ここの背景画像は「miho's lovely material」からお借りしました。
パリからヴァレンヌまでの旅は24時間でしたが、その帰還には3日を要しました。その長い間、国王一家は屈辱を味わいつづけることになるのです。
一睡もできなかったまま、しかも着替えもせず、一行はヴァレンヌを出発します。6月の太陽は、馬車の屋根を焼け尽くすように直射し、大気からは乾いた埃が舞い上がります。しかし、次第に増えていく民衆の罵詈雑言を浴びるくらいなら、蒸し風呂のような馬車の窓を締めっきりにして閉じこもっていた方がましでした。
しかも、宿駅ごとに町長が出てきて、国王に挨拶をしたがりました。そのたびに国王は、「自分はフランスを去るつもりなどなかった」と言い訳しなければなりませんでした。
夜、ようやくシャロンに着きました。市民達が石の凱旋門の前で一行を待ちうけていました。この凱旋門は、21年前、マリー・アントワネットがガラス張りの宮廷馬車に乗って、オーストリアから輿入れしてきたときに作られたものでした。そのとき浴びた歓呼の声が今や、罵声に変わっていました。
しかし、とりあえず、ここで眠ったり、着替えたり、食事を取ることができました。