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2008 USA/F 101 Min. 劇映画
出演者
Vin Diesel
(Toorop - 傭兵)
Michelle Yeoh
(Rebeka - 修道女)
Mélanie Thierry
(Aurora - 孤児)
Gérard Depardieu
(Gorsky - ロシア・マフィアのボス)
Charlotte Rampling
(High Priestess - 宗教団体ネオライトのトップ)
Mark Strong (Finn)
Lambert Wilson
(Darquandier - 医学研究者)
Jérôme Le Banner
(Killa - 格闘技で勝ち抜いている男)
Joel Kirby
(Newton - 医者)
見た時期:2008年9月
★ 原作
フランス人作家モーリス・ジョルジュ・ダンテの Babylon Babies という原作があります。映画化をしたのはフランス人監督兼俳優のカソヴィッツ。これまで2本ほど知らずに監督作を見ていました。1つはスリラー、もう1つはオカルト風スリラー。今回は SF スリラー。何かしらの謎を解くという筋であれば何でも引き受けるのかも知れません。私も謎が好きなので「カソヴィッツが監督をしている」と思わずに見ていたのだと思います。
映画は原作の名前や土地をいくらか変えてあります。
★ ディーゼル
ヴィン・ディーゼルは主演第1作のピッチ・ブラックが大好きです。その他の作品は予告を見ただけで引いてしまい、結局ピッチ・ブラックの続編しか見ていません。それも見た後「止めておけばよかった」と反省しています。
Babylon A.D.はピッチ・ブラックの続編よりはましですが、彼にはあまり台詞をしゃべらせない方がいいのではないかと思います(大根役者だと言っています)。姿や動きを見ているとブルース・ウィリスの後継者かと思いますが、台詞をしゃべっているのを見るとどうもねえ。しかしウィリスと共通するのは、演技が下手そうに見えてもどことなく親近感が沸き、嫌いになれない点。ウィリスはその上演技がアクション・スターの域を越えているので、スターという名に恥じないと思いますが、ディーゼルはその辺がちょっとまだ・・・。しかし俳優でなくスターでいたいのならそれは可能だと思います。口数を減らせばいいのです。
しかし一見役者としてはだめそうに見えるシルベスター・スタローンとアーノルド・シュヴァルツェンエッガーは実は演技は結構いける人たち。努力すればああなれるのか、あるいは元々の才能なのか。ディーゼルはそろそろどちらに進むつもりか決めないとだめな時期に差し掛かっています。コメディーには関心があるらしく、トライもしています。私はピッチ・ブラックのようなカリスマ性のある無口な役がいいのではと思います。JCVDが示しているようにいずれは年齢の関係で大アクションと言うわけには行かなくなるでしょうから、今のうちから考えるのがいいと思います。
★ 成功か失敗かはダイレクターズ・カットを見ないと分からない
ドイツ版はいくらかカットされた様子。他の国でもカットされた版が出回った様子です。それを見るとフィフス・エレメントやトゥモロー・ワールドを目指して途中で頓挫したような印象を受けます。見終わってから聞いた話では Babylon A.D.はカットされているため話が違ってしまう危険があるそうです。
私も突っ込みが足りないような印象だったので頓挫などと言っているのですが、もしかしてもう少し深みのある内容なのかも知れません。この会社は時々カットすることがあり、そのために作品がみすぼらしく見える例があると聞きました。こういった話は伝聞なのでどこまで信じるべきか分かりませんが、最近ハルクのリメイク版もカットがひどくて筋が分からなくなってしまったという批評が出ていると聞きました。
ま、B級の域を出ないというのが私の印象だったのですが、ディーゼルはB級と思っていたので、失望はしませんでした。それどころかB級という枠をはめてしまうと、その中ではかなり健闘しています。ファン・ダムが良く出るような作品よりは上で、一応それなりの筋があり、所々意外な展開もあります。
★ 東方見聞
私に取って興味深かったのは東側が舞台になっている前半。始まるのが東欧で、真ん中あたりでウラジオストックへ出向くようになっています。いずれご紹介するファンタの Transsiberian にもウラジオストックやシベリアの大雪原が出て来るのですが、これまであまり欧米の映画に使われなかった地域が舞台になっていて、おもしろかったです。
ベルリンは文字通り東と西の接点で、現在も西には典型的な西風の建物、東には東風の建物がたくさんあります。東の建物はモスクワとそっくりでナイト・ウォッチやボーン・アルティメイタムを見た時も東ベルリンがモデルにした原型に当たるモスクワのアパート(日本の公団住宅のようなタイプ)を興味津々で見ました。そういった感じのアパートや人の集まる広場が、旧ソ連から分離した国として登場したりします。旧東欧での撮影にはチェコが使われています(チェコにはヘルボーイの撮影にも使われた立派なスタジオもあります)。
★ あらすじ
近未来の SF で主人公トゥーロップの職業は傭兵。最初彼の日常生活がざっと紹介され、ジェラール・デパルデューと会うあたりから本題に入ります。デパルデューはロシア・マフィアのボスで、新しい仕事が入ります。若い女性オーロラを僻地にある修道院からニューヨークまで密入国させることが任務。
その女性を迎えに行くと、中年の修道女がどうしても一緒に行くと言い出し、いくらか番狂わせ。トゥーロップは言わばトランスポーターなので余計な荷物は積みたくない。トゥーロップに取っては相手が人間であっても物であっても運ぶのなら《荷物》にしか見えません。
修道女は手ごわい交渉相手で、言いくるめられしぶしぶ承知。まずは東欧の無法地帯を通り抜け、あれこれ障害物競走を潜り抜け、ウラジオストックに到着します。ここまでに何度かアクションを披露する機会があります。
ウラジオストックのシーンはちょっとしたサプライズなので秘しておきます。そこから何とかアメリカ合衆国に忍び込み、カナダを経てニューヨークへ到着。その間にも危ないことがあり、トゥーロップとオーロラはちょっとだけ親しくなります。
トゥーロップは一匹狼で最近傭兵の仕事に疲れて来ていて、そろそろ引退しようかと思い始めているところ。スタローン、ウィリスと比べるとずっと若いですが、戦争地帯に長くいたため、精神的には速く年を取ってしまうのでしょう。アメリカに親が持っていた農場に引っ込むことを真剣に考えています。
オーロラは孤児で、ある日誰かが修道院へ連れて来ました。それ以来20歳までの生涯で一度も修道院を出たことが無いので、全く世間を知りません。そのため戦争地帯を横断する初めての外出はかなりのショックで時々恐慌状態に陥ります。それに加え、何かしら先を読む能力があるらしく、数分先に起きるテロに気付きパニックに陥って叫んだりします。オーロラには出生の秘密があり、それを修道女がトゥーロップに言わないため、時々喧嘩が起きます。
アクション・シーンを見せるために紆余曲折があり、ようやくニューヨークに到着。
ここからがらっと話が変わります。オーロラ出生の秘密がいくらかトゥーロップにも分かり、目の前には妙な人がやって来ます。さらにあてがわれたアパートでテレビを見ていたオーロラは自分が長年住んでいた修道院が襲われ、全員が死亡というニュースに出くわします。
そろそろトゥーロップの任務は終わるはずなのですが、オーロラの方はこれから厄介な事に巻き込まれて行く様子。そこで放って置けないのが我らのディーゼル君。で、ドンパチが始まります。この秘密を漏らしてしまうと映画館に行く意味がなくなるので、ぐっと我慢。言いません。
★ で、結論は
そうなのです。この秘密も加えると筋としては結構おもしろいと思います。トゥーロップが危惧している秘密とオーロラが深く関わっている秘密というのがありますし、思わずマジで命を張ってしまう賞金目当ての傭兵の変化もおもしろいです。また、こういう計画を立てた側も一枚岩ではなく、それぞれの思惑が交錯します。それを東欧からニューヨークまで普段と違うルートで見せてくれるので、素材としてはかなりおもしろい作品が期待できたはずです。その割にはちょっと萎んでいるので、やはりダイレクターズ・カットを見てからでないと評価はできません。果たして何年かしてダイレクターズ・カットが出るか。待ちましょう。
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