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Nackt

Doris Dörrie

2002 D 100 Min. 劇映画

出演者

Heike Makatsch
(Emilia - フェリックスと別れる寸前の女性)

Benno Fürmann
(Felix - パッとしない男)

Alexandra Maria Lara
(Annette - ボリスの連れ合い)

Jürgen Vogel
(Boris)

Nina Hoss
(Charlotte - デュランの連れ合い)

Mehmet Kurtulus
(Dylan - 株で大儲けをしたヤッピー)

見た時期:2002年2月

ストーリーの説明あり

ドリス・デュリエだというので期待し過ぎてしまったようです。ドイツでは結構評判が良かったようなのですが、この人たちからもう少し良い点を引き出すことができたのではないかと思います。

ストーリーは単純。昔から仲良くしている3組のカップル。あまり裕福ではなく、関係も今ちょうど壊れかかっている2人が、フェリックスとエミリア。まあまあ裕福で、関係もまあまあだけれどちょっとすれ違い気味のボリスとアネッテ。株が当たったらしく大富豪になってしまったけれど、関係が決まり切った物になってしまって、女性が不満を抱いているデュランとシャーロッテ。

あるクリスマスにデュランとシャーロッテが全員を招いて夕食。儲かった2人に対するやっかみ、女性軍は着て行く服の選択、不倫も問題などで3組とも昔のような純真さを失い、ギクシャクしています。

パーティーの最中、時々チクリと来る会話が続いた後、誰かが「目隠しして裸で自分のパートナーを識別できるものだろうか」と言い出します。賭けをしようという風に話がエスカレートし、4人が裸になり、2人が審査員ということに。 暫く体に触れ合って4人なりに確信を持ったところで、時間切れということで目隠しをしていない2人がパートナーを組み合わせます。目隠しをしたままで、「今手をつないでいるのが自分のパートナーか」という問。全員イエスと答えますが、目隠しを取ってみると違っていた・・・。そのため大喧嘩になり、パーティーは解散。その後またそれぞれのカップルは自分を見つめ直し、何とかやり直しを計るという筋です。

この監督だから時々おもしろい会話が飛び出しますが、MON-ZEN に比べるとちょっと物足りない。MON-ZEN はドイツでの評判は今一だったのですが、監督の洞察力はなかなかで、私は誉めています。

Nackt でも時々真実に迫る発言があり、洞察力を発揮しようとの努力は見られます。それでも常套句の範囲を抜けていません。独創性から言っても MON-ZEN の方が常識を外れていておもしろかったです。

弱かったのは俳優の実力にも原因があるのではないかと思います。最初に出て来るカップルはドイツの大スターですが、彼らの実力は現在までのところもっぱら美しい目に発揮されていて、あまり演技力という話は聞きません。マカチはこの作品では限界という感じです。もっとも彼女は使われ方が良いとおもしろさを発揮する人なので、別な作品に期待しても良いでしょう。

フュールマンは他にも何作か見ていますが、同情を集めるような役など、得な役が多いです。1度アナトミーで本当の悪役をやりました。今回最初から最後まで演技の弱さが鼻についていたのですが、最後にちょっと嫌なシーンがあり、そこでチラッと良さを発揮していました。二枚目スターとして売り出されていますが、もしかしたら悪役、それも卑劣な男に向いているのかも知れません。顔がちょっときれいだったもので、良い役ばかり回って来てしまい、本来の能力をまだ開発していないのかという気もします。

彼はドイツの若手スターの1人で、多くのテレビ出演を経て現在は主役を張れる人です。テレビを徐々に卒業し始めたのが90年代の末。

などを見ましたが99年から2000年にかけてたて続けに主演を演じたり、有名人が大勢出る作品に顔を出しています。

後記: その後 Wolfsburg という作品に出ました。こちらではこれまでの彼と違い、卑屈な面もある弱い男を演じています。大成功した作品ではありませんが、彼自身は陰影のある演技を見せています。

残った2人の女性を私は良く知りませんでした。演技はまあまあ。台詞をチャンと言える人たちですが(新人にはまだそこまで勉強していないのに、名前だけ先行してしまう人も時たまいます)、個性を出すところまではまだ行っていないようで、見終わって2人が同じ鬘をつけていたら見分けられないだろうという印象。しかし2人はすばらしいスタイルで、感心しました。女性をバストだの脚だので評価しては行けないのでしょうが、非常にバランスの取れた、痩せ過ぎでもなく、太り過ぎでもない、見ていて同性も異性もため息が出るようなプロポーションです。女性の監督が選んだ主演女優たちですが、タイトルから言っても裸ということが重要なテーマになるので、今回ばかりは多少姿で女性を評価せざるを得ません。

後記: この時まだ個性がはっきり分からなかったニナ・ホスは Wolfsburg で再びフュールマンと共演し、こちらでは2人とも Nackt よりがんばっています。

残ったヤッピーの株で大儲けしたデュラン。彼は俳優としては2番目に良かったです。思いがけなく金が儲かってしまったやさしい男性、自分の持っている物に満足していて、これでいいと思っています。女性が持っている不満を理解することはできませんが、悪意ではなく、自分は幸福な男だと思っています。そのあたりと、それが徐々に崩れて来る場面の演技はこの6人の中では出来が良い方です。

どちらかと言うと中程度の作品に終わってしまった中で、それでもさすがと思わせたのが、ユルゲン・フォーゲル。私は彼をダニエル   ブリュールと並べて時々天才俳優と誉めていますが、今回も彼がいなかったらこの作品、スターが出たという以外にはあまり意味がなくなってしまったのではないかと思います。

この人は天才肌でありながら、天才風に見えないという才能があるようで、この間の試写会に現われた時も気さくなその辺の兄ちゃんという感じ。監督が困っていると何でも手伝ってしまうという癖もあるらしいです。フュールマンだとちょっと不満が残る点がフォーゲルだとかなり良い線まで行きます。たかが映画、たかが脚本のテキストを読んでいるだけなのに、彼に同情してしまったり、「この人きっと私生活でもこういう人なんだ」と思えてしまうというぐらいの演技を軽くこなします。そのくせダニエル  ブリュールと同じく演劇学校には行っていません。美男でもなく、体がかっこいいわけでもなく、これと言ったセールス・ポイントが見えない人です。演技のみで勝負。しかしこの人は時が経つと忘れられるということはないでしょう。

今回の《裸》というタイトルの作品で本当に裸が映ったのは彼1人。同じく大スターのマカチとフュールマンは結局着衣のまま。残りの3人はスタジオでは裸になっていたようですが、女性軍はマネキン人形のような完璧な姿なので、現実味が欠け、メミット・クルトゥルスは直接カメラに映るのは後姿だけという風にごまかしています。フォーゲルには露出狂の気はなく、脚本の趣旨を汲んでの行動でしょう。

クリシェーという意味で気になったのが舞台装置。デュランの家の調度品などが日本を模倣した作りになっています。ドイツで大金持ちになるとそういう室内装飾にする人が時たまいますが、この作品の場合、本物でなくキッチと言われるまがい物風なのが鼻につきます。

監督が前に日本に行って映画を作っているので、日本との関係はなかなか良いようですが(衣装は日本人が担当)、灯篭が置いてあったり、掘り炬燵からアイディアを得たような大きな穴が家の中央にあったり、庭に鯉を飼っていたりというシーンが出て来ます。ところがどれも今一安っぽいのです。

どうも全てが中程度になってしまったのが、《あまりおもしろくない》という感想になったというのが私なりの結論。しかしドイツでは受けているようですし、この監督のことなので今後もおもしろい作品が出て来ると思います。

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