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USA 2010 110 Min. 劇映画
出演者
Jeff Bridges
(Rooster Cogburn - 飲んだくれの保安官)
[John Wayne]
Hailee Steinfeld
(Mattie Ross - 父親を亡くした少女)
[Kim Darby]
Elizabeth Marvel
(Mattie Ross、40歳)
Matt Damon
(LaBoeuf - テキサス・レンジャー)
[Glen Campbell]
Josh Brolin
(Tom Chaney - マッティーの父親を殺した元雇い人)
[Jeff Corey]
Barry Pepper
(Lucky Ned Pepper)
[Robert Duvall]
Dakin Matthews
(G. Stonehill - 大佐)
[Strother Martin]
Paul Rae
(Emmett Quincy)
[Jeremy Slate]
Jarlath Conroy
(葬儀屋)
[Hank Worden]
Domhnall Gleeson
(Moon)
[Dennis Hopper]
Roy Lee Jones
(Yarnell)
[Ken Renard]
Ed Corbin
(髭男)
Jake Walker
(Parker - 判事)
[James Westerfield]
Leon Russom
(保安官)
[John Doucette]
Bruce Green
(Harold Parmalee)
[Jay Ripley]
Scott Flick
(Clement Parmalee)
Peter Leung
(Lee)
[H.W. Gim]
見た時期:2012年5月
チャールズ・ポーティスの小説勇気ある追跡の映画化のリメイク。元々実話だったようです。
2011年ベルリン映画祭のオープニング作品として上映。乗れる人は楽しめたようで、感激した人もいたようですが、乗り損ねる人もいるようです。私もその1人。コーエン兄弟の作品は楽しい時もあるのですが、大外れで私に全然合わない時もあります。ブリッジズはコーエン兄弟とは相性がいいようで、私が好きでない作品でも、映画の中ではぴったり合っている感じはします。なので私の出した結論は《好き嫌いに左右される作品だ》というものです。賞を取り捲った作品なので、世間の評価は高いです。最初の映画化ではジョン・ウェインにオスカーをもたらしており、私はウェイン版は好きでした。
★ あらすじ
14歳の少女マティー・ロスが大人相手に難しい交渉をしているところから始まります。父親が、雇い人男トム・チェイニーに殺されたばかりですが、葬式や遺産相続を全く交渉能力の無い母親に代わって、14歳の子供が全部取り仕切らなければなりません。状況に同情していると観客はうっちゃりをかけられます。この女の子、手ごわい、手ごわい。こんなのを相手にしたら日本人は全部負けてしまいます。中国人相手に勝つのにはこのぐらいの度胸と覚悟が必要ですが、彼女ならきっと勝ちます。
もしかしたら翻訳の都合で面白さが削げたのかもしれません。このシーンはベルリン人が喧嘩のよう見えながら実は喧嘩でない交渉をしているシーンと重ねてみると、本当はおもしろいのかも知れません。コーエン兄弟は作品にユーモアをまじえることで有名ですし、14歳の少女が大人顔負けの図々しさで相手に迫っているのだから、何かしら愉快さが隠れていたのかも知れません。この作品を見て暫くしてから町で人が喧嘩をしているようでいて、話を聞いてみると全然喧嘩でなかった場面に出くわし(ベルリンではちょくちょくある)、「トゥルー・グリットも実はこういう感じだったのかなあ」と思い直しているところです。
西部開拓時代には男でもしっかり生きていないと騙されたり、不意打ちを食らったりしますが、一家の主を殺された少女はよよと泣き崩れることなく、父親殺しの雇い人の後を追う決心をします。目的は復讐。ドイツ語のタイトルでトゥルー・グリットの後にくっついているのは《復讐》という意味です。
さすがに自分1人では無理と思い、彼女は遺産相続から葬儀代を差し引いた僅かなお金と愛馬を持っていざ出陣。その際ルースター・コクバーンという保安官を雇います。テキサス・レンジャーのラビフの同行も決まります。2人の男たちは2人だけで仕事をするつもりでしたが、マティーが同行すると言ってききません。
インディアン居住区に逃げ込んでしまった元雇い人を追いかけるのはいくらなんでも14歳の少女には無理。男たちに取っては彼女は足手まとい。彼女が2人に仕事を依頼し、前金でも渡し、彼女は町で待っているというのがクラシックな展開ですが、父親の敵を取ることに非常に熱意があり、雇った男たちをあまり信用していないらしく、自らついて行きます。
父親との絆の強さが描かれていないので、子供が荒くれ男について行くという点で説得力がやや欠けます。14歳と言えばまだ世間の裏表を知らないので、理屈一直線。大人相手に一歩も引かず、うまく丸め込もうとする葬儀屋や弁護士とガチンコで勝負して、通せるところは石頭を通します。彼女の石頭ぶりはおもしろいのですが、伏線が十分引かれておらず、あまりストーリーに上手く乗れません。
3人は言い争ったり、仲直りしたり、別行動をしたり、合流したりと絶対のティームワークと言うには程遠い関係。時々手がかかりになる人物に出くわしたり、変な出来事を経験しながらターゲットを発見。対決になります。
ブローリン演じる敵のチェイニーと対決するところからは原作、ジョン・ウェイン版、ジェフ・ブリッジズ版でいくらか差があるようです。そのシーンで登場するのは敵を取ろうというマティー、サポートしていた保安官コグバーン、テキサス・レンジャーのラビフ、追いかけられているチェイニー、予想外の蛇。撃ち合い、蛇に噛まれる不測の事態、その後町に戻る、25年後マティーが2人の男を捜すという展開になっています。
インターネットに熱心なファンが書いた原作、ウェイン版、ブリッジズ版を比較した記事がありました。私はそこまで凝らなかったのですが、参考のためにご紹介します。
出来事 | 小説 1968年 | ウェイン版 1969年 | ブリッジズ版 2010年 |
敵討ち | マティー☞チェイニー | マティー☞チェイニー | マティー☞チェイニー |
穴に落ちてから | チェイニー生存→危険 | チェイニー生存→危険 | チェイニー死亡 |
マティーの救出者 | コグバーン | コグバーン | コグバーン |
蛇登場 | マティーを噛む | マティーを噛む | マティーを噛む |
ラビフ | 頭を怪我。 置いてきぼりを食う。 |
頭を怪我。 2人を助けた後死亡。 |
頭を怪我。 置いてきぼりを食う。 |
マティーとコグバーン | ラビフを置いて町に向かう。 | 死んだラビフを置いて町に向かう。 | ラビフを置いて町に向かう。 |
マティーの腕とコグバーン | マティーは片腕切断。 コグハーンと別れる。 |
マティーは片腕切断しない。 コグハーンはマティーを家まで送る。 |
マティーは片腕切断。 コグハーンと別れる。 |
25年後 | マティーはコグハーンを訪ねるが 到着の少し前に死んでいた。 |
25年後のエピソードは無し。 | マティーはコグハーンを訪ねるが 到着の少し前に死んでいた。 |
コグハーンの墓 | マティーが墓を作る。 | 25年後のエピソードは無し。 | マティーが墓を作る。 |
25年後のラビフ | ラビフの消息を考える。 | 死んでいるので 25年後のエピソードは無し。 |
ラビフの消息を考える。 |
★ 不発か疲れか
これまでに見たコーエンの作品はおもしろいと思ったものと、ぱっとしないと思ったものがあり、私は盲目的にコーエンを応援しているわけではありません。それでもこの作品は俳優の顔ぶれ、埃っぽい西部の様子などを見る限り、大成功の可能性を秘めているように思えました。DVD を4本借りてきた時もこの作品が1番いいのではないかと思っていました。
私の体調がやや落ちていたためか、話に上手く入って行くことができず、結果下から2番目の評価になってしまいました。上にも書いたように、ドイツ語への翻訳で面白さが削げたのかもしれず、あるいは私と相性の悪い作品だったのかも知れません。オスカーであれほどノミネートされていることを考えると、いい作品だと思った人がいたのでしょう。ブリッジズはそれほど嫌いな俳優ではなく、ちょっと前に見たクレイジー・ハートは悪くないです。
インターネットを見ると上に挙げた記事だけでなく、熱心に3人の関係を解釈した人もいれば、長い感想を書いた人もいます。今もやや疲れ気味。この状態ですとジョン・ウェイン版ならもう1度見てもいいと思いますが、ブリッジズ版には食指が動きません。もう1度見るとすれば健康状態がもう少し良くなってからの方がいいようです。
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