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      尋盛禪師蘭若 

                 劉長卿

秋草黄花覆古阡,
隔林何處起人煙。
山僧獨在山中老,
唯有寒松見少年。

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盛禪師の蘭若(らんにゃ)を 尋ぬ
                       
秋草 黄花  古阡を 覆
(おほ)ひ,
林を隔
(へだ)て 何處(いづこ)にか  人煙 起こる。
山僧 獨
(ひと)り  山中に 老いる 在りて,
(ただ) 寒松の  少年を 見る 有り。

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◎ 私感註釈

※劉長卿:盛唐の詩人。709年?(景龍年間?)〜780年?(建中年間?)。字は文房。河間(現・河北省)の人。進士に合格して官吏となるも下獄、左遷された。ために、詩には失意の情感や離乱を詠うものが多い。五言詩に優れていることから「五言(の)長城」と称された。

※尋盛禪師蘭若:盛という禅宗の僧侶の寺院を訪ねた。 ・尋:たずねる。訪れる。明・高啓に『
胡隱君』「渡水復渡水,看花還看花。春風江上路,不覺到君家。」 がある。 ・盛禪師:盛という禅宗僧侶。 ・蘭若:〔らんにゃ;梵語aranyaの音訳「阿蘭若」の約〕寺院。本来の「阿蘭若」は閑寂、遠離の意で、人里を離れ、仏道の修行に適する閑静な場所。

※秋草黄花覆古阡:秋に花の咲く草の黄色い菊の花が、古さびた小道に覆い被さり。 ・秋草:秋に花の咲く草の総称。後世、晏幾道の『鷓鴣天』に「醉拍春衫惜舊香,天將離恨惱疏狂。年年陌上生
秋草,日日樓中到夕陽。雲渺渺,水茫茫。征人歸路許多長。相思本是無憑語,莫向花箋費涙行。」とある。 ・黄花:菊の花。辛棄疾の『水調歌頭』壽趙漕介庵「千里渥種,名動帝王家。金鑾當日奏草,落筆萬龍蛇。帶得無邊春下,等待江山キ老,ヘ看鬢方鴉。莫管錢流地,且擬醉黄花。   喚雙成,歌弄玉,舞拷リ。一觴爲飮千歳,江海吸流霞。聞道Cキ帝所,要挽銀河仙浪,西北洗胡沙。囘首日邊去,雲裏認飛車。」や、後世の李清照に『聲聲慢』「尋尋覓覓,冷冷CC,凄凄慘慘戚戚。乍暖還寒時候,最難將息。三杯兩盞淡酒,怎敵他、曉來風急。雁過也,正傷心,却是舊時相識。    滿地黄花堆積,憔悴損,如今有誰堪摘。守着窗兒, 獨自怎生得K。梧桐更兼細雨,到黄昏、點點滴滴。這次第,怎一個、愁字了得。」 とある。 ・覆:〔ふく;fu4●〕おおう。 ・阡:〔せん;qian1○〕みち。田の間の南北の畦道。

※隔林何處起人煙:林を隔てた向こう側のどこかから人家の煙がたち上っている。 ・隔林:林を隔てて。木の繁みの向こう側から。 ・何處:どこ。 ・起:おこる。たちのぼる。 ・人煙:人家のけむり。民のかまどに立つ煙。人の住んでいる気配。

※山僧獨在山中老:山寺の僧はひとりだけで山の中にいて、そこで老いていく(が)。 ・山僧:山寺の僧。 ・獨在:ひとりだけで…にいる。王維の『九月九日憶山東兄弟』に「
獨在異ク爲異客,毎逢佳節倍思親。遙知兄弟登高處,插茱萸少一人。」とあり、白居易の『新豐折臂翁』に「新豐老翁八十八,頭鬢眉鬚皆似雪。玄孫扶向店前行,左臂憑肩右臂折。問翁臂折來幾年,兼問致折何因縁。翁云貫屬新豐縣,生逢聖代無征戰。慣聽梨園歌管聲,不識旗槍與弓箭。無何天寶大徴兵,戸有三丁點一丁。點得驅將何處去,五月萬里雲南行。聞道雲南有瀘水,椒花落時瘴煙起。大軍徒渉水如湯,未過十人二三死。村南村北哭聲哀,兒別爺孃夫別妻。皆云前後征蠻者,千萬人行無一廻。是時翁年二十四,兵部牒中有名字。夜深不敢使人知,偸將大石槌折臂。張弓簸旗倶不堪,從茲始免征雲南。骨碎筋傷非不苦,且圖揀退歸ク土。此臂折來六十年,一肢雖廢一身全。至今風雨陰寒夜,直到天明痛不眠。痛不眠,終不悔,且喜老身今獨在。不然當時瀘水頭,身死魂孤骨不收。應作雲南望ク鬼,萬人冢上哭。老人言,君聽取,君不聞開元宰相宋開府,不賞邊功防黷武。又不聞天寶宰相楊國忠,欲求恩幸立邊功。邊功未立生人怨,請問新豐折臂翁。」 とあり、白居易『香爐峰下新卜山居草堂初成偶題東壁』に「日高睡足猶慵起,小閣重衾不怕寒。遺愛寺鐘欹枕聽,香爐峰雪撥簾看。匡廬便是逃名地,司馬仍爲送老官。心泰身寧是歸處,故ク何獨在長安。」とある。 ・老:老いる。

※唯有寒松見少年:ただ寒々とした松だけがあって、若者を見つけたようだ。 ・唯有:ただ…だけがある。魏・曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,
唯有杜康。」 とあり、白居易の『送春』に「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,眷眷東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刀與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」 とある。 ・寒松:寒さにめげない松。寒い季節の松。冬の寒々とした松。晉・陶潛の『飮酒二十首』其八「在東園,衆草沒其姿。凝霜殄異類,卓然見高枝。連林人不覺,獨樹衆乃奇提壺撫寒柯,遠望時復爲。吾生夢幻間,何事紲塵羈。」や、李白の『古風・五十九首』其十一に「黄河走東溟,白日落西海。逝川與流光,飄忽不相待。春容捨我去,秋髮已衰改。人生非寒松,年貌豈長在。吾當乘雲,吸景駐光彩。」とある。 ・見:見る。見つける。現れる。 ・少年:わかもの。作者を指すのか、或いは、松から見た老僧のことなのか、不明。

               ***********




◎ 構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「阡煙年」で、平水韻下平一先。次の平仄はこの作品のもの。

○●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)

2007.5.30
     5.31

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

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