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ドミノ / Domino

Tony Scott

2005 F/USA 127 Min. 劇映画

出演者

Lucy Liu
(Taryn Miles - FBIの心理学者)

Adam Clark
(Eric Cosgrove - FBIエージェント)

Donna W. Scott
(Dina Wilson - FBIエージェント)

Keira Knightley
(Domino Harvey - 賞金稼ぎ、ローレンス・ハーヴェイの娘)
Tabitha Brownstone
(Domino、子供時代)

Jacqueline Bisset
(Sophie Wynn - ドミノの母親、ローレンス・ハーヴェイの未亡人)

Mickey Rourke
(Ed Mosbey - 賞金稼ぎ、ドミノの師匠)

Edgar Ramirez
(Choco - 賞金稼ぎ)

Riz Abbasi
(Alf - 賞金稼ぎ、爆薬の専門家)

George Thabet
(Alf、少年時代)

Delroy Lindo
(Claremont Williams - 保釈仲介人)

Mo'Nique Imes-Jackson
(Lateesha Rodriguez - 自動車局の職員、免許証偽造者)

Christopher Walken
(Mark Heiss - リアリティー・ショーのプロデューサー)

Mena Suvari
(Kimmie - マークの助手)

Ian Ziering
(本人役 - リアリティー・ショーの出演者)

Brian Austin Green
(本人役 - リアリティー・ショーの出演者)

Jerry Springer
(本人役 - トークショーの司会)

Joe Nunez (Raul)

Macy Gray
(Lashandra Davis)

Shondrella Avery
(Lashindra Davis)

Dabney Coleman
(Drake Bishop - ホテル、カジノ経営者)

Peter Jacobson
(Burke Beckett)

Kel O'Neill
(Francis - 免許証偽造を依頼したチンピラ)

Charles Paraventi
(Howie Stein - 偽造免許証を使うチンピラ)

Lew Temple
(Locus Fender - 泥棒、クレアモントの知り合い)

Dale Dickey
(Edna Fender - ローカスの母親)

Stanley Kamel
(Anthony Cigliutti - マフィア)

Michelle Fabiano
(Cigliutti 夫人)

Dusty Gilvaher
(Fish Vendor)

Tom Waits
(オープンカーの旅行者)
Domino Harvey
(本人)

見た時期:2005年12月

実話ついでに実話とフィクションのミックスも1つ。

ストーリーの説明あり

完全な実話だと思って見に行ったのですが、どうやら実話とフィクションを適当に混ぜ合わせたようです。ドイツにはパンフも無いし、映画雑誌を見てもインターネットを見ても同じ事が繰り返されているだけ。で、どこまで実話なのか区別するのに苦労しています。時たまドイツ以外の国の報道を見かけました。それを交え区別できる所は区別しながら行きます。

作ったのはトニー・スコット、主演はキーラ・ナイトレー、ミッキー・ルーク、助演には渋い人を連れて来ています。制作に主人公ドミノのモデルになったドミノ・ハーヴェイが協力しているという話はドイツでも出ていましたが、その他にミッキー・ルークとデルロイ・リンドウが演じた人物も協力していたようです。また、ある出来事に関与した本人も登場していて、映画の1番最後にはドミノ・ハーヴェイの顔も一瞬見られます。ですから最後クレジットが出てもすぐ席を立たない方がいいです。

物凄く鮮明な画面を作るのが上手な兄ちゃんと違い、スパンを思わせるざらざらした画面、広告関係の方面から来た人だなと思わせるオープニング。撮影に凝り過ぎて見ていてちょっと肩が凝りました。ここまでしなくても俳優の実力が十分、物語の展開も劇的要素が十分、その上実話が絡んで話題性十分なので、観客は集まると思います。

映画が始まる前の実際の話を少し知っていると、ただのアクション映画でないという解釈ができる作品です。そのためにはドミノ・ハーヴェイという人の出生の秘密を・・・なんちゃって、別に秘密は無いのですが、事情をご紹介。

生まれた家が彼女の運命を決めたのかも知れません。お父さんはローレンス・ハーヴェイ。お母さんはやや複雑で、実母はファッション・モデル。その女性とハーヴェイは結婚せず、ドミノは3番目の夫人に引き取られた様子。その女性もファッション界が大きく揺れ動いた時代に時代の先端を行っていたスーパーモデル。お金持ちの家に生まれ、お父さんは彼女が4歳の時に病死。継母らしきお母さんは金銭感覚がしっかりした人らしく、娘に貧乏をさせるようなことはありませんでした。しかしその恵まれた環境が彼女に不満を持たせてしまったようです。

ローレンス・ハーヴェイなどと言っても名前も知らない人が多くなり、ちょっと年配の人でも名前を聞いただけで、どんな俳優だったのかは覚えていない人が多いでしょう。英国人俳優だと思っている人が多いですし、私もそう思っていましたが、旧ソビエト連邦、現在は独立した国の出身で、家族は南アフリカに移住。南アフリカ軍人として第2次世界大戦に参加。銃を取る仕事でなく、軍内の娯楽関係の部隊に従事したそうです。帰国後俳優業を勉強し直し、英国でも勉強。そのため英国人俳優という印象ができてしまったのでしょう。舞台俳優もやっていましたが50年代にスターになり、やがてハリウッドへ。そこでも60年代頃まで成功。70年代に入り忘れられた感がありますが、1973年に45歳で病死。

ローレンス・ハーヴェイという名前を知らなくても、最近公開されたリメイク作品クライシス・オブ・アメリカをご覧になった方に、リエフ・シュライバーの役をオリジナルで演じた人だと言えば思い当たるかも知れません。ジョン・フランケンハイマー監督の影なき狙撃者でリエフ・シュライバーと同じ役を演じた俳優です。デンジル・ワシントンの役はフランク・シナトラが演じていて、この作品はドミノの冒頭《テレビで古い映画をやっている》ということにしてチラッと紹介されています。そこにシナトラと一緒に出ている男性がドミノ・ハーヴェイの実のお父さんです。(余談ですが、このクライシス・オブ・アメリカ影なき狙撃者はサスペンスたっぷりの作品でお薦めです。旧ソビエト連邦出身の人が、「共産圏の人に操られ・・・」という筋の映画に出演するというのは奇妙なめぐり合わせです。)

さて、お父さんの話はこの辺にして、娘のドミノですが、本人の写真を見ると、若い頃のジョディー・フォスターを思わせるような表情をしています。お母さんがファッションモデルだったためか、モデルとして仕事していたという話が流布されています。ところがこれに関しては身内や本人に近い人からは、ドミノはモデルとして仕事をしたことが無いという話も出ていて、私には判断がつきません。モデルかと思えるようなきれいな写真も出回っているようです。

金持ちの甘やかされた生活を嫌い、男性がやるような仕事を好んだという話はどうやらほぼ事実のようで、消防士だったこともあるのだそうです。自分の手で稼いだお金で暮らしたかったという話も伝わっていますが、逆に富豪の娘の道楽かと思えるような話もあります。賞金稼ぎという珍しい職業についていた時期が数年あるのですが、その時いつもお金が十分あったので普通の人が買えないような上等な銃を持っていたという話も伝わっています。

スコットが映画化したのはこの賞金稼ぎの仕事についていた3年間に起きたエピソードです。このエピソードのどのぐらいが実話で、どの程度がフィクションなのかはつかめていません。人物に関してはある程度信憑性があり、ミッキー・ルークとデルロイ・リンドウの元ネタが存在します。またドミノは武術に凝っていたらしく、賞金稼ぎになれるぐらいの体力は持ち合わせていたようです。消防士をやっていたということですから、危険に対する神経も据わっていたと考えていいのかも知れません。

同時に映画で扱われていないドラッグの問題も抱えていました。鶏が先か、卵が先かという問題になるのかも知れませんが、賞金稼ぎの仕事をしていると、捕まえた男がドラッグを所持していたなどという場面もあったらしく、目の前に取っても誰にも気付かれない現金をちらつかされたのと同じ状況だったそうです。大きな危険と鉢合わせで生きている賞金稼ぎにドラッグというのはもしかしたら職業上つきもののトラブルなのかも知れません。ドラッグから抜けようとしたのは事実で、母親も彼女をクリニックに入れたりして手を切らそうとしています。彼女の急死の原因はドラッグではなく強度の痛み止めの服用で、一応事故として取り扱われています。

賞金稼ぎというと普通は西部劇を思い出しますが、現代のアメリカにもある職業のようです。この映画を見るまで知りませんでした。保釈金を積んで豚箱から出たままトンズラしてしまう容疑者を見付けて引き渡すと、謝礼が貰えるのだそうです。 日本はちょっと前まで戸籍や、住民登録のシステムがわりと良く機能していて、どこかに隠れて住んだり、逃げにくい環境でしたが、アメリカは州が変わると法律ががらっと違っていたりして、トンズラしてよその州に逃げ込めば、新しい人生が開けてしまうことがあるのです。外国へ高飛びしてしまう人もいるのでしょう。ポーランド人の映画監督の有名なエピソードもあります。ある有名歌手も「またやり直そう」なんて歌を歌っていました。そんな事をされると困るのがアメリカの裁判所や警察で、そこに目をつけたビジネスがあったのです。

裁判所は法律書に照らし合わせて何かを決める場所です。命に関わる出来事が起きる場所ではありません。警察はやや乱暴ではありますが、一応法律書がマニュアルで、あまり無茶はできない仕組みになっています。違ったかなあ確かこの説明で良かったはずだけれど。しかし司法、行政ときれいごとばかり言っていられない場合があり、建前と現実の間を橋渡しする下請けの仕事がいくつかあるようなのです。その1つが保釈専門の弁護士や仲介人。ジャッキー・ブラウンにもそういう職業が出て来たように記憶しています。そしてさらにその下請けとしてトンズラした人間をとっ捕まえる荒っぽい仕事を引き受けている人たちがいるのです。それがドミノたち。謝礼が出るので「賞金稼ぎ」などと呼ばれているようです。

ここからストーリーの説明に入ります。どうやらフィクションらしいです。まだ知りたくない人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

映画の冒頭キーラ・ナイトレーがドミノに扮して登場します。FBI の取調室でぐったりしながら、FBI の心理学者になっているルーシー・リウと話し込んでいます。女が2人向き合っていても友好的な関係ではなく、狐と狸のばかし合いになるにしろ、つかみ合いの喧嘩になるにしろ、両者ともこれまで戦い抜いて来た猛者だという雰囲気です。つまらないトリックには引っかからず、脅しも効かないドミノですが、披露困憊という顔で決心し、話し始めます。

映画に出て来る説明と実話は彼女の生い立ちの部分はかなり重なります。映画制作に本人が協力していたことを考えるとかなり本当の話が混ざっているようです。富豪刑事の規模まで行かないとしても良家のお嬢様で育ったドミノは、子供時代ミッション・スクールに預けられていました。父親はこの作品ではすでに死亡。両親の愛情につつまれて育ったとは言えませんが、経済的には何不自由無く育っていました。有名な俳優の父、ファッション・モデルの母の間に生まれたため、職業につくにしても最初から上の方からの出発が可能でした。学校とはあまり上手く行かなかったようで、代わりにティーンの頃から武道を習ったりしていたようです。で、両節棍やナイフを持ち歩いたりしています。

ドミノは甘えた環境に上手く適応できず、いくつかの職業を試したもののうまく行きません。思い出話が終わり、ある日賞金稼ぎの養成ゼミナールに出席するドミノのシーンから アクションがはじまります。90年代中頃のようです。

後で仲間になる男たちが市民講座のような形でゼミナールを催しています。ところが半分ほど行ったところで全員金をつかんでトンズラを試みます。それを察知したドミノは男たちを追いかけ、追いつきます。強引に弟子入りを承知させ、その日からドミノはメンバーの一員になります。

メンバーというのは師匠に当たるエド、スペイン語を話すチョコ、アフガニスタン人で運転と爆発物担当のアルフ。この4人が言わば実行犯。《犯》と言っては行けませんね。実行組です。しかし犯罪者とどこが違うのかと言われるとぎりぎりの綱渡りをしていると言わざるを得ません。その4人に仕事を持ちかけるのがクレアモンという保釈仲介人。警察が容疑者のトンズラを確認すると、裁判所から公式の手配命令を受け取り、それに基づいて容疑者を連れ戻すという図式になります。生存している容疑者を連れ戻すべきなのか、死亡している容疑者をモルグに運び込むべきなのかが明記されているのかは分かりませんでした。いずれにしろ危険な商売です。

エドの所に入門した時すでにドミノはいくつかの技術を持っていたのですんなり仲間に入れ、その後4人はすばらしいティームワークで仕事をこなします。トラブルは彼らの方でなく、クレアモンの方から生じます。

クレアモンには病気の身内がいて、莫大な治療費がかかります。さらに彼には運転免許証を発行する役所に勤める娘レティーシャがいて、彼女が窓口に来た4人のチンピラといさかいになります。クレアモンは金を工面するため自らトラブルに飛び込んで行きます。

娘が友達数人とマフィアの金1000万ドルを奪い、マフィアに「その金を取戻してやるから礼金30万ドルをよこせ」と持ちかけます。クレアモンの娘たちが犯人だとは知らないマフィアはその話に応じます。このままですと「自分の配下の賞金稼ぎが金を盗んだ輩を発見して取戻した」という筋書きでマフィアを納得させることができます。娘たちはゴムの仮面をつけているので顔を見られず、男も混ざっている一行ですが、全員アメリカの4人のファースト・レディーの服装をしているので、男女の区別すらつかない仕掛けです。

番狂わせはレティーシャから起きます。免許証発行の窓口でチンピラが4人分の免許証を偽造するようにレティーシャに持ちかけ断られます。それに怒ったチンピラは彼女が偽造を引き受けることを上司にばらすぞと脅します。実際には彼女は重病の身内に関する健康保険のごたごたで上司から首を言い渡されてしまいます。

レティーシャは偽造免許の件で FBI の取調べも受けることになり、そこでこのチンピラがマフィアの現金を奪うらしいという話をします。自分たちが奪う1000万ドルを自分に嫌がらせをしたチンピラのせいにしてしまえると思ったのです。

次の番狂わせはチンピラの方から起きます。チンピラが偽造免許を欲しがったのは他愛ない理由からだったのですが、中に大物マフィアの息子が入っていたのです。その次の番狂わせは、ドミノたちにテレビのクルーが張りついていること。

荒っぽい仕事でも違法と合法の違いはあります。ドミノたちの仕事は合法的なので、テレビ番組に取り上げてもらえるのです。スコット監督お気に入りのクリストファー・ウォーケン演じるプロデューサーから、リアル・タイムで賞金稼ぎの仕事を取材をするという話が持ち上がり、ドミノたちは暫くの間2人のキャスト、プロデューサー他数人のスタッフと一緒に行動します。

これだけ番狂わせが続いてしまうともう運命を支配する力はありません。エスカレートが起こります。

レティーシャたちは1000万ドルを奪った後車を降り、消えてしまいます。彼らの本当の姿は監視カメラにも写っていません。残った1人が全額を持って消えます。消えた先は自分の母親の家。冷蔵庫の中に金を隠し、暗証番号のついた鍵をつけます。まんまと金を1人占めしたかのようですが、彼ははめられているわけです。

エドたちは元々プロですし、彼をはめているクレアモンが指示を出しているので、トンズラした男はすぐ見つかってしまいます。ドミノたちは彼を連れて母親の住んでいるトレーラーに向かいます。(間の抜けた話ですが)冷蔵庫の鍵の暗証番号が息子の腕に刺青されていると知ったチョコはソウのような手間のかかることはせず、 顔色1つ変えず息子の腕をもぎ取ってしまいます。それをトレーラーからショットガンで応戦して来る母親に放り投げるという荒っぽい仕事です。テレビの出演者はさぞかし驚いたことでしょう。

予定通り母親から金を奪った(いえ、依頼通り取り返した)ドミノたちはこの金をクレアモンがマフィアと取り決めた場所に持って行けば任務終了です。しかし強奪したはずの4人に警察の手配が出ていないことを不審に思ったドミノが問い詰めた結果、もぐりの仕事だったことが判明。やばいっす。クレアモンの言う通りラスベガスに向かい、早々に金を渡して手を引きたい。

もぐりの仕事だというので、こんな物をテレビで放映されては大変。そこでアフガニスタン人運転手が活躍。撮影済みのビデオを積んだ車ごと吹き飛ばしてしまいます。

小悪党だったはずの若いチンピラ4人は死ぬような目に遭います。金を奪われたマフィアが追っ手を放ち、FBI も追っています。中に大物マフィアの息子が入っていると分かり、クレアモン以下全員真っ青。金を奪われたマフィアが事情を知らずこのまま無実の4人を殺してしまったら、その後は火薬庫にガソリンをまき、火を放つようなことになります。クレアモンのお尻は火でボーボー。やばいっす。

金を奪われたマフィア、金を奪ったとされる4人組、その親の側のマフィア、本当に金を取ったレティーシャたち、レティーシャと同じグループに属するドミノたち、無理やり連れて来られたテレビのクルー、偽造免許から現金強奪事件にたどり着いたと思っている FBI がラスベガスに集まって来ます。当然ながら大騒ぎになるのですが、どういうおとしまいになるかは言いません。ま、ドミノが最初の所で FBI と話をしているので、フィクションの彼女は取り敢えず生存。本人が死んだのも昨年なので、彼女が無事この事件を切り抜けたことだけは間違いない!・・・で他の人は・・・?

一件が落着した後ちょっと前まで生きていたドミノ・ハーヴェイが映画の最後にチラッと顔を出しますので、クレジットの紹介が始まっても席を立たない方がいいです。しかし彼女の顔を見て私はぞっとしました。35歳だそうで、ショートカットでこぎれいにしていますが、地獄を見たのだろうと想像させてくれます。ずっと強気で生きて来た人ですが、もう半分あの世に行きかけているような表情です。年齢は完全に超越していて、35歳と言われても、体力のある50歳の女性だと言われても納得します。死因は強い鎮痛剤を取り過ぎた結果と発表されています。ちょうど何かの薬の不法所持で起訴されていたそうですが、裁判が嫌で自殺ということは考えにくいというのが私の印象。そういった表向きの問題より、人生に疲れたという印象を与える乾いた笑顔でした。

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