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ボーン・レガシー /
The Bourne Legacy /
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O Legado Bourne /
O Legado de Bourne /
El legado Bourne /
El legado de Bourne /
Jason Bourne: L'héritage /
La peur dans la peau: L'héritage de Bourne

Tony Gilroy

USA 2012 135 Min. 劇映画

出演者

Jeremy Renner
(Aaron Cross / Kenneth J. Kitsom - 国防省機密プログラムに参加している諜報員、公にはイラク戦争で戦死したことになっている元陸軍兵士、被験者 5、遺伝子が操作された薬を服用)

Paddy Considine
(Simon Ross - CIA のスレッドストーン計画とブラックブライアー計画を取材して暗殺されたガーディアンの記者)

Scott Glenn
(Ezra Kramer - FBI と上院諜報調査委員会に取り調べられる CIA 長官)

Joan Allen
(Pam Landy - ブラックブライアー計画とスレッドストーン計画について証言した CIA 副長官)

David Strathairn
(Noah Vosen - ブラックブライアー計画のチーフ、CIA テロ対策調査局長)

Corey Johnson
(Ray Wills - ヴォーゼンの部下)

Željko Ivanek
(Donald Foite - 科学者、諜報員に関連する国立の研究所 で同僚を射殺した男、自殺)

Albert Finney
(Albert Hirsch - フォワトに殺されたスレッドストーン計画の医学担当チーフ、ボーンの訓練をした人物、審問の前に心臓麻痺死)

Stacy Keach
(Mark Turso - ボーン失踪事件担当者、諜報員に関連する国立の研究所の運営者、ブラックブライアー計画の推進者、海軍退役提督、CIA 長官の要請でバイヤーをリクルート)

Edward Norton
(Eric Byer - 退役した空軍大佐、 CIAと防衛省の諜報員に関連する国立の研究所の海外責任者、今回の事件処理のアドバイザー、被験者皆殺しの命令者)

Neil Brooks Cunningham
(Dan Hillcott - フォワトに殺されたアウトカム計画の医学責任者、ステリシン・モルタン社所属)

Donna Murphy
(Dita Mandy)

Michael Chernus
(Arthur Ingram)

Corey Stoll
(Zev Vendel)

Alice Gainer
(Lean Forward - NBC のアンカー)

Prue Lewarne
(CNN のリポーター)

Howard Leader
(NBC の分析者)

James Joseph O'Neil

Rachel Weisz
(Marta Shearing - フォワトに殺されそうになった薬品開発研究者)

Tony Guida
(Benezara - フォワトに殺された薬品開発研究者)

Sonnie Brown
(Lieberburg - フォワトに殺された薬品開発研究者)

Ali Reza
(Talwar - フォワトに殺された薬品開発研究者)

Gita Reddy
(Chandra - フォワトに殺された薬品開発研究者)

Oscar Isaac
(アラスカの山小屋の男、被験者諜報員 3)

Robert Christopher Riley
( 国防省機密プログラムに参加しているアフリカ系諜報員、被験者 6)

Dennis Boutsikaris
(Terrence Ward)

Noel Wilson

Page Leong
(Yun - 韓国の諜報機関のチーフ)

Jennifer Kim
(韓国の被験者諜報員 4)

Louis Ozawa Changchien (LARX 3 - 韓国の殺し屋諜報員、遺伝子を操作された薬の被験者)

John Douglas Thompson (Paulsen)

Adi Hanash
(パキスタン人被験者諜報員 1)

Robert Prescott (空軍士官)

David Wilson Barnes
(ドローンの無線操縦員)

Don Guillory
(ドローンの無線操縦パイロット)

Patrick Vincent Marro
(ドローンの指揮者)

Murray Knudsen
(アラスカの空港警備員)

Susan Egbert

Tim Devitt
(FBI のチーフ)

Clayton J. Barber (Gene)

Elizabeth Marvel
(Connie Dowd)

Michael Papajohn (Larry)

Michael Berresse (Leonard)

Nasser Metcalfe
(フィリピンの薬品工場長)

見た時期:2014年12月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ 期待外れか

けちょんけちょんに言う人もいるらしいのですが、何を期待して見るかによって評価が分かれます。過去のボーンシリーズのファンには二番煎じと言われてしまうかも知れませんし、逆に似たようなシーンが場所を変えて出て来るので懐かしいと感じる人がいるかも知れません。

クレイグ007のファンはジェレミー・レナーがクレイグの真似をしているように思えて二番煎じと言うかも知れません。ボーン・レガシーには デイモン版シリーズクレイグ007を折衷したようなところがあります。

私はこの作品を所謂アクション映画として見たのではありません。あの駄作の原作をどう料理したのかが見たかったのと、ワイズやノートンが出ているので何かメッセージを発するのだろうと思って見ました。その視点からすると合格点をつけられます。

★ 駄作、蛇足

原作がどうしようもない事はもう1度言わなければならないでしょう。映画ボーン・アイデンティティーが出た後原作を読んで記事を書き始めたのですが、見事に頓挫。長いので2、3回に分けて載せようと思って始めたのですが、バカバカしくなってしまい、珍しく終わりまで行く気を無くしてしまいました。何度かオトシマイをつけようと思いはしたのですが、自分に正直になって、「どうしようもない作品なので頓挫」という形にしてあります。今後よほどの事が無い限り完結しないと思います・・・と宣言してしまいます。

私が勘ぐっているのは、才能は無視して、何か書いてくれそうな作家を見つけ、CIA がやっていた悪事の資料を提供し、書かせたのではということ。ベストセラーになったとしたら、文学のためではなく、そこに書かれている内容のために人の目を引いたからではないか・・・という事だったのではないでしょうかねえ。

ですからあの、小説としては廃墟のような作品からあんなおもしろい活劇を3つも生み出し、その枝に当たる作品もこの程度に仕上げた脚本家の方が原作の作家よずっと物書きとしての技術を持っていたことになります。

聞くところによると、元々は映画3部作の2作目から参加したグリーングラス監督と主演だったデイモンがもう1度コンビを組んで4作目を作るはずだったそうです。その場合は原作にもう少し関わる話になったようです。

その原作は死亡したため元の原作者の手を離れ、オランダ語風の名前のエリック・ヴァン・ラストベーダーに移ったそうです。映画界では監督や脚本家ごとごっそり元のスタッフの手を離れ、別な人が同じタイトルで続けることが良くありますが、小説では普通は作者が死ぬとそれでおしまいですので、たまにしか無い例と言えるかも知れません。ラストベーダーは続々書いたようで、4作目から引き継ぎ、現在まで彼1人で10作出しています。シリーズ物に慣れた人らしく、他の作品もシリーズ物が多いです。

若い頃プライベートに俳優と知り合う機会があったようで、映画界とは親和性がある人かも知れません。ただ、今回は同じタイトルがついていながら内容は小説と映画でガラッと違うそうです。小説の主人公はボーン、映画の主人公はクロス。

映画の方は前3作の脚本を担当した人物が元原作者の小説のモチーフを使って4作目の脚本を書く事になっていたそうです。ところがグリーングラスが計画段階で降りてしまいます。これが連鎖反応を起こしてデイモン、スタイルズが引きます。

スタイルズは運の悪い人らしく、第1作では主役がドイツ人ポテンテになり、敗者復活戦で何とか残ったのがボーン・スプレマシーボーン・アルティメイタムも何とか生き残り、改めてデイモンと組んで4作目の予定だったようなのですが、4作目は話がボーンから離れてしまうため、ニッキーもお払い箱。彼女はインタビュー・ウィズ・ヴァンパイアでもいい役をキルスティン・ダンストに持って行かれたことがあります。ダンストは4分の3ドイツ人。元はアメリカで生まれたのでアメリカ人だったのですが、現在はドイツ人。

話を元に戻して、監督と主演が降りてしまったので、元々のボーンシリーズの4作目は棚上げか中止。代わりに作られたのがこのボーン・レガシーです。見ていて私はそれほど大きな失望をせず、3作との間にそれほど強い違和感を抱かなかったのは、脚本家ギルロイが続投し、全4作の脚本に関わったためと思われます。元のスタッフが監督に昇進するとけっ躓くこともあるのですが、私は一応合格点を付けました。多少不満を抱く方もおられるとは思いますが、撮影やアクションは一応のレベルを保っています。

★ 政治的姿勢

アメリカの映画には政治的な姿勢をはっきりさせた物が多く、また、俳優や監督にもそういう人がたくさんいます。民主党支持、共和党支持がはっきり見える作品も多く、それでいてエンターテイメント性も忘れないので、政治の争いに疎くても楽しめる形式を取っています。

ボーンシリーズは元の原作者の時から CIA をメイン・テーマにしていて、キャストやスタッフには民主党支持者が多いです。

デイモンやスタイルズだけでなく、ワイズやノートンも政治姿勢がはっきりしていて、ある程度名声を築いた後はその方向で作品を選んでいるように見えます。この作品はワイズとノートンに悪人のポジションをはっきりさせ、映画で悪とされている側からの見方を台詞にして言わせています。

ワイズは目先の科学、職場、収入がまぶし過ぎて自分が何を開発し、どんな影響が及ぶのかについて全く考えていなかった学者を演じています。今回の事件で主人公と知り合ってから害の面に目覚め、クロスと一緒にアクション逃避行という展開になります。

ノートンはこのトラブルの解決のための相談役。問題を隠したい側の相談役です。非常に雑で、後続のプロジェクトを救うためにこれまでのは全部消しちまえという事になります。彼の命令一下優秀な公務員が実に生真面目に関係者を殺して回ります。官僚組織のミスをこういう形でごまかすんだよというメッセージをノートンは送って来ます。

この点が作品のキモだとすると、言いたい事は良く伝わって来ます。演技はその後からついて来る程度ですが、ロケがすばらしいので、埋め合わせになり、合格点。

★ 2年前に作ったとしたら

時代を2年ほど先取りしています。発表されたのが2012年なので、制作、撮影などはその1年ほど前から行われていたのでしょう。私はこういう映画が作られたことはちらっと聞きましたが、映画館に行くでもなし、DVD を借りるでもなく、特に積極的に動きませんでした。

ところで、2014年、2つの事が起きました。

まず関西で O氏という科学者がレイチェル・ワイズそっくりの髪型、姿でメディアに颯爽と現われ大センセーションを起こしました。最初はノーベル賞も貰えるぞと言うような研究を引っ提げて登場し、年末には研究のパートナーも亡くし、研究成果を人前で証明することもできず撤退。

もし DVD を借りて見る人がいたら、ワイズの登場シーンんをじっくり見てください。O氏という科学者にそっくりの姿のシーンが何か所かあります。O氏という科学者は諜報員の身体的な能力を高めるドラッグを開発しているのではなく、全てが上手く行けば難病の人を救うような研究をしていました。しかし科学というのは使い方を誤れば全然違う方面でも役に立ってしまいます。そしてこのO氏の学者としての出自が非常におかしく、論文の書き方も私のようなごく平凡な論文を書いただけの人間、それも博士論文より1つ下の論文を書いた人間から見ても「ありえね〜」というような雑な書き方をしたそうで、まるでどこかの女の子を連れて来て、あらかじめ用意されていたレールの上に乗せたような印象を受けました。

2つ目の出来事は年末になって顕著化したのですが、CIA が拷問をやっていて、それが法的に正当化できないという話。CIA が拷問をやっているだろうというのは世界中が知っていますが、正式に認めるとは誰も思っていなかっただろうと思います。米国はちゃんとした書類を作成してしまったので、今後はやったということが公式路線になります。諜報機関が何で公に認めたのかは謎ですが、まあ正直でいいと思います。

米国には確か5つ以上の諜報機関があるはずで、1番有名なCIA が拷問を認めたのはいいのですが、この話にメディアが集中し、残りの組織の犯行はチャラになってしまいそうな勢いです。CIA がババを引いた形です。

2014年の暮れにこんな事になるとは制作当時は誰も思っていなかったでしょう。ぴったりフィクションが現実になってしまいました。

★ 骨組み

ボーン・レガシーは舞台が世界中に飛ぶので、話について行きにくいかと思いましたが、そんなことは無く、混乱はしません。むしろ色々な悪事の方がぼんやり見ていると入り組んで来るので、悪事計画の名前はボーンシリーズの復習をした方が分かり易いかも知れません。

☆ スレッドストーン計画

原作にも出て来ますし、映画3部作もこれが中心。

国がかり、諜報担当公務員の暗殺要員養成計画。スパイ活動の最前線で活躍するエージェントを肉体と精神の両面から極限まで訓練する計画。手段として拷問や洗脳も使われる。

計画主は CIA。マット・デイモンが3部作で演じているが、極限状態でも判断力が鋭く、大胆にそれを実行するだけの神経も養われている。命令には絶対的に服従。国のためとはっきり割り切っているので、殺人、狙撃などにも躊躇いが無い。ただ、洗脳はしていないので、モラルは残っている。優先順位として国の危機を救うためなら、国益を損なう人間を殺すことは当然と考える。

☆ ブラックブライアー計画

スレッドストーン計画の後続計画。対外工作だけでなく、国内でもこの訓練を受けた諜報員が徘徊する(国内は FBI、海外は軍隊と CIA と住み分けているはずなのが米国)。知事や、裁判所の許可などは「気にしない、気にしない。ばれなきゃいいの」という乗り。

英国人ジャーナリストのロスにこの計画がばれ、ロスは呆気なく昇天。

スレッドストーン計画のような訓練に加え、薬品も使用。元の人材がちょっとおバカさんでも薬でスーパーマンに作り変えられる。

クロスなど数人被験者がいる。被験者は全員新しく開発された錠剤を取り、人間の能力の一般的な限界を越える。緑と青の錠剤を取ると、全身の能力が飛躍的に強化される。1つが肉体的な能力、もう1つが脳の活動を活発にする。研究者の1人がレイチェル・ワイズ演じるシェーリング博士で、クロスとは健康チェックで顔見知り。ちゃんと知り合うのは大勢の科学者が殺されてから。

☆ アウトカム計画

ブラックブライアー計画の後続計画。ボーンの世代以降新しく登場。

ブラックブライアー計画の被験者は毎日緑と青の錠剤を取らなければ能力が持続しない。アウトカム計画では被験者の体が錠剤を取った状態に慣れて行くと、薬が無くても効果が持続する。科学者たちとクロスはアウトカム計画にも関わっている。

☆ ラークス計画

アウトカム計画の後続計画。被験者のモラルが遮断され、人間の形をした殺人機械が作られる。

☆ ベーター計画

スレッドストーン計画やブラックライアー計画の後継計画

★ 粗いあらすじ

話せばものすごく長くなるので、できるだけ削って説明します。

CIA が下手を打ってジェーソン・ボーンに逃げられてしまいます。ボーンに説得されて副長官のランディーが公にしたため、ボーンなどが特殊なトレーニングを受けて、非常にタフな暗殺要員と化していたことがメディア、議会などにばれています。

ボーン・レガシーの冒頭にこの件を調査して英国紙ガーディアンに書いていたジャーナリストのロスが暗殺されます。

ジェイソン・ボーンの話はこの程度でおしまい。

アラスカではジェイソン・ボーン時代より強化され、任務のために薬品を使っている CIA の暗殺要員クロスが訓練中。極寒の中、崖から飛び降りたり、かなり危ない事を平気でこなします。彼は元はあまり成績の良くない陸軍の兵士でしたが、薬で能力が上がり、一般人以上の肉体的、精神的能力を身に着けています。

ところが件のジャーナリストはボーン時代のスレッドストーン計画のみならず、後継のブラックライアー計画についても詳細を書きそうだったので暗殺されてしまいました。ロスはボーンと接触していて、情報源はスペインの CIA 内部の人間。ロスを生かしておくとスレッドストーン計画から現在の計画までが報道されてしまうと判断し、CIA はクロスの代までの計画を無かったことにするため、関係者全員を殺してしまう事に決めます。殺されるのは訓練を受けた要因と薬を開発した科学者。殺すのは後続の計画で訓練を受けた暗殺者(・・・でないと、これまでの要員もかなり高度な訓練を受けているので、そう簡単に死にません)。

と言うわけでクロスの目の前でも、よその国でも何人かの公務員暗殺者が殺されて行きます。

洗脳したか、薬でも盛ったのか、科学者の1人がある日狂い出し、同僚や上司を銃で撃ち殺して回ります。かろうじて助かったのは約1名。女性科学者のシェーリング。まだパニック状態で田舎の一軒家の自宅で休養中。そこへ精神面のケアをするということで CIA 直属の精神分析医と護衛が訪ねて来ます。

メンタルケアと事情聴取だろうと観客が思っていると、いきなりシェーリングを自殺に見せかけて殺そうとします。そこへなぜか折良くクロスが飛び込んで来て、シェーリングを救い出し、後は2人で逃避行。

このタイミングでクロスが登場するのはちょっと話に無理がありますが、彼がシェーリングを訪ねたのは薬をもっと貰いたいから。他の科学者が皆死んでいるので、彼女が唯一薬のありかを知っていると判断。それで彼女の家に現われたという風に辻褄を合わせてあります。

そこで彼女から打ち明けられたのは、クロス自身が気づかない間に、彼は片方の薬を取らなくても肉体的な能力は維持できるようになっていること。しかし頭脳の能力のためにはもう1つの薬が必要なので、2人は手に手を取ってまだ在庫のあるフィリピンへ。そこでクロスをもう1つの薬と同じ効果を作り出すビールスに感染させて今後一々薬を取らなくても済むように体を変えようと考えます。

ちなみにやや綴りが違いますが、シェーリングと言えばアナボリカ、ステロイドなどに関わった会社。

CIA 暗殺要因と研究者抹殺計画を現場で指揮を取っているのがエドワード・ノートン演じるバイヤー。これも綴りをちょっと変えてありますが、日本でバイエルン社として知られている会社の名前にそっくり。意図的なのかは不明。

1800年代中頃ベルリンで薬局を始めたのがシェーリング。現在もそこに大きな会社があります。私はそこへ歩いて行けるぐらいの所に住んでいます。1900年代始めには日本と組んで会社を作っています。戦前に日本に支店も出しています。戦後は中国人もやって来て会社を作ります。長い間シェーリングという名前でやっていましたが、今世紀に入ってバイエルンに合併され、名前が消えてしまったようです。プロイセンとバイエルンの戦いは南ドイツの勝ち。

フィリピンについてからはバイヤーが送り込んだラークス計画の被験者の暗殺者に追いかけられるアクションに時間を使い、筋は単純。ここで暗殺者の俳優がいくら追っ払ってもついて来る不気味さを出すべきなのですが、あまり怖くないです。いくら攻撃してもまた無言で起き上がって追って来る怖い殺人者の映画がいくつかあり、ここでもそういう怖さが出せたと思うのですが、監督は遠慮気味。

前半はクロスという人物の紹介とバイヤーが CIA 暗殺要因を皆殺しにするまでの経過。後半はまだ生き残っているクロスとシェーリングと CIA の追いかけっこ。最後は副長官のランディーが議会で証言し、ヴォーゼンたちはランディーがボーンを助けたり、機密をジャーナリストに漏らしていると保身バージョンの証言。クロスとシェーリングはボーン・アイデンティティーのラストのように2人は地元の漁船に救われどこかへ消えます。

クロスを主人公にして続編を作る余裕を残してエンドマーク。

★ 結論

最近の質の落ちて来ている傾向の中では、まあ一応合格点です。口数の多いエージェントや関係者を登場させてこれまでのボーンシリーズと雰囲気をガラッと変えていますが、スピンオフなので、デイモン版と違う雰囲気にする方が普通だと思います。主人公のクロスがボーンと違い、被験者になる前はおバカさんだったという設定がおもしろく、続編を作ってそのあたりの落差を筋に加えたら、徹頭徹尾インテリで寡黙なボーンと差がついておもしろいのではと思います。

この作品の目的は、「国が君たちの税金を使ってこんな事をしているんだよ」と米国民に知らせることにあるのでしょうから、演技派の俳優を集めて来て、特段高度な演技をさせなくてもまあ、不満はありません。

デイモンとグリーングラスは元々ボーンを主人公にして4作目を作るつもりだったようですが、あのシリーズはそろそろ終わりにしても良かったのではと思います。3作ぐらいまでは一応だらけず作れますが、それを超える場合はおチャラカ・エンターテイメント物の方がファンがついて来るのではと思ったりします。

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