「文学横浜の会」

 エッセー


3月「2000年Y2K」

4月「警察の不祥事とオーム問題」に思う

5月「ゴールデン・ウィーク」

6月「仕事について」

2000年7月


 「頻発する少年犯罪に思う」

 テレビで報道される犯罪のニュースが、このところ異常な残忍さをましてきた。

金が欲しさに人を殺す、異性にふられた腹いせに相手を殺す。何となく人生が面白くな いから、見も知らない人を殺す。その手口も、想像するにも恐ろしい残虐さがこと細 かに発表される。

そうした事件が未成年者による犯行と公表されると、誰もが「またか・・・」と言う。

 たしかに、未成年者による犯罪は急増している。十七歳という言葉が、何かのキー ワードのように取りあげられる。家庭環境の問題や教育の問題等が要因として欠 かさず取りあげられる。

しかしそれだけだろうか。異様な残虐性をもった犯罪が、未成年だけに限らず大人に よっても多発していることを、見落としてはいないだろうか。毒入りカレー事件、 保険金目当ての殺人、ひいては新興宗教がらみの無差別殺人。

これらが、家庭環境や教育の問題だけから起こるべくして起こった事件とは、わ たしには思えない。

 環境ホルモンという言葉が、よくテレビや雑誌で取りあげられる。自然界の生き物 に、身体的な変異、生殖器官的な変異や欠陥が多く見られるという。これがなんとか いう物質からくる環境ホルモンによる結果だと、多くの科学者が指摘しているという。

自然界の生き物にそうした変異があるとするなら、これが人間に作用しないとは 言いきれない。人間の脳に、人間本来の理性を壊す何かが作用して、狂暴な衝動を押 さえきれなくなったとしたら、これは家庭環境や教育環境だけをを論じて済む事態で はないと思う。

 じっさい、まだ事の善し悪しの判断さえつかないかと思える子どもが、「自分は未 成年だから、罪にはならない」と豪語していると聞くと、そこまで分かっているな ら、事の善し悪しが分からないはずは断じてないと思う。

すべてがそうではないかもしれないが、目に見えない外的な素因が脳に作用して、 人間性を欠いた行動にはしるのだとしたら、医学、化学のあらゆる分野からの解明を、 一刻も早くする必要がありそうに思える。

 また、こうした事件の報道から、その犯人を英雄視してしまう歪んだ目もあるらしい。 これにも十分な配慮の必要があると思う。中の見えない車を「犯人が乗っている車だ」と 執拗に追い回すより、犯罪そのものを許さないとはっきり表現する報道のし方を、改 めて考えてほしいと思う。

(七浦とし子)


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