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28週後・・・ /
28 Weeks later /
28 semaines plus tard /
28 Wochen später /
28 semanas después /
28 settimane dopo /
Exterminio 2 /
Extermínio 2

Juan Carlos Fresnadillo

2007 UK/Spanien 100 Min. 劇映画

出演者

Robert Carlyle
(Don - 父親)

Catherine McCormack
(Alice - 母親)

Imogen Poots
(Tammy - 娘)

Mackintosh Muggleton
(Andy - 息子)

Idris Elba
(Stone - 兵士、司令官)

Jeremy Renner
(Doyle - 兵士、狙撃手)

Harold Perrineau
(Flynn - 兵士、ヘリコプターのパイロット)

Rose Byrne
(Scarlet - 軍の科学者)

Shahid Ahmed
(Jacob - 郊外の家に避難している人)

Amanda Walker
(Sally - 郊外の家に避難している人)

Garfield Morgan
(Geoff - 郊外の家に避難している人)

Emily Beecham
(Karen - 郊外の家に避難している人)

Beans El-Balawi
(郊外の家に避難して来た少年)

見た時期:2008年1月

要注意: ネタばれあり!

アイ・アム・レジェンドを見たばかりで、28週後・・・も「いずれ見てやろうと思っている」と書いたとたんに見る機会ができたので、早速見てみました。

28週後・・・28日後・・・の直接の続編で、28週後・・・アイ・アム・レジェンドと比較するのにいい映画です。

私は先にアイ・アム・レジェンドを見、直後に28週後・・・を見ましたが、その順番で正しかったです。でないとアイ・アム・レジェンドを楽しむことができません。アイ・アム・レジェンドも厳しいテーマの作品で同じウィル・スミスでもメン・イン・ブラックなどとは全く違います。ゆるいハッピーエンドにしてあり最後観客はそれなりに満足して家に帰れますが、主人公が失うものも多い作品です。笑えるシーンはほとんどありません。

28週後・・・は全体のコンセプトを見るとアイ・アム・レジェンドとかなりかぶり、どちらかがどちらかをパクったのか、あるいは同じ原作を使用したのかと思いたくなってしまいます。完成したのはどちらも2007年。一般に宣伝されているところでは、アイ・アム・レジェンドは小説の3度目の映画化なのでその前の2本とかぶるのは当然。しかしそれ以外の作品とは関係がありません。

28週後・・・の方は《28日後・・・の続編》とはっきりしています。28日後・・・の監督が総合プロデューサーなので28日後・・・の方針を踏襲しているのでしたら、それは当然。しかしアイ・アム・レジェンドとは無関係のはずです。

私は28週後・・・を見ている最中から腹が立ち、終わってもまだカッカしています。28日後・・・からストーリーは引き継いでいますが、全く違う作られ方をしていて、監督はこの作品で一体何が言いたかったんだろうと考え込んでしまいました。似て非なるはアイ・アム・レジェンドとの比較でも同じです。28日後・・・の続編がアイ・アム・レジェンドトだと言われた方が受け入れ易いぐらいです。細かい事を言うと28週後・・・にはドッグ・ソルジャーからぱくったかと思えるシーンもあります。

★ 新しい監督

フレスナディーヨの監督の長編2作目で、私は1作目もファンタに来た時見ています。28週後・・・の後もう1つ作品構想があるようです。今度は《28ヶ月後》になるのでしょうか。

フレスナディーヨの監督の1作目は10億分の1の男という作品で、アイディアが斬新というかばかばかしく、それをユーモアをまじえておもしろい作品に作り上げていました。作品数は非常に少なく、この他に短編が2本あるだけです。監督は脚本で両作とも積極的に参加しています。ドイル監督はちょうどこの時28日後・・・の主演のキリアン・マーフィーと28週後・・・の主演のローズ・バーンと一緒にサンシャイン 2057の製作中で、とても28日後・・・の続編を作っている暇は無かったのだそうです。

キャストは28日後・・・をばっさり切り離し、全く別なイギリス人の家族の物語としてあり、新しい人たちを起用しています。有名どころではカーライルのお父さんと、マコーミックのお母さん。

★ 物語

28日後・・・で英国はほぼ全滅。僅かに残った人たちは恐怖におびえながら避難。一方ロンドンには米軍だかNATOだかの救援隊が来て、伝染性が無くなったと確認した場所を接収し、コロニーを作り始めています。軍が駐屯し、助かった市民に生活空間を提供し始めています。現在は地区を限り、そこの確保ができたら徐々に行動範囲を増やして行く予定のようです。科学者もいて感染の有無のチェックなどをしています。

最初に郊外の家に避難していた少数の人たちの生活が描かれます。老夫婦、中年の夫婦などがぎりぎりの共同生活しています。そこへ1人の少年が新たに避難して来ますが、彼について来たゾンビたちに攻撃され、家の中まで襲って来ます。(28日後・・・をご存知ない方へ: イギリス全土がビールス性の病気に見舞われます。かかるとゾンビになってしまいます。動いているのはわずかな生存者と、感染してゾンビになった元人間だけ。) 皆がパニックを起こし勝手な行動に出、中年夫婦の夫ドンは妻アリスを置き去りにして川の方へ走り去ります。

ドンはどうにか逃げおおせ、ロンドンのコロニーに収容され、色々な所に出入りできる身分証明も持っています。そんなある日、偶然28日後・・・の頃外国に修学旅行に出ていたドンの2人の子供が戻って来ます。どうやら伝染病が広まり、外国で状況が収まるまで保護されていた様子。再会できるという幸運を得た例外的な家族となり、息子のアンディーは英国で1番若い市民となります。子供が帰国すると聞かされていなかった科学者のスカーレットは不満顔です。

コロニー以外は厳しく外出禁止になっていたのに2人の子供は規則を無視して自宅へ戻ってしまいます。父親からゾンビに殺されたと聞かされていた母親の写真と慣れ親しんだ小物を取りに帰ります。ところがそこには死んだはずのお母さんが。そしてそのお母さんは感染しているのに発狂していない・・・。

・・・と、この辺でミステリアスになっても良いはずなのですが、監督の力不足なのか、全然不思議な感じがせず、私はただ黙って見ているだけ。

★ 一体どんな家族だったのか

冒頭お父さんがお母さんを見捨てて1人逃げたというのは卑怯ではありますが、あの状態ではドン1人を責めては酷だと思って見ていました。あんな状態でパニックを起こしたら英雄的行動を期待する方が無理だと思ったのです。ドッグ・ソルジャーは一応軍人ですが、ドンは普通の市民。醜い話ではありますが、人間的な現実かも知れないと思ったのです。子供に嘘の話をするのはその結果ですので仕方ありません。

この時はまだあまりカッカしていなかったのですが、次のシーンではもうちょっと怒りました。子供が規則を破って自宅に帰ってしまうのです。いくらなんでも英国人のほとんどが死んでしまったり感染している上、自分たちも暫く帰国できなかったのだから事の重大性は充分理解できているのではと思ったのですが、そうではありませんでした。軍が出て特別なコロニーに寝起きする毎日でも社会性は子供たちの中には育っていませんでした。

もうこんなに人口が減ったのだからコロニー内だけでも充分な広さがあるとか、今後特に急ぎの用も無いのだから自宅へ帰るのは安全が確認されるまで待ってもいいとか、そして1番肝心なのですが、仮に無理を言って自宅へ戻るにしても軍人のガードが無いと、万一ゾンビが出て来て噛まれてしまったら伝染する、そのままコロニーに戻ったら生存者もすぐゾンビになってしまうという事は一切考えません。ドッグ・ソルジャーでは狼男になるまでに暫く時間がありましたが、28日後・・・のゾンビになるまでの時間は、お父さんが娘に一言「愛していたよ」と言うのもぎりぎりなぐらい短かったです。

私が28日後・・・にはわりに好感を持っていて、28週後・・・ではカッカしているのはこのあたりの描写の差のせいです。

★ キャリアーのお母さん

子供のトンズラに気付いた軍人が追って来ており、お母さんが見つかったところで3人ともお縄。別に刑に処せられるわけではありませんが、子供たちは相当責任の重い間違いを犯したと言っていいでしょう。しかし2人はそれで隔離されるのではなく、感染の有無を徹底的にチェックしなければならないからです。アリスは完全に感染しており、アンディーを力いっぱい抱きしめています。

注目すべきはお母さんが発狂していない点。兵士はアリスをラボにつれて行き、残酷なほど酷い扱いをしてベッドに縛り付けます。しかし感染した人間が普通どういう反応をするかを考えると仕方の無いこと。この作品は普通だったら絶対にやっては行けない事が非常事態なので仕方なく思える場面の連続です。

お母さんはそれなりに正気を保っていて、血液は感染反応を示しています。スカーレットは彼女に免疫があるのではと考え始め、もしかしたら薬が作れるかも知れないなどと、アイ・アム・レジェンドと同じような事を考えます。

★ 一体どんな親父だったのか

子供たちがあんなだから親父がこうでも仕方がない、いえ、逆ですね。妻を見捨てて逃げた親父さんは、妻が発見されたというので、自分のパスを使ってラボに入って来ます。そして妻と話し、愛情を確かめ、謝りながらキスをしてしまいます。アホか、お前、と思いましたが親がこうだから子供が事の重大さを意識しないんだ・・・。

当然ながら親父さんは感染してしまいます。ざま見ろ、いい気味だと笑っている場合ではありません。軍がせっかく立て直しを始めたロンドンが元の木阿弥です。この親父のせいで。しかも正気を保っている彼女を狂気に駆り立てられた親父さんが非常に残酷に殺します。うわあ、そこまでやるの?

悪役やいい加減な男の役で売れているカーライルですが、どうも演技力は不足気味。どの作品を見ても同じ顔をしていると言うか、労力を惜しんでいるのか、足りないのか。妻を殺す暴力シーンだけは不思議と説得力がありました。

コード・レッド発動

★ 全てやり直し

こうなってしまうと感染していない人たちには逃避行と反撃しかありません。軍には、《コード・レッド》という命令があり、最悪の場合は無差別殺戮許可と決まっていました。軍の司令官も兵士も悪人は1人も出て来ないのですが、《コード・レッド》を出さざるを得ない状況であることは確か。

軍は最初できるだけ未感染者は撃たず、個人というか個ゾンビを1ゾンビずつ撃っていたのですが、じきに機関銃乱射に切り替わり、次に火炎放射器、次はナパーム弾のような武器、そして化学兵器。次々に段階を上げて行きます。

《コード・レッド》の恐しいところは、助かる見込みのある未感染者も無差別に殺せとの命令だからです。いちいち選別している余裕が無いのでということで、このあたりはバイオハザードなどとも共通する暗いテーマです。

見ていてどんどん不快感を持ったのは、そういう風に作品全体が「〇〇の状況だからやむを得ない」という理屈を出して来て、非常時の国家の決定の前では個人の権利は無視という理屈を押し付けて来るからです。その前になぜ動物愛護運動家がもっときっちりした判断力を持つように教育しなかったのか、なぜ動物愛護運動家が怒るほど動物実験が増えたのか、(間を飛ばして)なぜ人は節度を失い何事にも限度を越えるようになったのかなどいくつも見過ごして来た問題が並んでいるのにです。

★ 神経を逆撫でする演出

10億分の1の男のユーモアにはまだ笑っていられたのですが、28週後・・・では監督が仮にユーモアのつもりであったとしても笑っていられない話が積み重ねられて行きます。子供たちはスカーレットや兵士のドイルなどの献身的な努力でまだ助かっています。しかし特に感謝している様子も無く、当然のように受け入れています。助かった数少ない人間としての連帯感も生まれていません。

それに比べ28日後・・・のキリアン・マーフィーは最初ぼんやりしていますが、女性に拾われ一緒に行動しているうちに事の重大さを悟る描写がありますし、後で出会った親子は状況がきちんと分かっていて、親父さんがいよいよゾンビになるという瞬間にちゃんと娘に別れの挨拶をしています。そういう細かい所に人間の良い面にまだ希望を抱かせる描写がありました。ウィル・スミス演じるロバートは人を懐かしく思い、自分が長い間人とのコンタクトが無かったためひどいふるまいをしたと分かると謝り、家族を先に旅立たせ、自分がニューヨークに残ったのも何とか人を助けるワクチンを作ろうと思っていたからです。今は非常事態、自分の事は横に置いて人類全体の事を考えなければ行けない時だというはっきりした自覚があります。ああ、似て非なる28週後・・・

気の狂ったお父ちゃんはまだゾンビとして存命で信じられないような偶然で子供と再会したりもします。子供たち、特に免疫があるアンディーを絶対に助けようと決心している2人の軍人には免疫で人類を助けようという気持ちもまだたくさん残っています。それに比べなんと自分勝手な親子。母親がどういう人だったのかははっきりしていませんが、お父ちゃんはまだ平和だった時スカーレットと話をしてまんざらでもない様子。もう次の連れ合いのことを視野に入れたのか。

姉が弟に気を使い、「一生離れないわ」と言っているのも感動のシーンであるべきなのですが、そのため自分が置かれている立場を無視してしまいます。監督がこういうシーンをユーモアのつもりで入れたのだとすると、私にはうまく伝わって来ません。シビアな状況に置かれた空気の読めない家族ということですが、危険な状況で読めないのは怖いです。

何も知らずに見る観客はこの親子に自分の視点を置いて見てしまいます。この親子、無責任極まりないのですが、他の登場人物には特に重きが置かれていないので、なかなかこの3人から視点をずらすことができません。これが監督の意図だとすると、それも意地の悪い話です。

そしてついにアンディーが餌食になります。兵士のドイルが自分を犠牲にしてまで守ったスカーレットと姉弟。逃げ込んだ地下鉄は真っ暗。幸いドイルがスカーレットに託したライフルには暗い所でも見えるスコープがついていたので、彼女は少し先を見て、姉弟にどこが歩けるか指示を出します。ところが2人はスカーレットの言う事をきっちり聞いていない時があり、パニックになってエスカレーターの階段を転落してしまいます。必死に2人を探しているうちにゾンビのダンが現われ、スカーレットを殴り殺してしまいます。

そして駅のホームで再会した父親は息子に噛みつきます。弟を絶対に1人にしないと誓った姉は弟に噛みついた親父を銃で撃ち殺し、ドイルが仲間のフリンと打ち合せていたスポーツ・スタジアムにたどり着きます。フリンはヘリコプターのパイロットで、前にも1度まだ生きていたドイル、スカーレット、姉弟などを救出しようとしたのですが、その時は失敗。そして怒りに任せてヘリのプロペラを使ってゾンビをミンチにしてしまいます。このシーンは悪い冗談。

2度目の救出作戦ではスカーレットもドイルの姿も無く、フリンは姉弟だけ救出します。希望を抱いていざ大陸へ・・・。

しかしそこで観客が目にするのはエッフェル塔の周囲で飛び跳ねるゾンビ・・・。この後は舞台がロシアへ移るそうです。

28日後・・・はわりといい作品だと思っていたのですが、28週後・・・がこのありさまなので、3作目を見るかどうかはまだ決めていません。軍配はアイ・アム・レジェンドへ。

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