江花落 | |
中唐・元稹 |
日暮嘉陵江水東,
梨花萬片逐江風。
江花何處最腸斷,
半落江流半在空。
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江花 落つ
日暮 の嘉陵 江水 の東,
梨花 萬片 江風 を逐 う。
江花 何處 か 最も腸斷 ,
半 は江流 に落ちて半 は空に在り。
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◎ 私感註釈
※元稹:中唐の詩人。進士に及第して官僚となる。白居易と親交があり元白と称され、その詩風は二人合わせて「元軽白俗」とも評される。字は微之。河南・洛陽の人。779年〜831年。二人の交流を示すものに、元稹は『聞白樂天左降江州司馬』「殘燈無焔影幢幢,此夕聞君謫九江。垂死病中驚坐起,暗風吹雨入寒窗。」や、白居易の『舟中讀元九詩』「把君詩卷燈前讀,詩盡燈殘天未明。眼痛滅燈猶闇坐,逆風吹浪打船聲。」がある。
※江花落:川辺の花が散る。この詩、「江」字が各句に現れているが、何か意図するところはあろうか?『江花落』「日暮嘉陵江水東,梨花萬片逐江風。江花何處最腸斷,半落江流半在空。」。
※日暮嘉陵江水東:日暮れ(時)の嘉陵江の(南に向かう)流れの東には(ナシが生えており)。 ・日暮(にちぼ):日が暮れる。日暮(ひぐ)れ。 ・嘉陵江:〔かりょう-かうJia1ling2-jiang1○○-○〕四川省東部の長江(揚子江)の支流。全長約1120kmの南下する流れ。陝西省の秦嶺山中の嘉陵谷から出て南下、渠江などと合流して巴県(現・重慶)で長江に注ぐ。「嘉陵驛」は陝西から蜀に入る道の途中にある駅。嘉陵江は『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)の52−53ページ「唐 山南東道 山南西道」及び、59−60ページ「黔中道」にある。
※梨花万片逐江風:ナシの花の極めて多くの花片(はなびら)は、川風を追いかけている。 ・梨花:ナシの花。同時代で親友の白居易の『長恨歌』に「…玉容寂寞涙闌干,梨花一枝春帶雨。…」とある。晩唐〜韋莊の『C平樂』に「春愁南陌。故國音書隔。細雨霏霏梨花白。燕拂畫簾金額。 盡日相望王孫,塵滿衣上涙痕。誰向橋邊吹笛,駐馬西望消魂。」とある。 ・万片:極めて多くの花片(はなびら)。 ・逐:〔ちく;zhu2●〕追う。おいかける。追い回す。 ・江風:川風。
※江花何処最腸断:川辺の花のどこが非常に悲しいのか(といえば)。 ・何処:いづこ。いづれのところか。どこが。 ・腸断:はらわたがちぎれる。非常に悲しむさま。晩唐・杜牧の『遣懷』「落魄江南載酒行,楚腰腸斷掌中輕。十年一覺揚州夢,贏得樓薄倖名。」外、多い。
※半落江流半在空:(ナシの花の)半(なか)ばは川の流れに散って、半(なか)ばは空中に漂っていることだ。 *この句:「〔半落・江流〕+〔半在・空〕」といった構成になっている。
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◎ 構成について
この作品の平仄は、次の通り。韻式は、「AAA」。韻脚は「東風空」で、平水韻上平一東。
●●○○○●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○○●●○●,
●●○○●●○。(韻)
となる。
2021.12.1 12.2 12.3 |
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