藁砧今何在, 山上復有山。 何當大刀頭, 破鏡飛上天。 |
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古絶句
藁砧 今 何(いづ)くにか 在る,
山上 復(ま)た 山 有り。
何ぞ 當(まさ)に 大刀の頭(かしら)なるべき,
破鏡 天に 飛び上らん。
◎ 私感註釈 *****************
※古絶句:雜曲歌辭。『玉臺新詠』巻十に収録されている。『朱子語類』巻第八十一に、「如『砧今何在』『何當大刀頭』皆是比詩體也。」とあり、『滄浪詩話』にも「此僻辭隱語也。」とある。「かけことばの詩」の意。
※藁砧今何在:押し切りは、今どこにあるのか。⇒おっとは、今どこにいるのか。 ・藁砧:妻が夫をいう隠語。本来は、稲を押し切るときに下に敷くもの。=まぐさきり。秣を切る道具。押し切り。=。この「」〔fu1〕と「夫」〔fu1〕が同音。或いは、美石の「石」=「夫」、或いは、「藁砧」の反切で「天」⇒「夫を天とする」……。ここは「夫(おっと)」の意。この句に基づいて、權コ輿は『玉臺體』「昨夜裙帶解,今朝子飛。鉛華不可棄,莫是砧歸。」を作っている。
「稾砧」「砧」ともする。 ・何在:どこにいるのか。
※山上復有山:山の上に復た山が有る⇒出た。「山の上に復た山が有る」つまり、「」になり、「出」字のことである。 ・復:また。
※何當大刀頭:何がまさに大刀の柄頭となるべきなのか。⇒いつ まさに還るのだろうか。 ・何當:いつまさに…だろうか。 ・大刀頭:大刀の柄頭には、環がついている。「環」は「還」に通じ「還(かえる)」の意。
※破鏡飛上天:半月が天に上る頃。(空の)月が半分(半月)。七夜、八夜か、二十二夜、二十三夜の月になる。暦の月半ばは、十五夜で満月になるので不可。 ・破鏡:割れた円い鏡が天に飛んでいった。⇒半円の月が天に出た。⇒半月。 ・飛上天:この句に基づいて、杜甫は『八月十五夜月』「滿目飛明鏡,歸心折大刀。轉蓬行地遠,攀桂仰天高。水路疑霜雪,林棲見羽毛。此時瞻白兔,直欲數秋毫。」。天上の月のことである。破鏡は、夫婦が別れるとき、鏡を破って、各自その半分を持った故事にもあるとおり、夫婦の片方を暗示させる語でもある。
かけことばを書き換えると次の通りになる。
藁砧今何在 夫今何在, 山上復有山 出。 何當大刀頭 何當還, 破鏡飛上天 半月。
夫(をっと) 今 何(いづ)こにか 在る,
出たり。
何(いづ)れか 當(まさ)に 還らん,
半月の天に上るときならん。
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◎ 構成について
一韻到底。仄韻。韻式は「AA」。韻脚は「山天」で、平水韻でいえば上平十五刪(山)。下平一先(天)通用。次の平仄は、この作品のもの。
●●○○●,
○●●●○。(韻)
○○●○○,
●●○●○。(韻)
2004.4.5 4.6完 4.8補 |
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