中級室 バランシング 2003/05/10
  説明
バランシングの根拠
バランシングの効果
T型バランシング
  U型バランシング
他のバランシング
参考事項
   ( '03/08/27/2e )
 

 


■ 説明

 バランシングとは何か

オポーネントが1のスーツでオープンし、下図のようにパスが2つ続いた場合、三人目のプレイヤー(図では?印)が、ダイレクトシートの基準より低いポイントで、ダブル又はビッドすることをバランシングといいます。(英国では、プロテクションといいます)

(A)
N E S W
1 / / ?
(B)
N E S W
1 / 2 /
/ ?    

 バランシングする理由

デュプリケートブリッジでは、スコアの10ポイントの差がマッチポイントに効いてきます。
オポーネントが低いコントラクトで止まるのはHCPが24以下なのです。上図の(A)は切札のフィットは不明ですが、(B)は切札が8枚あるでしょう。
トータルトリック則 (LTT) から「切札の枚数だけトリックがとれる」ので、このままパスすると、コントラクトは多分メークするでしょう。

こちらにも、HCPが20近くあるわけですから、スペードのフィットがあれば、8トリックとれます。スコアはプラスになります。

コントラクトを買えるのに、オポーネントにコントラクトを買わせることはありません。

このため、バランシングシートでは余程のことがない限り、パス以外のコールをします。


 バランシングの種類

オポーネントが1のスーツでオープンした場合、バランシングの基本パタンは下図のとおり2種類になります。
この講座では、便宜上、(A)をT型、(B)をU型と呼ぶことにします。

(A)
N E S W
1 / / ?
(B)
N E S W
1 / 2 /
/ ?    
 
 


■ バランシングの根拠

 LTT

1992年に CHOEN が"To Bid or Not To Bid”を出版して、ベストセラーになりました。これは The Law of Total Tricks (LTT) を解説したものです。LTTは切札枚数ととれるトリックの関係を示したものです。

トータルトリックの数は
両サイドの切札枚数の合計にほぼ等しい。

(詳細は こちらをご覧下さい。)

もっと、簡単にいうと、
HCPが20で、切札が8枚あれば、8トリックとれる」ということです。


 T型の場合

N E S W
1 / / ?

T型のバランシングは左図のように、オプナーがスーツの1でオープンし、パスが2つ続いた場合に起こります。
Wがパスすると、コントラクトはオプナーのビッドしたコントラクトで決まります。

1でオープンするハンドのHCPは12-21HCP ですが、ミニマムレンジなら12-15HCPです。
Sは5HCP以下ですから、相手側のHCPは17-20 HCPです。
切札が7枚で、20HCPなら楽に1のコントラクトは作れるでしょう。

味方にもHCPが20近くあるのですから(自分のHCPが少なくても,残りはパートナーが持っています。)、8枚フィットのスーツがあれば、2レベルのスーツコントラクトが買える筈です。

こちらでもコントラクトが買えるのに、オポーネントに1レベルのコントラクトをつくらせることはありません。オークションを再開すべきです。

バランシングの根拠は次のとおりです。

【根拠】 パートスコアで止まるのは、HCPが十分にないからだ。こちらにも、HCPの半分はあるはずだ。


 U型の場合

N E S W
1 / 2 /
/ ?    
 

U型のバランシングは左図のように、オプナーがスーツの1でオープンし、レスポンダーがシングルレイズした後、パスが2つ続いた場合に起こります。Eがパスすると、コントラクトはオプナーのビッドしたコントラクトで決まります。

オポーネントがフィットして、2レベルで止まるのはミニマムレンジで HCPが不足しているためです。従って、味方にもHCPが20近くある筈です。
8枚フィットのスーツがあれば、2レベルのスーツコントラクトが買える計算になります。9枚フィットなら、3レベル迄できるかもしれません。

バランシングの根拠は次のとおりです。

【根拠1】 オポーネントがフィットしていれば、こちらにもフィットしたスーツがある。
【根拠2】 パートスコアで止まるのは、HCPが十分にないからだ。こちらにも、HCPの半分はあるはずだ。

「相手がフィットしているなら、こちらにもフィットがある」というのは、 次のような理由によります。
例えば、オポーネントがハートが8枚フィットだとします。こちらのハートは5枚ですから、残りのスーツの合計枚数は26−5=21となります。平均7枚となります。当然、バラツキががありますから、8−7−6の組み合わせもあります。

 
 


■ バランシングの効果

 余裕のパス

オポーネントが1のスーツでオープンした時、

 
 
N E S W
1 ?    
(A) A874
K1054
3
AQ43
(B) A874
3
KQ543
AQ4

(A)はダブルをコールできます。(B)は(A)より強いハンドで、ペナリテイダブルをかけたいところですが、ダブルはT/Oになるので、パスするより仕方がありません。パートナーがダブルをコールしたら、パスするでしょう。

バランシングの保証があれば、ダイレクトシートのプレイヤーはデフェンシブ・コールのパタンに適合した時だけコールし、該当しなければ安心してパスできます。無理して、コールすることはありません。


 安全なパートスコア

ラバーブリッジではオポーネントが低いコントラクトで止まるのは大歓迎です。
しかし、デュプリケート・ブリッジでは、パートスコアの競り合いがゲームのいのちです。

コントラクトを決める要素はHCPと切札の枚数とバルネラビリテイです。
パートスコアの競り合いに勝つには、HCPと切札枚数の情報を正確に把握しなければなりません。

バランシングを知っていれば、オポーネントが楽なコントラクトでプレイすることを防止し、こちらで、安全なコントラクトを買うことができるのです。


 

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