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007/カジノ・ロワイヤル /
Casino Royale

Martin Campbell

2006 USA/D/UK/Tschechien 144 Min. 劇映画

出演者

Daniel Craig
(James Bond - 英国秘密諜報員、殺しのライセンスをもらったばかりの男)

Judi Dench
(M - ボンドの上司)

Eva Green
(Vesper Lynd - 財務省の役人)

Mads Mikkelsen
(Le Chiffre - 本名不明の悪党)

Ivana Milicevic
(Valenka - シフレの愛人)

Jeffrey Wright
(Felix Leiter - CIA)

Giancarlo Giannini
(Mathis - ボンドの協力者)

Simon Abkarian
(Alex Dimitrios - 死の商人の一味)

Caterina Murino
(Solange - アレックスの妻)

Jesper Christensen
(Mr. White - 大物テロリスト)

Isaach De Bankolé
(Steven Obanno)

Sebastien Foucan
(Mollaka - マダガスカルのテロリスト)

Claudio Santamaria
(Carlos - 悪党の依頼を受けて爆弾をセットする男)

Jürgen Tarrach (Schultz)

見た時期:2006年12月

今年の幕開けはジェームズ・ボンドです。

予告はあちら。いくつか前評判に触れています。こちらのページでは新作映画中心で話を進めます。

ストーリーの説明あり

ざっと説明しますが、最後の事情は秘してあります。

ついに見ましたジェームズ・ボンド。公開は日本とほぼ同時でしたが、その時は懸賞に当たり損ねて逃しています。懸賞というのは運なので、当てにしては行けませんが、ちょっと失望しました。それほどこのボンドを見てやろうという気があったのです。

もう遥か昔のことですが、原作も読んだことがありました。それがその後映画化されたカジノ・ロワイヤルとあまり違うので愕然としたものです。そしてこのカジノ・ロワイヤルの雰囲気がショーン・コネリーの雰囲気とも合っていないので、いつ知れず私は頭の中でカジノ・ロワイヤルとジェームズ・ボンドを分けて考えていました。それだけ不運な物語だったと言えます。

ご存知のようにジェームズ・ボンドはショーン・コネリーの功績もあって一人歩きを始め、その後後継者によってどんどんイメージが変わって行きました。そのため私はもう映画のボンドとイアン・フレミングは関係がないものと割り切っていました。

そういう意味でこの新装再映画化 007/カジノ・ロワイヤルはちょっと原点に戻るような感じがあります。

ストーリーはわりと単純です。新米諜報員ジェームズ・ボンドが仕事を荒っぽく片付けたので、上司 M の怒りを買ってしまいます。物は壊し、治外法権の外国大使館に協定も無く無断で侵入し、捕まえるはずの相手は殺してしまい、顔写真はバッチリ取られて新聞に載ってしまうなどドジ続き。M から仕事がずさん過ぎると怒られ、できるだけ遠くに行って2度と自分の目障りになるような事はしてくれるなと言い渡されます。監視のために体にはしっかり探知機をうめ込まれ、その上子守り付き。態度は傲慢でも自分のドジに気付いていたボンドは調査を続けます。

ボンドが自分なりに事件の跡をたどって行きついた先は Lord of War に出て来ると似合うような悪党。演じるはデンマークで1番セクシーなコメディアンのマッズ・ミケルセン。外国の映画に出るというので 007/カジノ・ロワイヤルでは襟を正してしっかり悪に徹しています。

上司 M はボンドが暴走するけれど役に立つ行動をしていることに気付き、自分たちが追い詰めようとしている目標に暴走機関車ボンドをぶつけます。ミケルセンの役名は《暗号》とか《数字》となっていて、本名は最後まで分かりません。

ミケルセンはミスター・ホワイトという男の依頼で、アフリカの悪党から金を預かり、それを株式の取引につぎ込み、儲けを何倍にもしようと考えていました。彼には賭け事という弱みがあるのですが、最初は自分の都合のいい時に株価が上がったり下がったりするように持って行くという確実な方法を取っていました。飛行機会社の株を狙い、会社の信用ががた落ちになるように爆発事件を起こす予定でした。ところがそれを血気盛んなジェームズ・ボンドが大アクションで防いでしまうのです。で、爆発は起こらず株価も通常通り。大失敗です。

ミケルセンに金を渡したアフリカ人は怖い男で、どこまでも「俺の金を返せ」と手下を連れて追いかけて来ます。ミケルセンは大好きなギャンブルで失点を取り返そうとします。ポーカーのベテランなので自信はたっぷり。さらに自分の配下の人間を周囲に置き、対戦相手のジェームズ・ボンドにしっかり監視の目を光らせています。ただここに彼の弱みがあります。井上さんがしっかり出費を制限して規律正しく賭け事に興じているのに、ミケルセンは挑発されると際限がありません。再びボンドにしてやられお金を全部すってしまいます。トゥー・ストライク。

ミケルセンの役をベン・アフレックに振らなかったわけがよく分かりますねえ。アフレックにやらせたら、映画の撮影でもポーカーには勝ってしまう。アフレックはポーカーのトーナメントで上位に入るようなプレイヤーです。2004年にはカリフォルニアのトーナメント優勝。賞金4000万円をもらって2005年の世界トーナメント出場権も獲得。趣味はギャンブルとのことですが、才能はあるようです。

これまでにもボンドに毒を盛るなど非常手段を使っていたミケルセンですが、遂にボンドを拉致、拷問して、ボンドが受け取る金の入った口座のパスワードを言えと苦しめます。しかしミケルセンは2度も仕事に失敗した男。組織の方から見るとボンドでなく、ミケルセンにリスクの赤信号が灯っています。三振は間近い。

自分の口座にガッポリお金を入金され、仕事で彼を見張っている会計監査の女性ともできてしまい、ルンルンのボンド。しかしこの作品は144分という長さで、まだ時間が余っています・・・。

というのが大体のストーリーです。

公開の週、2位の観客動員数を誇りましたが、この作品が映画館にかかるまではあれこれ否定的な噂が流れたものです。特に主演のクレイグがダメ男だという話が多かったです。ドイツでは彼は有名女優のハイケ・マカチのボーイフレンドだということで知られていますが、実力の方はあまり報道されていませんでした。マカチとは長く付き合っていたのですが、ボンドの話が出た頃に別れています。

私は原作に比べこれまでのボンドが別なイメージで一人歩きし過ぎたように思っていたので、クレイグの方がいいかとちょっと期待していました。見た結果の感想は、まだ《クレイグ版ボンドに慣れていないので違和感がある》というものでした。例えば冒頭のクレジットが出るシーンと音楽はショーン・コネリー時代の方が良かったです。生き生きとしていましたし、わくわくさせるものがありました。それに比べると安っぽく平板です。出演者もコネリー版には独特の雰囲気があって、私は心行くまで楽しみました。ですからああいうタイプの映画を期待して見に行くと外れです。

しかしコネリー版と切り離して見ると、かなりできがいいです。「アクションは本物だ!」と思える気合の入り方。人を追いかけるシーンと、車を追いかけるシーンがあるのですが、どちらにも力がこもっています。

ボンド・ガールの人選にも紆余曲折があり、有名無名の女性たちが並んだそうです。中には首を傾げるような人も入っています。ナオミ・ワッツ、シャーリーズ・セロン、タンディー・ニュートン、アンジェリーナ・ジョリー(ボンドはミスター・スミスではない!)、シエナ・ミラー、ナターシャ・ヘンストリッジ、ジェシカ・シンプソン、スカーレット・ヨハンソンの名も見られます。ボンド・ガールと言えそうな役は複数ありそのどれを考えてのキャスティングかまでは分かりません。

1番重要な役はヴェスパーという名の監査員。その役に選ばれたのがエヴァ・グリーン。彼女の人選にも違和感を持つ方もおられるかも知れません。はじけるようなグラマー女優ではなく、比較的地味なタイプの人です。彼女の映画の中での職業が既婚の会計監査。ビキニ姿で海岸を闊歩とか、パーティー三昧の生活は本来仕事には含まれていません。その上ボンドに好かれるだけの知性と上品さも必要。そういう意味でエヴァ・グリーンには合格点をつけていいと思います。

私が最初に彼女を見たのはルパン(1世)。出演作はあまり多くありません。それなのになぜ急に大作に出たのかと言うと、彼女のお母さんが雨の訪問者で一気に有名になったマルレーヌ・ジョベール。偶然ですがお母さんの生まれは北アフリカ。チラッと 007/カジノ・ロワイヤルの筋にも関連します。グリーンというのはお父さんの名前で、グリーン家には女優をやっている身内がいます。英語との関わりの多い人で、ボンド映画に出ることには問題はなかったようです。

ボンド・シリーズではボンドは1度結婚しますが、すぐ破綻。その原点に近い出来事が第1作のカジノ・ロワイヤルでも起きます。ダブル・オーの資格をもらったばかりの新米ボンドにすぐ引退を決心させてしまうほどボンドはこのヴェスパーという女性に惹かれてしまうのです。いいんかいな、そんなに公私混同してと思いますが、クレイグはわりと上手にそういうシーンをこなしています。ボンドに慣れた方ですとここで、ああ、彼女は死ぬなと思います。もう1つの小説では新婚旅行に出た直後に花嫁がやられてしまうという流れでしたが、それにそっくりな雰囲気になって来ます。そして案の定・・・。ボンドに引退を考えさせる女性としては、上にぞろぞろ出て来た女優よりエヴァ・グリーンの方が合っています。

まだダニエル・クレイグに慣れていないためかなり違和感がありますが、それはこれまでの歴代の映画ボンドが小説ボンドからずれていたからです。クレイグ版には小説路線に近付ける努力の跡が見え、これまでのやや子供じみた冒険物とは一線を画しています。ストーリーは幾重にも秘密が隠されていて、ちょっと多過ぎやしないかと思ったぐらいです。144分、2時間はきれいに通り越しています。本来なら終わりになるはずなのに終わらないので、単にそれだけの理由でこりゃまだ何かあるなとばれてしまい、ちょっと残念です。

クレイグが弱いと言われた理由は、弱いからではなくやや女性的な雰囲気を持っているからでしょう。アクションはたっぷりで、彼自身の動きも凄いですが、冒頭ボンドに追い掛けまわされるアフリカ人のスタントがもっと凄いです。飛行場でのアクションは飛行機の撮影の仕方が良く、妙に大きく感じます。この飛行機にオイルのたっぷり入ったタンクローリーをぶつけて爆発させようと狙う男を追い掛けまわします。

カジノ・シーンにも時間を充分取ってあり、ポーカーのルールを知っていると楽しめます。ゲームの展開に集中できるような演出にしてあります。

オープニングのクレジットが出るシーンはこれまでのシリーズとはっきり一線を画し、まったく似ていません。私には新しいオープニングはやや安っぽく見えました。上にもちょっと触れましたが、ショーン・コネリーの時が懐かしかったです。

誰がボンドをやるべきだったかは分かりません。クレイグには私は今のところ違和感を感じます。いずれ練れて来るかも知れません。挙がった候補の中では私はクライブ・オーウェンが合っているように思います。候補者にはこんな名前も見つかります。

ヒュー・ジャックマン、クライヴ・オーウェン、ヨアン・グリフィズ、クリスチャン・ベール、エリック・バナ、コリン・ファレル、ジュード・ロウ、オーランド・ブルーム。その他にこの人たちほど有名でない人も候補に上がり、3桁の数だったそうです。ストーリーの内容から英国人を選ぶものと思っていましたが、英国人でない人も含まれています。

今後いくつか続編が予定されており、その都度大きな話題をさらうでしょうが、新装開店の第1作はこれまでの作品より中身が濃いように思えます。

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