王烈塞上曲　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 Wang Lie

塞上曲
	唐・王烈

紅顏歳歳老金微，
砂磧年年臥鐵衣。
白草城中春不入，
黄花戍上雁長飛。

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塞上の曲

紅顏　歳歳　　金微(きんび )に老い，
砂磧( させき)　年年　　鐵衣に臥す。
白草(はくさう)城中　　春入(い)らず，
黄花(くゎうくゎ)戍(じゅ)上　　雁長飛(ちゃうひ)す。

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◎　私感註釈

※王烈：中唐の詩人。大暦年間の人。詩五首が遺されている。

※塞上曲：（西北方面の）とりでのほとり。国境附近の風情の曲。 *この詩は、その一。全てが対句で出来ている。その二「孤城夕對戍樓閒，迴合青冥萬仞山。明鏡不須生白髮，風沙自解老紅顏。」は、こちら。

※紅顔歳歳老金微：若者が、毎年金微（の前線）で老いてゆき。　・紅顔：元気な少年の顔。年が若くて血色のよい顔。＝朱顔。　・歳歳：毎年。後出・「年年」に同じだが、「歳歳」は●●とすべきところで使い、「年年」は○○とすべきところで使う。この「紅顔歳歳老金微」の句は、「○○●●●○○」であり、「歳歳」が適切なところ。初唐・劉希夷の『白頭吟』（代悲白頭翁）に「洛陽城東桃李花，飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色，行逢落花長歎息。今年花落顏色改，明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪，更聞桑田變成海。古人無復洛城東，今人還對落花風。年年歳歳花相似，歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子，應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐，伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下，清歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍，將軍樓閣畫神仙。一朝臥病無人識，三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時，須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地，惟有黄昏鳥雀悲。」とある。　・老：おいる。動詞としての用法。　・金微：古代の山の名。現・モンゴル国（ウランバートル東北東２００キロメートル）にある山で、現・肯特山か、現・アルタイ山（阿爾泰山）か。後漢の大將軍・竇憲の部下が、ここで匈奴の北単于を撃破したところ。唐・貞観年間に、「金微都督府」置かれたので、この山名となった。『中国歴史地図集』第五冊　隋・唐・五代十国時期（中国地図出版社）４２－４３ページ「関内道北部」にある。

※砂磧年年臥鉄衣：（戦場となる）砂漠で、毎年、鎧（よろい）兜（かぶと）の具足(ぐそく)姿で生活している。　・砂磧：〔させき；sha1qi4○●〕砂漠。すなはら。＝沙磧。また、砂や小石の多い川原。＝沙磧。ここは、前者の意。　・年年：毎年。前出・「歳歳」に同じ。「砂磧年年臥鉄衣」の句は、「○●○○●●○」で、「年年」が適切。北宋・晏幾道の『鷓鴣天』に「醉拍春衫惜舊香，天將離恨惱疏狂。年年陌上生秋草，日日樓中到夕陽。　　　雲渺渺，水茫茫。征人歸路許多長。相思本是無憑語，莫向花箋費涙行。」とある。　・臥：横になる。寝る。ふす。盛唐・王翰の『涼州詞』に「葡萄美酒夜光杯，欲飮琵琶馬上催。醉臥沙場君莫笑，古來征戰幾人回。」とある。　・鉄衣：鎧（よろい）。具足(ぐそく)。戎衣(じゅうい)。

※白草城中春不入：（西北方の前進基地である）白草城には、春の季節はまだ訪れていないで。　・白草城：現・甘粛省にある地名というが、『中国歴史地図集』第五冊　隋・唐・五代十国時期、第六冊　宋・遼・金時期（中国地図出版社）の甘粛省該当地域では見あたらない。　・白草：西北方に生え、牛馬が好む飼料となる白い草。西域の善國（樓蘭）の遥か彼方に生えている白い草。西域の善國（樓蘭）の遥か彼方に生えている白い草。盛唐・王昌齡の『出塞行』に「白草原頭望京師，黄河水流無盡時。秋天曠野行人絶，馬首東來知是誰。」とあり、盛唐・岑參の『白雪歌送武判官歸京』「北風捲地白草折，胡天八月即飛雪。忽然一夜春風來，千樹萬樹梨花開。散入珠簾濕羅幕，孤裘不煖錦衾薄。將軍角弓不得控，都護鐵衣冷難著。瀚海闌干百丈冰，愁雲慘淡萬里凝。中軍置酒飮歸客，胡琴琵琶與羌笛。紛紛暮雪下轅門，風掣紅旗凍不翻。輪臺東門送君去，去時雪滿天山路。山迴路轉不見君，雪上空留馬行處。」とある。『漢書・西域傳・善國』に「善國，本名樓蘭，…去陽關千六百里，去長安六千一百里……千七百八十五里，至山國千三百六十五里，西北至車師千八百九十里。地沙鹵，少田，寄田仰穀旁國。國出玉，多葭葦、柳、胡桐、白草。」、「孟康曰：『白草，草之白者。』師古曰：『白草似莠而細，無芒，其乾孰時正白色，牛馬所嗜也。』」とある。蛇足になるが、この表現は限りなく『魏志』などの倭人伝に同じい。共に列伝で、「東夷傳」か「西域傳」かの項目が違うだけのものだから。　・入：（季節が）始まる。

※黄花戍上雁長飛：（西方の前進基地である）黄花戍（黄花の要塞）の上を、雁（がん）が遥かに飛んでいく。　・黄花戍：黄花の要塞。唐代、現・新疆ウイグル自治区の哈密（ハミ）地方（黄花）にあった要塞。唐・無名氏の『伊州歌』に「聞道黄花戍，頻年不解兵。可憐閨裏月，偏照漢家營。」とある。　・長飛：遥かに飛んでいく意。いつまでも飛んでいく意。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「微衣飛」で、平水韻上平五微。この作品の平仄は、次の通り。

○○●●●○○，（韻）
○●○○●●○。（韻）
●●○○○●●，
○○●●●○○。（韻）