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トランスポーター /
Le Transporteur /
The Transporter

Corey Yuen

2002 F/USA 94 Min. 劇映画

出演者

Jason Statham
(Frank Martin - 運び屋)

François Berléand (Tarconi - 警視)

Qi Shu
(Lai - 車のトランクで縛られていた中国人)

Matt Schulze
(Darren Bettencourt)

François Berléand (Tarconi)

Ric Young (Kwai)

Doug Rand
(リーダー)

Didier Saint Melin
(ボス)

見た時期:2005年9月

マジな作品の後は愉快な作品をご紹介。

事情があってトランスポーター 2 を先に見たのですが、すぐ追いついてトランスポーターを見る機会がありました。両者のストーリーにはあまり関連がないので、どちらを先に書いてもかまわないですが、一応順番を守ってトランスポーターから行きます。

ネタは結末までばれます。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

大分前から見たいと思ってマークしていた作品ですが、まさかコメディーだとは思いませんでした。巷に流布しているポスターを見てできのいいB級アクションかと思っていました。

プロデューサーにリュック・ベソンの名前がありましたが、普通観客が気にするのは主演俳優の名前と、せいぜいで監督止まり。プロデューサーで見る映画を選ぶ人などは滅多にいないと思います。しかしトランスポーターは2作ともかなりベソン色の強い作品でした。

トランスポーターでベソン色が出ているのは監督と主演のアウトフィット。この2人の姿を見ているとつい思い出してしまうのが、グラン・ブルーの主演を演じた俳優。ジャン・レノーのことではありません。実在のジャック・マイヨールを演じた方のジャン・マーク・バーです (バーは俳優兼ドグマ監督、マイヨールは残念ながら2001年12月23日に自殺)。次にベソン色だと言い切れるのは、潜水シーンが出てくるところ。ベソン監督は実は映画界に入る予定ではなく、潜水など水商売(!?)をしたかった人。ところが事故だか病気だかで水に入れなくなってしまい、進路を変更したと聞いたことがあります。水の夢は捨てられず、作った映画が潜水王の話。どうやらその後健康は取戻しまた水に入れるようになったそうですが、おかげで水の中をフィルムに収める仕事についたという二重丸◎。

トランスポーターの主演に連れて来た俳優が、俳優経験の短い、ダイビング経験の長い元ファッション・モデル。モデルの前にダイビングですでに世界に踊り出ていた人です。俳優になる前にそういう経験があったので、スタントなどのスポーツ的な部分は軽くこなし、カメラ映りも良く、プロデューサー、監督としてはあまりいちゃもんつけなくても済むと考えたのでしょうか。

最近山のように仕事を抱えているベソン監督は自分では監督をせず、新人に任せていますが、手堅い出来で、アクション映画としては上出来。脚本がベソン監督の手によるものだと聞いた時、私はタクシー・シリーズを思い浮かべるべきでした。トランスポーターはまじめなアクション映画のふりをしていますが、実はタクシーの乗りなのです。ですから見せ場は車。安定した運転でスカッとします。

車も、主人公の服装も、住んでいる家もきれいに手入れがされていて、ちょっと普通ではないなと思わせるのですが、その辺はボーン・アイデンティティーのジェイソン・ボーンと共通する点があります。こういう職業の人の私生活を見せる映画というのは多くありませんが、モダンな調度品で、部屋はやたらきれいに片付いています。

主人公フランク・マーティンの商売は運び屋。中身が麻薬であろうが、重要書類であろうが一切関わらず、言われた通りの場所に言われた通りの時間に運び、約束の金を受け取るという商売です。悪の世界にも専門職というのがあるらしく、クリーナーといわれる人がいて、犯罪者がドジって散らかした死体や殺人現場をきれいに片付けたりしますが、フランクは悪の世界に関わろうが関わるまいが頓着せず働く運び屋です。

映画の冒頭では銀行の前に待機し、強盗3人と奪った金、合計 xxx キロの運び屋の契約を結んでいました。3人のはずの強盗が4人だと分かると断固として4人目の運搬を拒否します。警察が目の前に迫っているのに、とうとうと《なぜルールを曲げないか》を説明。業を煮やした1人がついに仲間を射殺。3人になったのでようやく車をスタートさせるという徹底ぶりです。

これを見て、マジな映画ではないなと悟ったのですが、それにしては主人公のアウトフィットが決まっていて、コメディーには見えません。しかし騙されては行けません。その後も冗談の連続です。

こういう商売なので用意万端整っていて、逃げる最中に車のナンバーを取り換えたり、大ジャンプのためのガソリンの量もきっちり計算済み。さすがはプロだという見せ場を作っておいて、ギャングを予定の場所まで送り届けます。謝礼が多過ぎる(!?)と文句を言ったり、馬鹿なギャングが自滅するのを皮肉な目で眺めていたり。

本人は丘の上のすてきな家に満足しながら住んでいました。黒いアウディが手配されているので、それを追っていた刑事が訪ねて来ます。しかしナンバーが違い、容疑は一応晴れます。

実はマーティンは現在世界中で大活躍中の英国の特殊部隊の元隊員。事情があって若くして退役。今は引退生活を送っていることになっているのですが、実は隠れて運び屋をやっていたのです。ですから家も防備は整っていました。刑事が1人来たぐらいでは尻尾を出しません。

次の依頼があり、今度は50キロほどの重さの鞄を運びます。ところが道中パンクしてタイヤ交換。彼ほど用意周到な人間にパンクというのはちょっと意外ですが、それが無いと事件に巻き込まれることができないのです。で、無理やりパンク。トランクに入れてあった鞄が動いているのを発見。中には若い女性が縛られて入っていました。

やれやれ。《荷物の中身は絶対に見ないという》自分で作った規則を破ってしまったフランクに災いが降って来ます。彼女には逃げられ、ようやく捕まえて依頼主に届けると、依頼主からは帰りの駄賃に爆弾を渡されます。この辺はあれほど守りの固い男にしては隙だらけ。隙が無いと物語が発展しないのは分かりますが、もう少し主人公のキャラクターに合わせた筋運びにしてもらいたかったです。

自分がいかに間抜けだったかを罵り反省しながら爆弾を仕掛けた男の所に仕返しに行きますが、今度は1度男の所に届けた女性を助けざるを得なくなり、さらに自分の間抜けぶりを呪う羽目になります。巻き込まれ型ストーリーの1つのバリエーションです。

この作品、全体的にやや反女性的な姿勢が見えるのですが、ヒロインは嘘をつきまくります。助かるためには何でもするということをこういう形で表わしたかったのでしょうが、彼女の行動の動機がどうも説得力に欠け、ストーリーとしては骨組みの段階で傾いてしまっています。フランク・マーティーンの役を貰ったジェーソン・ステイサムはそれでも我が道を行くと決めたらしく、自分の見せ場は上手に演じています。ただライとの恋愛っぽい絡みになると信憑性に欠けます。逆に「自分の静かな生活を乱した」と言って頭から湯気を出すシーンに説得力を出しています。こういうタイプの男が好きになる女性は全然違うタイプでしょうからね。普段は仕事の邪魔になると思いあまり女性に興味を示さないでしょうし。

余談ですが、ふと、フランク・マーティーンのタイプの女性版ってあるんだろうかと思ってしまいました。映画や小説でお目にかかったことが無いのです。間もなくドミノという女性版賞金稼ぎの話が公開されますが、彼女は自己破壊型。自分をしっかり護りながらヤバイ仕事を着実にこなし、満足して暮らすというキャラクターは女性ではまだ聞いたことがありません。

レイの話の中で400人近い中国人がコンテナーで運ばれて来るという話に心を動かされたフランクは、彼女を手伝う決心(こういう男が心を動かされるのかと突っ込みたくなりますが、そこは目をつぶりましょう)。彼女を奪回されたりし返したりしながら徐々に問題のコンテナーに迫ります。強盗事件で知り合った刑事はフランクの素性に気付き、敵対するより協力する方が特だと悟り、片目をつぶって留置場から出してやります。

結局刑事、フランク、レイ、一味がコンテナーの近くに集合。ドンパチやった挙句に、決着。フランクは助かり、トランスポーター 2 が作れるようになります。

全体の雰囲気はアクション映画で、パンフを見てもポスターを見てもどこにもコメディーとは書いてありませんでした。しかしこれをマジで取れるだろうか。出演者は誰1人本気にしていませんぞ。

続編: トランスポーター 2  トランスポーター 3

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