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Das weisse Rauschen /
The White Sound

Hans Weingartner

2001 D 107 Min. 劇映画

出演者

Daniel Brühl (Lukas)

Anabelle Lachatte
(Kati - ルーカスの姉)

Patrick Joswig
(Jochen - カティのボーイフレンド)

Katharina Schuttler
(ルーカスのデートの相手)

Michael Schütz
(精神科の医者)

見た時期:2002年1月(2002年1本目)

ストーリーの説明あり

Vaya con diosダニエルブリュールを紹介したついでに、以前にした彼の出演した映画の話をここに持って来ました。読みにくい部分は多少訂正しました。

監督はこれがデビューと聞いて驚きました。完成品を第1作から持ち込んで来ました。

話の中心は姉カティと弟ルーカス。弟は姉を頼って田舎町から都会に出て来ます。当初は大学で勉強するつもりでしたが、ドイツという国では手続きは役所だけでなくどこでもややこしいためすぐやる気をなくしてしまいます。姉が住んでいるアパートに転がり込んでぶらぶらしていましたが、薦められて仕事を始めます。ガールフレンドもできます。姉と同居している男性ヨッヘンともうまく行きます。

ところが時々ルーカスは軌道を逸し癇癪を起こすようになります。同居している2人は最初は普通に心配していたのですが徐々にエスカレートし、挙げ句にアパートの窓から飛び降りてしまったため、ルーカスは病院で治療を受けます。最初のうちカティは弟の頭がどうかしていると考えたくなかったため、精神的な治療に消極的で弟を病院から連れ出そうとすら試みます。が、のんびり者のボーイフレンド、ヨッヘンですらこれはただごとではないと思い始め、姉は父親に母親のことを聞きに行きます。母親はルーカスと似たようなことになっていたらしく、自殺しています。父は子供を思いやって事情を話していませんでした。事の重要性に気づき、ルーカスも病院からもらった薬をまじめに飲むようになります。ところがある時ひょんなきっかけで止めてしまったため、再びトラブルが起こるようになります。

この状況が、姉の心配、弟の苦しみ、同居している人間の迷惑と思いやりを織り込みながら描かれて行きます。この映画でも前半 Lammbock というもう1つのドイツ映画のようにハッシシが絡んでいますが、描かれ方は Lammbock と違います。中心はたまたまこういう問題を抱えた人、家族、周囲の人が最初どういう風に戸惑うか、後半はどういう風に生きて行ったら良いのかにスポットを当てています。非常にまじめな映画です。普通は前半の部分を2倍の長さにして、最後に何か大きなドラマを据えて、それでおしまいです。ところがこの映画では、自ら1度命を断とうとまで思いつめた弟が運よく助かり、その後の行動まで追っています。ハッピーエンドにはならないのですが、悲劇で終わることもなく、へんてこりんな同情で終わるのでもありません。弟が冷静に自分を見つめ始めるところまで行って終わります。

ちょっと前にドイツでも公開された EUREKA ユリイカと比較できるのではないかと思います。あれは恐ろしく長い映画でしたが、あれほど時間をかけて描いてくれたことに感心しました。時間的には Das weisse Rauschen は短いですが、同じようにテーマに取り組んでいます。エンターテイメントではありません。しかし退屈することはありません。

演技はドキュメンタリーかと思うほど自然で、ティル・シュヴァイガーやモーリッツ・ ブライプトロイとは違うタイプの、いわば大スターでない人たちが地味に演じています。イギリスには負けるかも知れませんが、ドイツにも後継者が育っていることは確かなようです。

出演した人は全員が自然な演技で、ドイツの日常を表現しています。ルーカス役のブリュールも精神に異常をきたす役ですが、普段の部分は平均的なドイツ人の若者を演じていて、特に目立ちません。目立たないというところがリアルだという意味です。その彼が幻聴に悩まされ徐々にエスカレートしていくシーンは怖いです。犯罪は扱っていない映画ですが、その辺のスリラーよりずっと怖いです。監督がデビュー、ブリュールもまだほとんど知られておらず、演劇学校などには行かなかったということなので、まさに天才が集まって作った映画と言えます。1本だけいい作品を残し、あとはだめという天才は時々いますが、この後に Vaya con dios を見、ドキュメンタリー調でないコメディー風劇映画の主演もちゃんと務めているのを見て納得した次第です。

参考作品: Vaya con diosElefantenherzグッバイ、レーニン!

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