鐘。 六十餘年一夢中。 雪花亂, 老路是朦朧。 |
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十六字令
除夜に 思ふ
鐘。
六十餘年 一夢の中(うち)。
雪花 亂れたるも,
老いの路は 是(こ)れ 朦朧。
◎ 私感註釈 *****************
※伊勢丘人:1943年生。備後福山在住。
※十六字令:詞牌の一。填詞中最短の詞牌。
※思除夜:除夜に思う。除夜の鐘に触発されてのうた。
※鐘:かね。鐘が鳴る。ここでは、除夜の鐘を指している。良寛も『曉』に「二十年來ク里歸,舊友零落事多非。夢破上方金鐘曉,空床無影燈火微。」 とうたう。ただ、良寛の場合は、『逸題』「簡傲縱酒消歳時,衆人間不相知。而今老去始噬臍,通宵爲君涙沾衣。」と、自らほぞをかむ思いをしているが、この作品は「雪」だけではなく、「花」もあることをうたう肯定的な表現が、両者の大きな差異となっている。
※六十餘年一夢中:六十余年は、一つの(大きな)夢(のようである)。 ・六十餘年:作者がこの詩を作った時の歳。今までの歳。 ・一夢中:一場の大いなる夢の中。
※雪花亂:苦難と栄花が入り交じって乱れた行程であった。 ・雪花:風雪と栄花。苦しいことや好かったことの譬喩。或いは、花びらのように風に舞う雪。後者の意では、革命現代芭蕾舞劇『白毛女』中の『北風吹』「北風那箇吹,雪花那箇飄,雪花那箇飄飄,年來到。風卷那箇雪花 在門那箇外,風打着門來門自開。我快回家。歡歡喜喜過箇年,歡歡喜喜過箇年。」 がある。 ・亂:乱れる。入り乱れる。
※老路是朦朧:(しかしながら、現在)老いの境涯は、(穏やかで)おぼろなさまである。 ・老路:老いの道。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・朦朧:〔もうろう;meng2long2○○〕(月などが)おぼろなさま。かすんで暗いさま。李Uの『蝶戀花』「遙夜亭皋閑信歩。乍過C明,早覺傷春暮。數點雨聲風約住。 朦朧淡月雲來去。桃李依依春暗度。誰在秋千,笑裏低低語?一片芳心千萬緒,人間沒個安排處!」 とある。
◎ 構成について
十六字令。単調。十六字。平声一韻到底。韻式は「AAA」。。『十六字令』は、『歸字謠』、『蒼梧謠』ともいう。この『歸字謠』は、『歸自謠』や『歸國謠』とは異なる。韻脚は「鐘中朧」で、詞韻第一部平声。
○(韻)。
●○○●○(韻)。
○○●。
●●○○(韻)。
平成18.5.20 5.24 5.25完 5.31補 6. 2 |
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