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ザ・リング /
The Ring (リメイク版)

Gore Verbinski

2002 USA/J 115 Min. 劇映画

出演者

Naomi Watts
(Rachel Keller - エイダンの母親)

Martin Henderson
(Noah - エイダンの父親)

David Dorfman
(Aidan Keller)

Daveigh Chase
(Samara Morgan - 幽霊)

Shannon Cochran
(Anna Morgan - サマラを養子にした母親)

Brian Cox
(Richard Morgan - アンナの夫)

見た時期:2003年2月


リング / Ring

中田秀夫

1998 J 96 Min.

出演者

松嶋菜々子 (浅田玲子)
真田広之 (高山竜司)
中谷美紀 (高野舞)
竹内結子 (大石智子)
佐藤仁美 (大石雅美)
沼田曜一 (山村敬)
松重豊 (吉野)
松村克己 (浅川浩一)
大高力也 (浅川陽一)


らせん

飯田譲治

1998 J

出演者

佐藤浩市 (安藤満男)
真田広之 (高山竜司)
中谷美紀 (高野舞)
佐伯日菜子 (山村貞子)
鶴見辰吾 (宮下)
鈴木光司 (デパートの父親)


リング 2

中田秀夫

1998 J 95 Min.

出演者

中谷美紀 (高野舞)
佐藤仁美 (倉橋雅美)
深田恭子 (沢口香苗) 松嶋菜々子 (浅田玲子)
真田広之 (高山竜司)
沼田曜一 (山村敬)

見た時期:1999年8月、ファンタ

リングは素敵なパンフレットなどを作り、上手に宣伝してあるのでヒットしたのは納得できますが、私はこの手の映画は好きではありません。最近アメリカでリメイクした版 The Ringリング2を見たのでそれを交えて話を進めます。

ドイツ語で《リング》と言うと、日本語で使われているような意味がまず出て来ます。「指輪物語」はドイツ語では Herr der Ringe といいます。最後に e がくっついているのは、英語なら s に当たり、指輪が複数だということを表わしています。この他にちょっと横にそれますが、 ringen という動詞があり、こちらの方は《レスリングをする、取り組む》、《ねじる、もぎ取る》などという意味もあります。こじつけのようですが、はじめは無責任ママだった主人公の女性が問題に取り組み、トラブルと取っ組み合いをする、そして子供が変な呪いで命を母親からもぎ取られそうになるという事を考えると、このタイトルはうまく内容を連想させるので、なかなかいいタイトルだと思います。英語の方はちょっと忘れていましたが、《指輪、輪》という意味の他に《電話が鳴る、呼び出す》という意味もありました。英語のさかんな日本では皆さんすぐ直感できたでしょう。この話の中では《電話が鳴る》というのも重要な意味を持っています。ですから日本語でリングとタイトルをつけただけで通用する国が2つはあったということです。いや、ドイツ語を使う国は3つ以上あるし、英語を使う国はもっとたくさんあるから、ヒットしたのも偶然ではないか・・・というのは読み過ぎ。

リメイク版のあらすじをちょっと。リングらせんリング2はみな日本で大ヒットしているので、皆さんはもう筋をご存知でしょう。リメイク版の筋をばらしますので、まだどれも見ておらず、楽しみにしている方はここで退散して下さい。 目次へ。映画のリストへ。

冒頭2人の女子高生が幽霊話をしています。1人がおかしなビデオの事を知っていて、それをもう1人に教えています。教えられた子はすっかり怯えてしまいます。暫くすると教えた方の友達の姿は無く、教えられた子のテレビの受像機にはビデオが映っています。話通りその変なビデオを見てしまった直後に電話が入り、女の声で「あと7日・・・」

悪い冗談で済ませられなくなったのは彼女が本当にショック死してしまったため。死の直前に何があったのか分かりませんが、恐ろしい形相のまま死んでいました。友達をからかったはずの女高生もこの事態にショックを受けて精神病院入り。

死んだ子が姪だというのがこの映画の主人公レイチェル。悲しんでいる遺族の話と、友達を無くした高校生の話を聞いているうちに調査をする気になります。死んだ姪と仲の良かった息子の様子もちょっと変。

へんてこりんな話を追い、ビデオのあるバンガローまで来ます。そしてレイチェルも問題のビデオを見てしまいます。で、当然電話もかかって来る。なるほど・・・呪いの話は本当だったのかと納得し始めるのはいいのですが、自分の命はカウントダウンが始まっています。助っ人が必要だというので、ノアを呼び出します。日本の作品では確か別れた亭主だったように思いますが、リメイク版のレイチェルはどうやら未婚の母のようです。ま、喧嘩しているわけでもないのでノアは手伝ってくれます。レイチェルはビデオのダビングをし、1本を精密に分析し始めます。景色を見て、その撮影された場所に行ってみる気になります。ジャーナリスティクな仕事をしているので調査はお手の物。

なるほど、ビデオと同じ島があり、同じ灯台があり、同じ家が建っていて、どうやらここで何かあった様子。農家の主人モーガンを訪ねます。ジャーナリストにはうんざりしているモーガンに嫌がられますが、この家には何か嫌な思い出がある様子で、あまり親切に扱ってもらえません。ま、多少分かっただけでもいいかと、とりあえず引き上げ、別な人と話します。島の女医。彼女の口から呪われた夫婦の話が聞けます。馬の種付けを商売にしていた仲のいいモーガン夫妻はサマラという子供を養子にしてから様子が変になり、奥さんは行方が分からなくなり(自殺らしい)、ご主人は仕事をやめ、サマラは病院行きという災厄が襲った過去の話を聞かせてもらいます。

ビデオの話をして友達を脅かした高校生でが入院している精神病院へも話を聞きに行きます。調査は徐々に成果をあげ、サマラが災厄の元凶で、養子にした母親が思い余ってサマラを井戸に突き落としたため死んだのだろうという事が分かり始めます。

このあたりから幽霊話か、殺人事件かと、両方の線から考えなければならなくなります。レイチェルのカウントダウンがいよいよ最後に近づき、ノアの助けを借りて再び最初のバンガローへ戻ります。そこで床下の井戸を発見、サマラの死体が水の中からみつかります。そうこうしているうちにレイチェルは時間切れ・・・なのにまだ生きている・・・?

というわけでリメイク版はオリジナル版とそっくりの部分がいくつもあります。画面所々にちらっと日本のモチーフも使っています。花札かと思われるようなもみじが出て来たりします。時間もたっぷり取ってあります。主人公は松嶋菜々子の代わりにナオミ・ワッツ。個人的趣味では松嶋の方が気に入っています。ナオミ・ワッツの演技は不足がちでそれも腹の立った理由の1つですが、少なくとも最初いいかげんな母親というトーンだったのが徐々にマジで子供を心配し始めるシーンはそれなりにこなしています。上手いという感じはしません。ワッツが時々ニコール・キッドマンのコピーをしたような表情を見せるのも気になるところ。

主演にジュリア・ロバーツ、グウィニス・パートロフ、ジェニファー・コネリーなどの名前が挙がったたそうですが、演技という点から考えるとこの中の1人の方が上手に演じたか、とは思います。ただそうすると予算が跳ね上がってしまうし、スターに注目が行き過ぎてストーリーがかすんでしまう恐れもあります。

あまりパッとしない出来の中で誉められる点は主人公の息子エイダンを演じたデビッド・ドルフマン(ドルフマンというのはドイツ語で「田舎男」という意味)とブライアン・コックス。コックスはしかしこの作品の演技が良いというのではなくて、色々な所に顔を出している中堅俳優として注目しているだけなので、誉めたことにはならないかも知れませんが。しかしさすがベテラン。雰囲気に上手に溶け込んで沼田曜一の役を引き受けています。

さて、文句タラタラにも関わらず誉めなければ行けないのは、ホラー・スリラーを見て鳥肌が立ったこと。私はかなりの数このジャンルの映画を見るのですが、どんなに驚いても鳥肌が立ったということはこれまでありませんでした。ところがこの映画を見ていて鳥肌数回。そういう意味ではどこか私の気付かない所で気合の入った映画だったのかも知れません。

まあ、もう1つ誉めるとすれば筋が非常に分かりやすくなっていたこと。リング 2 は日本人が日本語で作った作品を日本語で見たのですが、どうも謎を理解するのに手間がかかりました。The Ring の方はその辺実に直線的ですっきりしています。

リメイク版で最初に腹が立ったのが冒頭高校生の女の子が友達を怖がらせるシーン。こういう事をやる人を友達と呼ぶべきなんでしょうか。このぐらいの年頃の女の子は無論こういういたずらが好きなんでしょうけれど、どうも好きになれません。スクリームみたいに映画全体がジョークと分かっている作りだったら腹も立たないんでしょうけれど。

マジで怒ってしまうのは「幸福の手紙」式の手段で被害者を増やして行く手法。手段は違いますがサインを見た後の後味の悪さと共通する嫌な感じが残りました。

リング 2 を見てしまっているので、結末が二重構造になっていて、1度事件が終息したかのように見える事は知っていました。そしてオカルトみたいな物だから、科学的に納得の行く説明は貰えないという事も知っていました。オーメンのダミアンみたいなものです。それはまあそういうジャンルだからいいとして、なぜこの作品をドリームワークスが引き受けて、世界的にヒットしたのか、人はなぜこういう与太話を無視できないのかと、その辺にも腹が立ちます。不条理、説明不可能な話でもキューブみたいなのだったら気に入るんですけれどね。どうも腹立てっぱなしで済みません。

かなりのシーンがオリジナル版を思い出させ、リメイクというより俳優を西洋人に変えたコピー版の様相を呈しています。そのぐらい原作や元の映画が認められたと見るべきか、あるいはそれほど深く日本が制作に関与できたと言うべきか、そして主演に大スター過ぎない人を据えたために、雰囲気やストーリーから関心がそれずに済んだという事で喜ぶべきなのかも知れません。

じゃ、いったい何が気に入らないのか。やはり幸福の手紙的手法でしょう。息子を助けるために誰かを引き込まなければ行けなくなる、コピーをしてもっと大勢の人がビデオを見るようにしなければ行けないというコンセプトに腹が立つわけです。これでは悪徳商法と同じではないか、しかも人の恐怖心を利用して命をもて遊び、のっぴきならないような事態に追い込むのは、楽をして金を儲けてやろうという欲張りが引っかかるねずみ講の商売よりもっと性質が悪いではないかという怒り方をしています。

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