の其七。 ・草聖:草書の名人。 ・伝:伝わる。伝える。動詞。 *この語の部分は、平水韻下平一先の韻脚となっている。なお、「伝」は、「下平一先」の場合は動詞(「つたえる」)の意であるが、「去声十七霰」の場合は名詞(つたえ、伝(でん))の意。それゆえ、韻脚のここでは、動詞として使われているのがわかる。

※脱帽露頂王公前:身分や地位の非常に高い人の前でも、冠をつけないで頭を丸出しにしており。 ・露頂:冠をつけないで頭を丸出しにする。頭頂を露(あら)わにする。 ・王公:身分や地位の非常に高い人。天子と諸侯。ここは、前者の意。

※揮毫落紙如雲煙:筆をふるって紙に書き出せば、雲や煙のようである。 ・揮毫:筆をふるう。書画をかく。 ・落紙:書き物にする。文書にする。 ・雲煙:雲と煙と。

※焦遂五斗方卓然:(八仙の八番目の)焦遂(しょうすい)は、五斗(の酒)で、ちょうど、高くぬきんでて。 ・焦遂:八仙の其八。 ・五斗:約30リットル。1斗=5.944リットル(唐代)。5斗=29.72リットル。 ・方:ちょうど。ちょうどそのとき。まさに。 ・卓然:高くぬきんでているさま。高くすぐれているさま。=卓爾。

※高談雄辨驚四筵:高尚な話を思う存分話し、よどみのない弁論は、座席の四方の意。その場に坐っている全ての人々を驚かした。 ・高談:高尚な話。他人の話の敬称。あたりかまわず声高に話す。思う存分話をする。 ・雄辨:=「雄辯」(雄弁)で、力がこもって、よどみのない弁論。弁舌の優れていること。 ・四筵:座席の四方の意。その場に坐っている全ての人々。=四坐。

             ***********





◎ 構成について

韻式は、「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」。韻脚は「船眠天涎泉錢川賢年天前前禪篇眠船仙傳前煙然筵」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。

○○○●●○○,(韻)
●○●●●●○。(韻)
●○○●●○○,(韻)
●○●○●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●●●●●○,(韻)
●○○○●●○,(韻)
○○●●◎●○。(韻)
○○○●●●○,(韻)
●○●●◎○○,(韻)
●○●●○○○。(韻)
○●○○●●○,(韻)
●○●●●○○。(韻)
●●●●○●○,(韻)
○○●●●○○,(韻)
○●○○●●○,(韻)
●◎○●●○○。(韻)
○●○○●●○,(韻)
●●●●○○○,(韻)
○○●●○○○。(韻)
○●●●○●○,(韻)
○○○●○●○。(韻)
2015.3.3
     3.4
     3.5
     3.6
     3.7
     3.8




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