映画のページ

フランス

2003年3月

最近ハリウッド映画を見ていてふと気付いたのですが、フランス人が分の悪い役を演じています。

たまたま見た作品が偶然そうだったのかと思いますが、レオナルド・ディ・カプリオのキャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンでは主人公の母親がフランス人で、夫を裏切り離婚。ドイツ人がよく Schlampe という言葉で表現する「尻軽女」「売女」のように描かれていました。このストーリーは実話に基づいており、両親はともかく、実話を書いた本人はまだ元気に FBI と力中。映画制作でも協力しています。ですからこういう筋の運びに不満があれば、本人からクレームが出たと思いますが。

運命の女2003年 アカデミー賞にまでノミネートされた主人公の女性を誘惑して、堅実な家庭を壊しかけたのがフランスの若い男性。途中でリチャード・ギアに殺され、ごみ捨て場に捨てられてしまいます。そういう風になって自業自得という役でした。この男が殺され、捨てられるのは話の成り行き上仕方ないな、と思わせるだけの説得力があるのですが、なぜそれがフランス人でなければ行けないのかという点が不思議でした。舞台はニューヨーク。この色男が外国人である必然性はありませんし、人種の坩堝アメリカの国際的大都市には国産の色男もたくさんいたでしょうに。この同じ俳優がS.W.A.T.でも悪漢を演じています。これまたなぜフランス人でないと行けないのかという点が不明。

もっと分からなかったのが、ジェニファー・ロペスのメイド・イン・マンハッタン。このタイトルはメイドという言葉に洒落があり、気が利いています。そしてロペスをひいきにしていたので、券が当たった時は大喜びで出かけて行きました。レイフ・ファインズもちょっと前悪役を見たばかりだったので、「名優。どのように変身するか」という興味もありました。筋は本式のシンデレラ物語で、感じのいい運び。脇役にマジな顔をした古株の執事のようなおじさんが出ていて、この人が実はコメディアンという趣向も良かったです。ところがいざ見てみるとこれが恐ろしく政治的な映画で、アメリカの特定の党をばっちり支持しています。それはまあロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマンなども時々やりますから、たまにはそういうのもあるかという程度の感想。

ところが驚いたことに筋とまったく関係なく2人のフランス人の中年女性が登場。ホテルの品物を盗み最後には御用になるという役を演じていました。途中にエレベーターの中でひどい事をフランス語で言っていたら、レイフ・ファインズがフランス語が話せるので恥をかくというシーンもあります。筋とまったく関係無いので、カットしてしまっても困らないランニング・ギャグでした。フランス人の品位を落とすのに役立つだけです。

いったいなぜこんなシーンを素敵なシンデレラ物語に入れたんだろうと考え込んでしまいました。私の世代の女性には「フランス人、フランスの製品なら何でも大好き」という人が時々いました。フランソワーズ・モレシャンという女性がテレビや雑誌で活躍していた時期もありました。私が「ドイツに行く」と言った時、「なぜパリに行かないの」と何度も聞かれました。私はフランス人なら誰でも好きというわけではありません。 しかし意味もなく尊厳を傷つける必要も感じません。無茶な弁護もしませんが、意味もなくこんな事をする気にもなりません。いいフランス人はいい人、悪いフランス人は悪い人、独創性の無い意見ですが、どの国の人でも結局はいい人も悪い人もいるから、万人、万国向けの言い方になってしまうのは仕方ありません。

最近政治的にギクシャクして来たのが行けないのかと思いましたが、政治家の仲が悪くなったからと言っても、ハリウッドはドイツ人をこういう風に扱ってはいません。昔は「ナチを出しておけばそれでいい」というような時代もありました。戦後も「ドイツ語をしゃべる俳優だったらナチをやらせておけばいい」みたいなことで、ハーディー・クリューガー(ベルリン人)、ホルスト・ブーフホルツ(ベルリン人)、ヘルムート・ベルガー(オーストリア人)が出ればナチと決まっていたような時期もありました。しかし最近はそういうのはなくなっています。フランカ・ポテンテの役などは個性があって良かったです。そして今年はドイツ人監督がオスカーをもらいました。

第2次湾岸戦争に反対した国が苛められているのかとも思いますが、反対したのはフランスだけではなく、他の大国もかなり反対しています。それに映画を作るのは企画から最低2年近くかかるものですから、2002年、2003年に公開されるものなら、2000年頃から制作にかかっているでしょう。そんなに前にフランス人がアメリカ、あるいはハリウッドと対立していたかなあ、それどころかフランス人がノミネートされたこともあったのに、と考え込んでしまいました。

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