映画のページ

ブルーベリー /
Blueberry /
Blueberry und der Fluch der Dämonen

Jan Kounen

2004 F/Mexiko/UK 122 Min. 劇映画

出演者

Vincent Cassel
(Mike S. Blueberry - パロミートの保安官)

Hugh O'Conor
(Mike S. Blueberry - 若い頃)

Tchéky Karyo
(マイクの伯父)

Vahina Giocante
(Madeleine - 娼婦)

Michael Madsen
(Wallace Sebastian Blount - マイクと娼婦を争う男)

Temuera Morrison
(Runi - インディアン、マイクの友達 )

William Lightning
(Runi - 若い頃)

Eddie Izzard
(Werner Amadeus von Luckner/Prosit - プロイセンの男爵)

Djimon Hounsou
(Woodhead - 賞金稼ぎ)

Colm Meaney
(Jimmy McLure - 保管官助手)

Ernest Borgnine
(Rolling Star - 車椅子の保安官)

Geoffrey Lewis
(Sullivan - 町の有力者)
Juliette Lewis
(Maria - サリバンの娘)
Jan Kounen
(Billy - 車椅子の男の世話をする男)

見た時期:2004年3月 ファンタ前夜祭

2004年 ファンタ前夜祭

ストーリーの説明あり

分かりませんね、人の好みというのは。ファンタの仲間内ではこれが前夜祭の最高作品というのが一般的な評価だったのですが、世間ではラジー賞の候補に早々と上がっているようです。このどこがラジー賞なのか聞いてみたいです。

ドイツ人の好みにも合いそうで、ファンタ・ファンばかりか、ウエスタンが嫌いだという人にも受けそうなのです。ドーベルマン以外のカッセルが嫌いという私もすっかり魅了されました。どうやらクーネンという監督はカッセルの使い方が分かっている人のようです。ちょうどティム・バートンとジョニー・デップのように運命的な監督、俳優の出会いだったのかも知れません。

しかしそれだけではありません。集めて来た俳優をクーネン監督は本当に上手に使っています。タランティーノのキル・ビルのアンサンブルよりまとまりがいいのではと思います。ジュリエット・ルイスがこんなにきれいに見えたのも久しぶり(最後のシーンはお見逃しなく)。「父ちゃん、死んじゃいや」と嘆き悲しむシーンはご愛嬌。

強いてアラを探せば、幻想シーンがやや長過ぎるというぐらい。適度に削って115分ぐらいに落としてもいいかも知れません。ジュリエット・ルイスのラストのシーンはカットしない方がいいです。なかなか美的です。

原作はクーネン監督の大好きなマンガ。ドーベルマンもマンガではなかったかと思います。フランスはずっと前から欧州のマンガ大国で、マンガ文化は盛んですから、マンガで育った監督が映画化しようと思い立つのは不思議なことではありません。アステリックスと違い、クーネン監督は最初からこれをアニメにしようと考えず劇映画にしようと思ったようです。そしてドーベルマンで上手く行ったので、カッセルを再び起用。今回は奥方のベルッチは登場しません。マトリックスで忙しかったのでしょう。奥方の出世に比べやや取り残された形のカッセルですが、こういう宝石のような出来のいい作品をいくつか残すというのも俳優にとっては大切なこと。エリザベスジェヴォーダンの獣のような妙な役で表舞台に飛び出すよりいいかも知れません。彼の英語は同じファンタ前夜祭で見たアルジェントの作品に出ていた俳優よりずっと良く、アメリカ人からはクレームがつくかも知れませんが、聞きやすいいい発音でした。アメリカでもかなり南部が舞台で、あそこは今でもフランス語が母国語だというアメリカ人もいるので、話の辻褄が合わないということはありません。英語と並んでインディアン語がかなり出て来ます。言語が本物なのかマンガだから造語なのかは本当のインディアンに聞いてみないと分かりませんが、主人公の親友ルニがインディアンという設定。

インディアンと親交をあたためるという話は欧州には時々あります。マニトの靴の元ネタになっているカール・マイの長編でも主人公の白人と1番仲のいい友達がインディアン。ジェヴォーダンの獣でもフランス人がインディアンの親友を欧州へ連れて来ています。遠くの未知のものに憧れるという気持ちがこういう風に現われるのでしょうか。

自分が日本人だからひいきするわけではありませんが、永田鉄男の撮影は素晴らしいです。日本で昔旅に出た時を思い出させるような水のきれいな風景、東ドイツ南部からチェコを思わせるような高い岩場、エジプトでチラッと見た砂漠を思わせるような乾いた土地、その他土地の感情が伝わってくるような感性豊かな画面。緑と乾いた砂を上手に組み合わせてあり、これだけでも見る価値充分です。$TEALよりずっと良かったです。

筋はあまり複雑ではありませんが、最後までちゃんと見ないと損をします。パラミートというメキシコから遠くない西部。マイク少年が狂暴な刑事チェキー・カリョ伯父に預けられるところから始まります。伯父さんは現代のパリでは官憲でありながら危険人物でしたが(ドーベルマン)、1870年の西部では静か。短い登場です。

ここからやや詳しく説明します。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

まだ世間に疎かったマイク少年は売春婦に恋をしてしまいます。ところがキル・ビルのバドと女を争うことになり、それが飛び火して、危ういところで命を失う羽目に。女は即死、ここではウォレスと名乗っているバドを炎の中に残し、マイクはトンズラ。売春宿は炎の海。このあたりまでにパラミートの町の重要な登場人物が紹介されますが、皆上手に役にはまっています。

トンズラしたマイク少年は瀕死の重傷を負っていて、砂漠のど真ん中で頓挫。馬も銃も役に立ちません。砂の上にはガラガラヘビ。そこを通りがかったインディアンに救われ森の中へ。言葉は分からずとも自分を助けてくれた人たちだということは分かり、感謝しながらその地にとどまります。長老のあやつるインディアン版漢方と呪い(まじない)のおかげで傷はすっかり良くなり、その後自然に溶け込んで生きて行く方法を伝授されます。長老の息子とは親友に。ウンタマギルーと良く似た展開。何年か経って町に戻ったマイク少年は、青年保安官に変身。ここからヒュー・オコーナーからカッセルへバトンタッチとなります。カッセルはイントロにも出て来ますが、観客には後半になるまでその事情は呑み込めません。

そこへ徐々によそ者が登場。賞金稼ぎ、金(きん)のありかを探している男など怪しげな人物ばかりです。1人ぐらいまともな人物はいないのかと思いますが、幸 い町の保安官はわりとまとも。意味の無い殺しはご法度です。町のはずれには大金持ちが住んでいてその娘はなかなかの女性。マイクはまんざらでもありません。このマリアを演じるのがジュリエット・ルイス。最近スランプから復活したのはいいのですが、あまりいい役を貰えずちょっと気の毒でした。イナフOld School はお世辞にもいい役とは言えません。それに引き換えブルーベリーでは気丈な西部の女。お得意の喉も聞かせてくれます。彼女は音楽にも造詣が深く、ストレンジ・デイズではバンドの歌手を演じていました。ブルーベリーではダニー・ボーイを歌います。ああいう歌唱法は私の好みではありませんが、雰囲気は上手に出しています。クーネン監督はカッセルだけでなく、ルイスにも見せ場をちゃんと用意しています。

怪しげな男の1人は若い頃売春宿で女を争ったウォレス。マイクは復讐すべく保安官のバッジを捨てる決心。一方金を探している男たちはインディアンの住んでいる地方へ向かいます。金が隠してある場所を示す古文書をドイツはプロイセン人の男爵が持っていて、測量しながら目的地に近づいて行きます。プロイセンというのは私が住んでいるあたり。当然それを狙う他の男たちも。古文書の取り合いは殺し合いを生み、遂にはマリアのお父ちゃんまで殺されてしまいます。金(きん)を探すというストーリーも欧州人の好みらしく、ファ ンタでこの映画の評判が良かったのも分かります。フランス人は昔からロマンが好きで、大西部で金を探すという話はそういう嗜好にぴったり。これがアメリカ 人にはバカに見えるのでしょうか。

父ちゃんを殺されたマリアはカウボーイを引き連れて殺した男を追い、友達の住むインディアンの山を荒らされたくないマイクも出発。しかも追っている相 手がかつての・・・となれば理由は2つ。しかしガタゴトした挙句にマイクはまた重傷を負ってしまいます。瀕死の状態でジミーに「ルニの所へ連れて行ってくれ」と頼みます。最後の対決で生き残っているのは男爵、ウォレス、マイクの3人。さてオトシマエはどうつけるか・・・。無論主人公は助かりますが、意外な話が飛び出しますのでお見逃しなく。

この後どこへいきますか?     次の記事へ     前の記事へ     目次     映画のリスト     映画一般の話題     映画以外の話題     暴走機関車映画の表紙     暴走機関車のホームページ