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刑事グラハム 凍りついた欲望 /
Manhunter /
Red Dragon: The Pursuit of Hannibal Lecter

Michael Mann

1986 USA 124 Min. 劇映画

出演者

William L. Petersen
(Will Graham - FBI 捜査官、プロファイラー、引退中)

Kim Greist
(Molly Graham - グレアムの妻)

David Seaman
(Kevin Graham - グレアムの息子)

Joan Allen
(Reba McClane - 盲目の女性、ドラーハイドのガールフレンド)

Brian Cox
(Dr. Hannibal Lecktor - 超天才連続殺人鬼)

Dennis Farina
(FBI Section Chief Jack Crawford - グレアムの元上司)

Tom Noonan
(Francis Dollarhyde - 猟奇殺人鬼、満月になると子供のいる家族を皆殺しにする癖がある)

Benjamin Hendrickson
(Dr. Frederick Chilton - レクターの収監されている刑務所の所長)

Paul Perri
(Dr. Sidney Bloom - FBI 捜査官)

Stephen Lang
(Freddy Lounds - パパラッチ風ジャーナリスト)

被害者一家 1

David Allen Brooks (Leeds)
Elisabeth Ryall (妻)
Jason Frair (子供)
Bryant Arrants (子供)
Christopher Arrants (子供)

被害者一家 2

John Posey (Jacobi)
Kristin Holby (妻)
Greg Kelly (子供)
Brian Kelly (子供)
Ryan Langhorne (子供)

被害者一家 3

Kin Shriner (Sherman)
Patricia Charbonneau (妻)
Hannah Caggiano (子供)
Lindsey Fonora (子供)

Frankie Faison
(Fisk - レクターの収監されているセクションの看守、4作連続出演)

見た時期:2004年11月

すっかり有名になったレッド・ドラゴンの最初の映画化。原作を読んだ人やレッド・ドラゴンを見ている人には困るようなネタばれはありません。まだどの作品も見ていないという人、今は話は知りたくないという人はこちらへ。目次へ。映画のリストへ。

レッド・ドラゴンを見た後長い間宿題になっていた作品です。「刑事グラハム 凍りついた欲望の方がいい」とか「リメイクの必要は無い」とか言われていたので、ぜひ見てみたいと思っていました。比較するという点ではぜひお薦め。カメラの美しさという点からもお薦めできる作品です。

原作との一致という点ではあまり大きく外れておらず、時間の関係でややカットせざるを得なかったのだろうというのが結論。私が見たのはドイツ語版のダイレクターズ・カット。一般公開で使われなかったシーンだけが急に英語で飛び出すというハプニングがありました。カットされたらしきシーンは、それほど全体に影響の無い部分でした。

レッド・ドラゴン刑事グラハム 凍りついた欲望もデ・ローレンティスが制作に関わっており、撮影にはイタリアからスタッフを呼んでいます。それは大きな成功と言えるでしょう。画面の美しさはモダンな絵画を見ているようでうっとりしました。これが80年代の半ばの作品と考えると、当時抜きん出ていたのではないかと思えます。時代の古さを示す徴候は電話だけ。携帯が普及している現代とちょっと違うのと、電話の機種がやや古臭く見える点だけです。ファッションは一般的な服装でまとめてあり、20年近く経った現在でもドイツの感覚からすると全く古く見えません。自動車はさほど前面に登場せず、警察の車はいつ見ても、どれを見ても似たようタイプで、時代とは無関係のように思えます。ティツィオという名前の有名なデスク・スタンドが出て来るのですが、このスタンドは現在でもドイツでは好まれており、その辺でよく見かけます。こういう風に当時全くモダンなスタイルが、現在もモダンで通ります。

デ・ローレンティスがそれでもリメイクをした理由はキャストなのではないかと思います。集められた人たちは悪い役者ではなく、ジョーン・アレンなどは大女優に成長しています。ブライアン・コックスはコンスタントに出演し続け、最近ではボーン・アイデンティティーとその続編でまた名を挙げています。主演のグレアムをやっていたウィリアム・L・ペーターゼンは今ではブロンドでビル・クリントンの役ができそうな風貌ですが、当時はがらっと違うイメージ。私は顔を知っているはずなのに分かりませんでした。まるでセルピコのアル・パシーノを今のパシーのと比べるようなものです。

後記: その後テレビ・シリーズ CSI で大成功しました。

すばらしい人を集めてありながら、リメイクのレッド・ドラゴンより出来上がりが弱いです。まずハンニバル・レクター。ブライアン・コックスは「ハンニバルは超インテリ男。そういう役を欧州人にやらせるのは当然」などときつい言葉を出していますが、アンソニー・ホプキンスが出すのに成功したカリスマ性がありません。ホプキンスは確かウェールズの人だと思いますが、コックスはスコットランド人。ホプキンスはライバル意識を出してがんばってしまったのかも知れません。ホプキンスのレクターの方が出来がいいです。

刑事グラハム 凍りついた欲望はモーリンやケビンとのシーンがなかなかよくできていて、ここはエドワード・ノートンの時より長い時間を取ってあります。その点は刑事グラハム 凍りついた欲望に軍配。しかし私は小説を読んでいて、ペーターゼンがグレアム役をもらったのはややミスキャストという気がします。ノートンもあまりしっくり来ませんでしたが。ペーターゼンは正義感あふれる敏腕記者か警察の囮捜査担当官といった雰囲気で、プロファイラーというイメージではありません。プロファイラーという職業が当時はまだ新しく、脚本を書いている人が現在ほど深く掘り下げていなかったのかも知れません。ペーターゼンは恐ろしい蟹股で、ドイツ人は「あれでは(脚の間を抜けてしまうから)豚は捕まえられない」と言っていました。ドイツ人の好きな冗談。

デニス・ファリナのクロフォードは、レッド・ドラゴンと比べるといい勝負。ハービー・カイテルと似たような出で立ちです。私はクロフォードは羊たちの沈黙の方を押していたので、やや自分の持っていたイメージと違いますが、下手だと言うのではありません。

下手だと思ったのは意外にもジョーン・アレン。この人の演技は完璧なものしか見ていなかったので、珍しく的をはずしたなと思いました。エミリー・ワトソンの方が興味ある演技をしていました。盲目だということですが、ジョーン・アレンを見ていると暫く目が見えないことに気づきません。

犯人役のトム・ノーナンは健闘していますが、やはりレイフ・ファインズの方がカリスマがあり、両者を比べると負けています。ファインズは特に良い演技をしているわけではなく、私には手抜きに見えましたが、ナルシストぶりや全身に刺青をした体を堂々と見せるシーンなどで強い印象を残します。実際はノーナンの方が繊細な演技を見せています。人を何人も殺してしまってから、レバを通して女性の優しさに触れ、その落差に戸惑っている演技は、あまり有名な人ではありませんが、十分伝わって来ます。撮影を終えてかなりの年数が経ってからメーキング・オブが制作され、出演者はかなり様相が変わっています。ノーナンは優しそうな目をしていて、殺人鬼に見えなくなってしまっています(笑)。

パパラッチ的な嫌な新聞記者の役は引き分け。《嫌な奴》というキャラクターはフィリップ・セイモア・ホフマンの方が上手く出していましたが、炎に包まれて車椅子ごと転がされてくるシーンは刑事グラハム 凍りついた欲望も迫力です。

ドクター・チルトンはホプキンスが出るようになってからの方がよくできています。彼はレクターと張り合っているわけですが、2人の苛め合いは刑事グラハム 凍りついた欲望ではバッサリ切られています。

時間の関係でしょうか、ドラーハイドと母親の関係、彼が FBI では Zahnfee (歯の妖精といった意味)と呼ばれるようになった理由になる歯の問題などがカットされていたり、軽く扱われています。その分グレアムと家族の関係が掘り下げてあります。その辺の取捨選択の判断は難しかっただろうと思います。

レッド・ドラゴンはキャスト、プロデューサーの力の入れ具合などを合わせるにA級作品と言えるでしょう。刑事グラハム 凍りついた欲望はB級と言うには出来が良く、A級と呼ぶには今1つキャス トのテンションが上がっていない、A級半といったところです。どちらにも良い点があり、甲乙つけ難いです。

アンソニー・ホプキンスも協力して、若い頃のハンニバルを描いた作品ができるのだそうです。若い部分は別な俳優が演じるそうですが、所々ホプキンスも 出るらしいです。その上原作者が最近新しい作品を仕上げたとか、もうすぐ仕上がるとかいう話も耳にしました。ということはあと2つ作られるのでしょうか。 このシリーズはリメイクも質ががた落ちということはありませんでしたし、シリーズの3作目としてはレベル・ダウンも最小限。監督はマイケル・マンに始ま り、ジョナサン・デミ、リドリー・スコットブレット・ラトナーと見劣りのしない人達。で、単純な私は次に期待しています。

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