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DEATH NOTE デスノート /
Death Note

金子修介

2006 J 126 Min. 劇映画

出演者

藤原竜也
(夜神月 - 法科の学生)

鹿賀丈史
(夜神総一郎 - 警察の本部長)

満島ひかり
(夜神粧裕 - 月の妹)

五大路子
(夜神幸子 - 月の母親)

津川雅彦
(佐伯 - 警察庁長官)

松山ケンイチ
(竜崎/L - 警察の相談役)

藤村俊二
(ワタリ - Lのお守)

香椎由宇
(秋野詩織 - 月のガールフレンド)

細川茂樹
(レイ - FBI捜査官)

瀬戸朝香
(南空ナオミ - 元FBI捜査官、レイの婚約者)

青山草太
(松田 - 刑事)

中村育二
(宇生田 - 刑事)

奥田達士
(相沢 - 刑事)

清水伸
(模木 - 刑事)

小松みゆき
(佐波 - 刑事)

中村獅童
(リュークの声 - 死神)

戸田恵梨香
(弥海砂 - モデル、タレント)

見た時期:2007年8月


デスノート the Last name /
Death Note: The Last Name

金子修介

J/USA 2006 141 Min. 劇映画

出演者

藤原竜也
(夜神月 - 法科の学生)

鹿賀丈史
(夜神総一郎 - 警察の本部長)

満島ひかり
(夜神粧裕 - 月の妹)

五大路子
(夜神幸子 - 月の母親)

戸田恵梨香
(弥海砂 - モデル、タレント)

津川雅彦
(佐伯 - 警察庁長官)

松山ケンイチ
(竜崎/L - 警察の相談役)

藤村俊二
(ワタリ - Lのお守)

香椎由宇
(秋野詩織 - 月のガールフレンド)

細川茂樹
(レイ - FBI捜査官)

瀬戸朝香
(南空ナオミ - 元FBI捜査官、レイの婚約者)

青山草太
(松田 - 刑事)

中村育二
(宇生田 - 刑事)

奥田達士
(相沢 - 刑事)

清水伸
(模木 - 刑事)

小松みゆき
(佐波 - 刑事)

片瀬那奈
(高田清美 - 月の学校友達)

マギー
(出目川 - メディアの男)

上原さくら
(西山冴子)

前田愛
(吉野綾子)

板尾創路
(日々間数彦)

池畑慎之介
(レムの声 - 死神)

中村獅童
(リュークの声 - 死神)

見た時期:2007年8月

2007年ファンタ参加作品

★ 漫画から起こした作品

今年は作品にばらつきがあり、良いものばかりが揃ったわけではありませんでした。結果として今年のハイライトは日本の映画がたくさん上映された真中辺りの2日ほどでした。これまで日本からはあまりぱっとしない作品が何度か来ていたのですが、今年は楽しめました。その1つがこのデス・ノート。一挙に1、と2が上映されました。

日本のアニメや漫画はフランスで好まれていましたが、最近他の国にも波及し、ファンが増えています。ついにはベルギーでデス・ノートを意識した事件まで起きてしまいました。死体の一部とノートの切れ端らしき物が発見されたと発表されています。眉唾ですが。死体はどこかの研究所から持ち出したという疑いも生じています。切れ端の方は日本語の文章が書いてあるのですが、どうやら書いたのは欧米人らしく、文末の「です。」が DESS となっていた様子です。DESS ノートで洒落のつもりだったのでしょうか。詳しい事情は耳に入っていないので、この話は話半分と取って下さい。

さて、本題に入りましょう。井上さんから前情報が十分入っていたので期待していました。元々は小さなホールで上映のはずだったのですが、急遽変更になってドイツで1番設備の良い大ホールへ移動。続編も大ホールでした。別に音響効果が良ければいいという類の作品ではありませんが、観客も十分入り、楽しく見ることができました。

★ 漫画から作られた実写映画

元々は漫画だそうで、それを実写映画にして、さらにアニメも作られるという大成功。漫画の作者大場つぐみというのが実在しているか良く分からない人なのだそうで、それがさらに興味をかき立てます。ベテラン漫画作家のペン・ネームという説もあるのだそうです。

日常生活の鬱憤を晴らすのにいいようなストーリーで、現実の話ではありません。ファンタにぴったりのファンタジーです。漫画的、非現実的に描いてあるので、見ていてソウのような不快感はわいて来ません。子供っぽいストーリではありますが、俳優は一生懸命演じていますし、セット、調度品もインチキに見えず、日本の現実を表わしています。その辺の匙加減が良く、リラックスして見ていられました。

これは元々漫画なのだ、目くじら立てては行けないのだと自分を納得させなければならなかったのは登場人物の名前と変なアルファベット。わざと現実味の無い名前を選んであり、妙な読み方をします。作者はそれをもって、「これは遊びの世界の話なのだ」と宣言したのかも知れません。私はあまり名前に凝るのは好きでないのでちょっと引っかかりました。もう1つ変に思えたのは大文字のアルファベットの使い方。日本では時々見ますが、古い字体のアルファベットの使い方が上手ではありません。そのためせっかく乗っていたのにちょっと興醒めしてしまいました。

逆に見る前より良いと思えたのは死神の外見と何人かの俳優。これについては後で触れます。

★ おもしろい邦画が少ない

最近ファンタに来る日本の作品は質が落ちていたり、極端だったりでここ何年か中国、香港、韓国に負けていました。国内のテレビで良い作品がいくつも出ているという情報が井上さんの方から入っていたので、私は演技人、監督などが現在はテレビの方に取られていて、あまり外国に映画を出していないのだと割り切っていました。残念と言えば残念ですが、俳優や監督は育っていて、不毛時代ではないのだと考えていました。

★ あらすじ

子供じみた願望が実現してしまう数奇な運命に遭遇した大学生の話で映画2本作られています。4時間半弱。設定は日本中に知れ渡っているのでご存知でしょうが、黒いノートに名前を書くと、その人物が間もなく死にます。事前に名前と顔の確認が取れていれば、本人(つまり犯人)は全然別な場所にいても殺せます。アリバイの問題が生じません。

ノートの使い方にはいくつかルールがありますが、そう難しい話ではなく、同姓同名の人がまきぞいを食ったりしないようになっています。何人でも殺せます。直接手を下す必要はありません。思いつくだけでいいのです。死因は横着をした場合は心臓麻痺。手の込んだ事をしたい時は、詳細を書けばその通りになります。現実に矛盾するような方法を書くと一律心臓麻痺になります。最近著名人が心不全で亡くなりますが、もしかしたら・・・(笑)。

主人公は夜神月(やがみライトと無理に読ませる)。有名大学の法科に入った月は法律の限界を感じていました。偶然手に入ったデス・ノートで本当に人が始末できると分かり、どんどん名前を書いて行きます。間もなく登場した人相の悪い死神に臆することも無く、せっせと殺して行きます。

今年のファンタは自分でオトシマエをつけるストーリーがやたら目立ちましたが、デス・ノートもその部類に入ります。他の作品に比べ、デス・ノートは最初から「お遊びだ」と明記してあり、しかもこういうオトシマエに反対の人物が何人も登場するので、一定の良識を守っていると言えます。1度はカッとして「やっつけてやりたい」と思っても、2作が終わるまでにそういう方法に反対を唱える人が多く出て、きちんとブレーキをかけています。その点が他のオトシマエ作品と異なっています。他の作品は「この人はこんな目に遭ったのだから、この結果も仕方が無い」という持って行き方が多く、私は引いています。社会が住みにくい場所になって行く現在、ガス抜きのために作られたのかも知れないとはかんぐってしまいます。

ストーリーの方ですが、月の熱心な働きで司法を完全に無視され、毎日毎日囚人や限りなく黒に近い容疑者が心臓麻痺で死んで行くので、警察はお手上げ。一般市民の中には社会の邪魔者が消えてくれて良かったとか苛められっ子が苛めっ子から解放されて良かったなどという意見も出ますが、本当のところ、人類全員がこの青年に首根っこを押さえられた形になります。面子が丸つぶれとか権威が傷ついたという次元を通り越して、恐怖政治です。

このルール違反は犯罪だということで警察は何十人も動員して捜査に当たります。国際協力もあります。常人だけでは無理だというので、秘密の助言者 L も呼び出されます。L は天才的に頭が良く、人々からキラと呼ばれるようになったデス・ノートの持ち主夜神月に対抗できる唯一の人物です。最初は匿名で連絡をして来るという形の協力でした。

ところがそれまで犯罪者など、社会もいくらか納得のできる者だけが殺されていたのが、ある日を境に警察官も含む非犯罪者、非容疑者にも被害が及ぶようになります。さらにはそれまでは名前と顔の確認が必要だったのが、ある日を境にそういう制限無しに人が死ぬようになります。

捨て置けない事態ですが、捜査をする人の命までが危なくなったため、警察本部の大所帯は急にしぼみ、数人の刑事と本部長、そして L とそのお守り役のワタリという男だけになってしまいます。

犯人は第1話の最初から観客にははっきりばれていて、この事件の本部長の長男。デス・ノートのユニークなところは、月の当初の目的だった世直しストーリーが脱線して行く過程に長い時間をかけている点です。

月は中流階級で育ち、家族は仲がいいです。父親は警察の本部長まで出世した人で、モラルもあり仕事熱心。専業主婦の母親はそういう夫を理解し、家庭を守っています。妹も気立てが良く、一家は円満。無理に世間体を取り繕う家族ではありません。月は頭がとても良く、大した苦労も無く日本で1番難しい大学に入ってしまいます。スポーツもでき、女性にももて、オタク・タイプではありません。法学部を卒業していずれは検事か警察に入るかなどと考えていました。

どうやら日本にもどうしようもないアホ天才(他人が馬鹿に見えて仕方の無い頭脳明晰な男性。なぜか女性はメディアに出ないようです。頭脳は明晰でも自分をどう処したらいいかはあまり分かっていないようなタイプです。凡人でいることの良さに気づく瞬間です。)がいるようで、時々インターネットのビデオで見かけます。作者はそういう人物からヒントを得て夜神月のキャラクターを思いついたのでしょうか。

話を戻して・・・思いがけなく拾ったデス・ノートは彼の運命を狂わせて行きます。善行をしているはずの月が死神もあきれるような悪知恵に長けていて、死神を圧倒します。死神にしてみれば退屈な地獄からちょっと出て来て、いたずらをしているつもりなのでしょう。しかし月が予想以上に気合を入れてデス・ノートに取り組むので、死神も色々な事に一緒に巻き込まれてしまいます。

L というのはオタク風なキャラクターで、所々で《実は月の片割れ》風な言われ方をします。ドイツ人はよく同じコインの両側という表現を使います。私にはそういう風には感じられませんでした。L はオタクではありますが、悪には絶対に染まらないでしょう。時々強引な方法で捜査を指示しますが、月と違って脱線はしないでしょう。作者は心理学をかじったのでしょうか。L にわざと甘いものをたくさん食べさせたり、だらしない格好をさせたりして《典型的な・・・》という設定にしてあります。

★ キャスト

この2人の青年の役に適した俳優を呼んでいます。藤原竜也は嫌いな俳優なのですが、月の役にはぴったりでした。オーバーアクティングにならず、役をよくこなしています。松山ケンイチも L という役によく合っていました。その周囲を固めている脇役もバランスよくまとまっています。元々は舞踏家と聞いていた藤村俊二も L のお守役にとても良く合っていました。バットマンに出て来るマイケル・ケインのような感じです。月の父親役の俳優だけちょっと大根かなと思いました。天地茂のようなにらみ方がこっけいでした。しかし彼も全体のバランスを崩すわけではなく、上手く収まっています。

そこへ1人飛び出して来るのが死神。死んだ神を1人、2人と数えるのか、1体、2体と数えるのか、そのあたりよく分かりませんが、黒装束の死神が出て来ます。姿は特殊撮影で、俳優は声だけ担当。難しい注文ですが、それを見事こなしているのが2代目中村獅童。死神などいう不吉な役なのにユーモアを交えています。その結果見終わってから1番印象に残るのはりんごをかじる黒い死神。

第2部には白装束の池畑慎之介氏(お懐かしい!)も登場。この死神は2人目のデス・ノートの持ち主に憑きます。2人目の持ち主は海砂という女の子なのですが、彼女も物凄まじい姿の白死神を見ても恐がりません。彼女が何かでしくじると白装束の死神が命がけで(いや、命はもう失っているから死を賭けて)サポートまでしてくれます。彼女の場合はまるで守護天使のような死神を従えています。

海砂はデス・ノートを月のようには使いません。彼女は自分の人生を月との関連でのみ考えるため、月に会い、月の目的に合わせて動きます。捜査陣は最初1人を相手にしているつもりだったのが、後半海砂が加わるために非常に混乱します。

デス・ノートのユニークな点は意外性でしょう。何となくこうなるのかなあと思ったストーリーがよく外れます。正義を愛する青年が死神より悪知恵に長けているとは思いませんし、死神がりんご中毒だなどとは誰も予想しません。人類で1人があんなノートを持っているだけでも騒ぎなのに、2人目が出るなどとは思いません。さらに、その2人目が1人目を人間的な感情でサポートするなどとは思いません。さらに2人目に憑いている死神がノートの持ち主を一生懸命守ろうとするなどとは思いません。ってな具合で、私はかなり予想を外されました。

リュークとレムは黒と白で対照的にしてあります。月と L は特に対照的とはしてありませんが、1人はほぼ完璧にかっこいい青年、もう1人は引き篭もりのオタク青年風に描かれています。最近小説や漫画に心理学を教科書通りに応用した作品が増えていますが、デス・ノートは一応その路線を行っています。普段から何事も完璧にこなせる青年が誇大妄想にはまって身を滅ぼす路線と言ったらいいのでしょうか。それでもおもしろくまとまっていたのは中村獅堂の功績かも知れません。

獅童のリュークが見たい・・・ので、第3部を作ってもらいたいところですが、だらだらと話を延ばしてしまうと、収拾がつかなくなり、今は輝いているリュークのイメージが下がってしまうかも知れません。惜しい、あと少しという所でやめておくのが賢明かも知れません。

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