今はこんなふうにあちこち見ている場合ではなく、走らせて遊んでいる場合ですよね、きっと。
ボイラーがきれいにランボード上に浮いて見える構造です。ボイラーの下側がちゃんと丸くつながっているように見えます。
8620の製作で難しいことのひとつは第1動輪上のスプラッシャーです。プラ材で自作したことがある方は経験されていると思いますが、動輪フランジに高さが要るため内径を大きく取りたいのと、プラの厚みのせいで外径が大きくなりがちです。少し外径が増すだけで、ランボード上のスプラッシャーの前後長が急に長くなり、周辺の機器が実物通りに配置できなくなってきます。
そのへんが、たぶんギリギリの設計と製造精度で違和感少なくまとまっています。奥行き方向も同様です。
浮いている配管は、ハンドレールも含めて樹脂製です。コンプレッサー系の配管は、部品分割で分かれているところはありますが、立体感があってよい感じです。
下廻りは9mmゲージのためどうしても幅がぎりぎりになり、ランボード下のブレーキ管の前方は省略が普通と思っていましたが、全部作られています。ここは途中に支持部分がなく、特にフニャフニャしています。
先端の1点がフロントのデフ下あたりに留められているため、取り扱いや分解の際に微妙に組み付けが変わると、急にピンと伸びたり、また緩んだりします。まあほっといて、邪魔なら加減リンクの直後あたりでカットすればいいと思っています。
写真では感じがうまく出ていませんが、ボイラーバンドが今までの形式よりも薄く、目立ちにくくなっています。実物では距離や光の加減でほとんど見えないこともあるので、微妙ながらよい表現だなと思いました。
プロトタイプは2段ランボードで、キャブ下が切り上げられたタイプなので、キャブ下の機器が比較的よく見えます。
最近のKATOの蒸機は、キャブ下配管の密度が高くなり、そろそろ配管というより模様の付いた壁のように見えだすところでしたが、今回は1段抑えた表現かと思います。かえって立体感が増してキャブのフォルムもはっきりし、良かったです。
…なんて、これは別に表現の方針が変わったわけではなくて、8620のキャブ下はもともとそんなにゴチャついていないんですよね。
8620と構造が似ているC50記念品では、機炭間をつなぐホース類がテンダー下部に入り込み、横から見ると完全に炭水車がホースでつながっているように見えました。
8620では簡略化され、両者は表現的に完全分離されました。C50記念品は展示目的が重視されていましたが(でも走行性能は抜群だった)、8620は実用本位の普及品なので、それに適した構造に戻したのかもしれません。見た目に悪くなっているわけでもありません。
キャブは標準的な形ですが、屋根は延長タイプです。
カットして元の長さにしようとする方も、きっといらっしゃるでしょう→難しく考えると結構難しいので、とにかくズバッと切ってしまうのがよいかも。
キャブ後ろの手すりは [ 形のタイプです。細い部品なので、分解でキャブを脱着する際に誤って押さえつけてしまうと、当然曲がったり折れたりしますので要注意です。
…などと書いているときはたいていやらかしてまして、写真の模型はうっかり折ってしまったのですが(だめだこりゃ)、修理したのでわからないと思います。
ふつう2段ランボードの段差の位置は、左右で異なっていますが、もちろんそのようにできています。
マイクロエースの8620は同じでしたので、一応書きました。
これは8620固有の特徴というわけでもなく、他の形式でも一方がコンプレッサー、他方が給水ポンプのため、ランボード屈曲部の位置や長さが少し違っていることはありますよね。
8620はC50や9600と同様、煙室の下が開いていて、しっかりとアゴ?がありますが、この模型は板でふさがっているのが唯一気になった点です。
どうも前面の強度確保のために作られた、模型的な構造板のようです。現役時代の実物は普通この位置にシンダー除けもないと思います(あってもかなり奥のほう)。
今回はデフ付きなので、真横からこの板が見えることはなく、まだ救われています。
その後に知ったのですけども、少なくとも花輪線の38698号機(デフ付き)が、どうもこんな板を付けていた時期があるようです。あえてそういう姿を拾って製品化したという見方も。
カットしてみることはできました。デフとデッキの支えが細いデフステーだけになりますが、自分の取り扱いの範囲ならそれほど心配していません。
ライトはシールドビーム灯が装備されています。これはC56のような固定式ではなく脱着可能です。そのため同じ接合形状の他のライトも取り付けられます。
当初ライトの分売はありませんでしたが、翌年以降にAssyパーツとして分売されるようになりました。C57やD51の再生産のたびに入手できるようになり、嬉しい計らいです。
同時発売の「花輪線貨物列車8両セット」には、交換用のパイプ煙突と、補助灯付きの煙室扉が含まれています。
煙室扉の交換の際には、まず(1)ライトを引き抜き、(2)その穴から爪楊枝で煙室扉のへりを前方に押す ことになっています。
この「煙室扉のへり」が見つけにくく、非常に密着しているために爪楊枝の先でも簡単には押せないことがあります。手先が滑って煙室扉に傷を付けるとショックなので、むやみに外すのは避けたほうがよいかもしれません。
フロントデッキを軽く下に動かしたりしていると、偶然煙室扉の上部が前方に浮き、隙間が開いてくれたこともありました。
8620の先輪は直径965mmと、一般的な860mmに比べ顕著に大きく、外観上の特色になっています。これを縮尺1/150で作ると直径約6.4mmです。
KATOの8620でずっと発表されてきた写真はC50の先輪を付けていたため、フロント周辺の完成イメージがなかなかわからず、やや心配していました。
最終的には、C50(写真左)に比べ少し大きな直径6mm・9本スポークの先輪が新規製作され、心配事は解消されました。この直径はアリイの8620と同じで、何とか達成してほしかったラインです。
アリイ(写真左)と並べると、直径よりもアリイのユニークすぎる輪心のほうに目が吸い寄せられます(笑)。これには例の裏返しのヒミツがあります。秘密を持っているので輝いている…。
アリイの8620にKATOの8620の車輪を付けることも、ただ付けるだけならできます。
シャフト径はがKATOの方が細いので、アリイに付けると少々ぐらつきます。特に走行テストなどはしていません。
テンダーはC50記念品と同型です。側面のリベット列や増炭枠の有無などが微妙に異なり、同一品ではありません。
8620
増炭枠付き、後部にはダミーのシールドビーム灯付きです。
C50(記念品)
基本形状は8620と同じです。光沢塗装で、増炭枠やライトなどの後天的装備はありません。
9600
KATOの9600のテンダーも同型ですが、縮尺が異なるため少々大きく、車輪の直径も大きいです。この車輪にはスポーク表現された輪心パーツが付いています。8620、C50のテンダー車輪には輪心スポーク表現がありません。
増炭枠は前に寄っている九州タイプです。
8620
次のC50とは後部ハシゴの位置や、炭庫仕切り板の補強リブの数も違います。
給水口の前後位置も微妙に違いますが、ライトを配置する都合かもしれません。
C50(記念品)
電装品がないため電気配管もないフラットな姿です。改造に重宝することがあるかもしれません。
こちら側の台車枠のディテールも8620とはちょっと違います。
9600
ライトは点灯式で、給水口と一体に成型されています。
9600のテンダーはドローバーの形状も異なるため、もし8620と交換したいときは何らかの加工が要りそうです。
8620テンダーの上物を外したところです。中身はC50と同様です。
さらに、そのダイキャストブロックはC56と同型のため、C56のライト基板も装着することができます。
なお8620自体のヘッドライトに使われている基板も、C56のライト基板と同じものです。
ライト基板さえ付ければ、それだけで点灯化することができます。8620のダミーライトには初めから短い導光材が付いています。
各部の装備に関しては、時代や線区によってもまちまちなので、私個人の中の「8620形」というのは集合イメージであり、それほど明確ではありません。
それで、ナンバーはどれに何を付けてもあまり気にしない感じです。もし本当に特定の8620の特定の時代に思い入れがあったら、また違うことと思います。今回は楽です(笑)。