Bow Rehairing Tech.1 |
毛替方法 T |
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どんな技術にしても同じことがいえるでしょうがやさしいと思うか、難しいと思うか、
それは、それぞれ受け取る側の感性の違いによっても異なるでしょう。
ここで述べる弓の毛替えも、決して難しいものではありません。
ただ、最初から、高い弓、いい弓で失敗しないよう
ジャンク品などで、一、二度、練習してからされるようにお薦めします。
パートTでは、古典的な方法を記述しました。
◇ 弓の毛替え手順 | 古い毛の取り外しから、張り替えまで |
◇ 手順の別バージョン | 上の方法と、逆からの張り替え(03.Nov.追記) |
◇ スティックの化粧巻き | 銀銅線巻き・皮グリップ巻き |
パートUでは、私が敬愛してやまない、アメリカのヘンリー・A・ストローベル氏の記述から
「弓の毛替えと小さな修理」を翻訳いたしました。
瞬間接着剤を使ったり、合理的な方法、弓の簡単な修理などが盛り込まれています。
下手な翻訳ですが、読んでみたい方はご一報下さい。
(なお、これには著作権の関係もありますから、間違いのない方のみ、アクセス可とします。)
写真は筆者制作の、毛替え用弓スタンドと工具
◇ 弓の毛替え
1). 古い毛を取り外す
古い毛を鋏で切り、弓先のプラグ(というやや台形の木でできているクサビ)を
千枚通しなどで取り去ります。
下のイラストのような仕掛けで、弓毛がはめこまれています。
ですから、私は、小型のマイナス・ドライバー (そのプラグの幅に合うサイズのもの)の先を、
ノミの刃のように研ぎ、ノミのようにというか、バールといったらいいか、
ともかく、限られたその隙間に差し込んで、テコの応用で外すような、
「プラグ外し専用ドライバー?」を使っています。
(プラグは、割らないように外すと、固定するときにそのまま使えますからね。)
このとき、無理に毛を引っ張って取ろうとすると、ヘッドを割ってしまったり、
壊すおそれがありますから、要注意です。
狭い場所に、しかもデリケートな穴があけてあるわけですから、そ
れほど丈夫というものではありませんので、ここは慎重に作業します。クサビがはずれると、古い毛はすっかり取れますが、
その、ノミのような専用ドライバーで、はめ込むときのためにほぞ穴をきれいにしておきます。2). フロッグをステッィクから外す
アジャスター・ネジをゆるめて外し、フロッグをスティックから取り、
それから、皮やゴムを貼ったプライヤを使って、半月リングを外します。
小口を見ると、半月リングのアールに沿わせ、
少しテーパーがつけてある。
6).で詳細を説明。私は、くわえ口にプラスチックを被せてある市販のプライヤーを使っていますが、
それでリングを軽く挟み、少し、左右にゆすると、 たいてい緩んできて外すことができます。
固〈て抜けないときには、毛の裏側に入れてあるクサビ(タン[舌]ともいう) を
ナイフや専用ドライバーで壊してとり去り、隙間と余裕をつくってから外します。3). クサビを取り去り外し、蝶貝スライドを親指で強く押しながら前に引き抜く
これは、黒檀の薄板や金属片でウラ張りがしてあるだけでなく、
先端には半月りングとクサビを固定する舌がついているのですが、
ナイフなどでコジったりすると割れたり壊れてしまいます。
そんな場合は、割り箸に、段ボール用のガムテープを裏返し(粘着面が外にくるよう)に貼り、
それをシェル部分に貼るようにあてがって押すと、 案外、楽に外すことができます。
それでも抜けないときは、カンナの刃を抜く要領で、フロッグの前側から、樹脂ハンマーで叩くとか、
アルコール・ランプの火にそっとかざして少し暖めると、必ず抜けます。4). フロッグ側のプラグは、毛を引っ張って取るか、千枚通しで取る
安いものでは、フロッグそのものも樹脂製だったり、木でも本物の黒檀ではなく
何かの堅木を黒く染めてあるようなものもよく見ます。
そうしたものでは、フロッグ側も毛の束を左の図のようなプラグ(黄色で表示)で固定されてなく、木ネジで止めたものも、ときには見ます。
プラグなら、例のマイナス・ドライバーで外します。
いずれにしても、古い毛はすべて取り除いておきます。これで、どちらも古い毛はなくなりました。
弓先とフロッグのプラグも、半月リングのクサビも状態さへよければ再用しますが、 欠けたりしているようならカエデ材の柔らかいところで作り直します。適材がなければ、版画用の「朴(ホウ)の木」でもいいでしょう5). 新しい弓毛を10分ほど水に浸し、毛端を、太めのしっかりした糸で縛る
まず、適量の弓毛を準備します。
一旦、毛を水に浸すと毛のくせが取れ、櫛やブラシで梳きやすくなりますし、束ねやすくもなります。
要は、床屋さんでカットする前に、蒸しタオルで蒸すことと同じ効果だと、
私は考えています。 (これらについての詳細は、後述します。
縛ったところから約2mmのところで切り揃えて、松ヤニの粉を付けて、
アルコール・ランプか100円ライターで火をつけて溶かしますが、燃えたら直ぐに吹き消します。
毛端を木切れの小口面でまんべんなくバラバラにして、
松ヤニの粉をつけで同じようにして毛端が玉のようになるようにします。
縛った上に、さらに、一本一本の毛に松ヤニの樹脂が浸透するようにつけるのですから、
使っている間の抜け毛がなくなるわけです。
市販されている小束の毛は、片方の端が松ヤニの樹脂で固めてあるものもありますから、
よく見て、そのような形になるようにします。
松ヤニの粉は材料屋さんにもありますが、使い残したヴァイオリンやチェロ用のロジンとか、
画材店にある松ヤニ(粗い粉状、一瓶200円位)をつぶして粉にして使います。要は、ロジンをつけない弓では音が出ない理屈と同じで、
松ヤニには、摩擦係数をとても大きく高める作用があり、それを利用しているわけです。6). フロッグ側の仕上げ
半月リングをはめてから、クサビを押し込むのですが前後を間遅えないように注意して下さい。
フロッグ側は垂直にカットされていますが、先端方向は、角の面がとってあるものが多いからです。
この半月リングのところに入れるクサビ(タン)には、上下があります。
ほんの少し膨らんでいる方が毛に接する側です。
これは毛の並びを、左右・両端部で少し厚く、中央部で薄くするためです。
そして、毛が全体に平らになっていることを確かめます。
もし、そうなっていなければ、毛を揃え治して調整したり、クサビそのものを作り替えます。7). フロッグ側を固定
フロッグを、スクリューでスティックに取付け、毛の部分を上にして、皮かゴムを挟んだバイスでしっかりと固定する。
このとき、スクリューは、一番緩めた状態で、フロッグがいちばん前(先)に行っていることを確認します。8). すき櫛で毛の束を整える
上、下、両横の順で何度も毛を梳いて、毛の方向性を整えます。
これ専用の梳き櫛が市販されていますが、私は、あえて、古い歯ブラシでやっています。
犬猫用の、ノミ取り専用クシも使えそうです。
ただし、歯ブラシのブラシ部分は、2/3程度に毛をトリミング。
さらに、ペーパーで毛先を何度もこすって、毛の先端をなめらかにしたものを筆者は使っています。
コツは、弓芯の軸上にそってまっすぐ行うこと。
最後に、よく濡らした布で毛全体をしごいて、キレイに揃った束状にすることです。9). 弓毛を所定の長さにカット
その毛束を手で引っ張って、弓先のプラグの穴より3〜4mm先を、丈夫な糸で縛ります。
糸の一端を口にくわえて3〜5回ぽど巻いて、強く縄るのはフロツグ側と同じですが、
ここでは、ちょっとしたコツがいります。結果として、縛り目を、「つ」の字のようにして折り曲げた状態でトップのほぞ穴に入れますから、まとめた毛をほぼ直角程度に曲げて、先からみ見て、毛の方向がきれいにそろっていればOKです。
なぜ「つの字」がいいかというと、所定の直径のものを90度以上に曲げると、車の内輪差や外輪差ののように、毛の長さに差ができるので、その差を少しでも少なくするためです。
それが、もし捻れていたり、よじれていたら、この段階で修正しなければなりません。
それは慣れないと難しいかも知れませんが、すべての毛が、一直線にピンとそろった仕上げにするための大切なコツになります。
5)と同じやり方で毛端を固める。もう一度、くしけずってから弓先の穴に入る直前を指で固定して、スクリューを回してフロツグを外し、 毛を「つ」の字のように反転させてプラグで固定します。
毛を張ってみて、2〜3本浮いている毛は、さっとアルコール・ランプであぶって縮ませます。くれぐれも、いいところまで燃やさないように、 少し、水で濡らしてやって下さい。
それに自信のない方は、余分になっている2、3本の毛は引きちぎります。
弓芯がよれたりしていなければ、これで完成です。
◇ 手順の別バージョン (03.Nov.追記)
10月のある日、東京のヴァイオリン材料店・Mの営業担当S君からの電話。
制作に関するビデオがあるので買って欲しいとのこと。
渋々、つき合いで2本購入しました。その内の一本がドイツ・カールヘフナー社のCM的ビデオ。
タイトルが[ Violin Bow ]、外枠式の制作で、手順通りひたすらヴァイオリンを制作する様子と、
原木のペルナンブーコから弓ができるまでを克明に描写しています。
ところが、馬毛を入れるシーンでは、私が覚えた方法とは全く逆、トップから入れ、あとからフロッグ側に入れていました。
しかも、グリップの化粧捲き線や皮巻き、ニスの前に、トップにだけ毛をつけているのです。
化粧捲きでは、スティックを回転させなければいけないわけだし、皮を巻くにも、ニス仕上げするにも、
どう見ても、長く垂らしてた毛は邪魔になるはず。
合理主義のドイツ人のやることであり、しかも、歴史ある大メーカー、きっとそれなりの根拠があるはずなんでしょうが、
残念ながらこのビデオからは、その理由は伺い知ることができませんでした。
その直後、2本で試しましたが、やりやすかったのは事実です。
最初に紹介した方法だと、最後の9).のところで、よほどしっかりと馬毛をならして束ね、そのままの状態でしばり、
そのままの状態でトップのホールに納めるようにしないと、毛の束に捻れが生じやすいのです。
その点、こちらの方法だと、フロッグのクサビで固定したあと、もう一度、そのままの状態で毛を梳き、
もし、多少の捻れがあっても、半月リングより中側の、フロッグ内へ押し込むことができます。
そのあとからタン・クサビで固定すればいいことになり、そうした意味では、まっすぐきれいな仕上がりに対しては合理的な方法といえます。
この方法も、一度、試してみてください。◇ スティックの化粧直し
◇ 線巻き
毛替えの際には、スティックの悪いところも直さなければなりません。まずは、右の写真ご覧下さい。
分数系1/4のボウですが、化粧捲きの線がほつれ、セロテープで仮止めしてありました。
そして、銀銅線を巻くところには、銀糸が、また、本来なら皮を貼るグリップ部には黒い皮しぼの押してある厚紙で巻かれていました。
分数系だし、持ってきた知人の先生に「コストの高い銀銅線を巻くか、あるいは安く上げる方法で?」と、一応たずねました。
「生徒から頼まれたものなので、安い方がいい」という返事でした。
ほどいてみたら、切れているわけではなく、ただ、止めてあるところがゆるんだだけで、銀糸そのものは何ともない状態。
それで、きれいにしごいて、これはそのまま巻くことにしました。
線を巻くには、上の図のようにするのがいちばん解ける心配がありません。
何しろ、長時間、手で触れるところですから、しっかりやっておくことに越したことはありません。
巻き終わりも、同様に処置します。
この線巻き専用・用具もつくってありますので、詳細はこちら皮巻き
皮は、手芸用品店で買うことができますが、自分のものをグリップに巻くだけなら、使い古した牛革財布でもあれば流用することができます。
とくに、財布の仕切に使われている皮は、すでに薄くすいてありますから、ちょうど、使い勝手が具合がいいのです。
本当に使い古して、すれて地肌が見えていても、後述する方法で、問題なく使うことができます。
まず、所定の幅にカットします。長さも、スティックの円周プラス重ね合わせる分、5〜6mmほど長く裁断します。
ほんの2、3cm角ほどの大きさしか使いませんが、ここからが、ちょっとしたコツがいります。
それは、貼って仕上げたときのことを考えて、下の図のように、裏側の周辺を薄く均等にスライスしてやらなければなりません。
左右にあたる辺と、巻きはじめ、それに最後の重ねてジョイント部分がそれに当たりますから、結局、4辺全部、すいてやらなければなりません。
皮専門の手芸店にいくと、皮をすく専門のナイフ(皮すき包丁)も売っているようですが、わたしは、それにはカッター・ナイフの刃を少し長く出し、
皮の縁を板の縁に合わせて、多少、刃を反らせるようにしてスライスしています。
必要なサイズにカット
裏側・周辺部だけを薄くすきとる
そのあとで、サンドペーパーで、さらに薄くならしてから使っています。
これをしないで、そのまま貼ってしまうと、下の図のように、見るからに無様な貼り方になってしまいます。
また、貼るときの接着剤には、黄色い合成ゴム系のものがベターです。
合成ゴム系(ボンドならG-10相当品)は、全面によくのばして塗布し、
2、3分ほどのオープンタイムをおき、生乾きのうちに、まず、スタートの一辺を固定します。
それから、残りをやや引っ張り気味にして貼り付けます、
すると、周辺部の薄いところが、とくに内側に向かって凹むようになりますから、
結果として、右の図、○のように、縁がふっくらとした、やわらかなカーブのエッジに仕上がるのです。
極端に見えるかも知れませんが、カットしたそのままで貼ると、図× のように、縁やジョイント部分が、
少しめくれるように、ふくらんで、なんとも無様に見えのです。
肉厚な皮をそのまま使うとヘンになるという、ほんとうに皮肉なものです。
貼り上がったら、はみ出したゴム糊は仕上げを見苦しくしますから、シンナーかペイント薄め液などで、きれいに拭き取っておきます。
新しい皮の場合、しつっこくこすっていると、表面の着色剤をその溶剤で落としてしまうこともありますから、ここはさっと拭きます。
もし、色落ちさせてしまった場合、あるいは、古い色むらのあるものを使った場合など、マジックインキの黒で、着色します。
それがよく乾いてから、ごく薄くした透明ニスを1回塗って仕上げます。
「えっ、皮にもニスを・・」と思われるかも知れませんが、ハンドバッグでも革靴でも、エナメル仕上げなんてものを、
皆さんは知らないで使っているんですよ。
皮に、薄くてもニスがしみ込んでいるだけで、指の汗でも色落ちしないし、耐水性も増してはがれにくくもなります。
また、銅線や銀線のところにもクリアー・ニス塗っておくと、当然、ニスで固定されますから、
ほどけにくく、汚いサビが出にくくなることも請け合いです。
この、張り替えた右の写真のように、貼った皮の縁が、美人のウェストのようにキュッと締まっていると、
実際に使ったときの手の触感も、ずっと7優しいふくらみに感じます。
最後に、新しい馬毛も見える別のアングルからもどうぞ・・・!
早くて、安くて、きれいになったと、持ち主のご父兄から喜ばれ、菓子折ひとついただいちゃいました。 03.6.8追記
◇ 毛の使用量
ヴァイオリンは毛の束の、断面の直径で3.0〜3.2mm、ヴィオラだと3.2〜3.3mm、チェロは3.5mm、コントラバスは4.0mmというように、
プラスチック板の、辺に近いところに並べて、ドリルで穴を空けておきます。
その穴から、辺の外に向けて鋭角なVの字のスリット(切り込み)を入れます。
そんなに精密な穴は空けられませんといいう方、ご心配には及びません。
市販のドリル・ビットで、3〜4mmは汎用されているサイズ。
そのものズバリというビットが売っています。しかも、ステンレス綱のような、固い鉄板に穴を空けるわけではなく、 こちらは、柔らかなプラスチックです。各サイズが10本セットになっているような安物でOKです。
このゲージを使う場合、そのV字の外側から毛の束を差し込み、穴にいっぱいになったところで分けるだけで、所定の分量の毛が得られることになります。
最初の写真で、歯ブラシの下に写っている白いプラスチックが、筆者愛用のゲージです。
余白?部分が多いのは、毛の束を縛るための「糸捲き」にしてあるところが筆者の得意技「一石二鳥」の、簡単工具のひとつになっています。
人によっては、毛の量を何グラムとか・・何本なんていう人もいますが、多少、毛の細いもの、太いものなど、買い求めるロットによって差がでます。
標準で、1本あたり約5gだといわれていますが、元の毛の長さの違いもありますから、 目方という考えは、あくまで目安としてとらえた方がいいでしょう。◇ 毛の長さと質
◇ 毛束を縛る糸について (2007.10 一部を追加・訂正)
上述したように、しっかり束ねるのに、私はカーペットを縫い合わせるための麻糸を使っています。
(本業が内装屋さんですから、その麻糸はいくらでもあります。今では、カーペットのジョイントにはほとんどクラスファィバー・テープを使い、
アイロンで圧着しますから、糸で縫うなんてことしません。ですから、麻糸は、いまでは不要品なんです。)
縛るとき、少しなめて濡らして縛ると、一回だけでもキュッと縛ることができて、ゆるみません。
友人のT氏は、テントを縫うビニロン製のミシン糸がいいとおっしゃっていました。
それには根拠があり、樹脂をつけてランプで焼いたとき、木綿や麻だと燃えやすいからだ、といいます。
それが、防炎性のビニロンだと、燃えにくくなりますから、それも一理あります。
と、何年か前に書きましたが、最近では、むしろ普通の木綿糸で縛っています。
それは、太めの糸で3、4周とか、4、5周巻いて縛るのと、細めの糸で10回巻いたものとを比べた場合、
細い糸でしっかり縛った方が糸の体積が小さくなり、先にしても根本にしても、その体積が少なくなった分、クサビが入れやすかったりします。
それに、縛り目も丈夫になることが、数多く経験していくうちに分かったからです。 (2007.10 追加・訂正)
なお、ビニロンは繊維の弾性が強くて、一回締めても、すぐにゆるんできます。
まだジーパンを縫う木綿糸の方が、締め付けが楽だしよく利くと思います。
麻や木綿の場合、燃やさないようにあぶる、ことがひとつのポイントとなります。
現代工法として、樹脂(松ヤニ)をつけて火であぶらなくても、瞬間接着剤で固める、
・・というやり方もあり、実践されている方も多いと聞きます。
いずれも、この作業は、毛を固定して抜け毛を少なくすること、
また、プラグでほぞ穴に固定したときの安定性・安全性を目的としたものと、筆者は理解しています。
◇ 検査とその対処法(2007.10.21 追記)
張り替えた結果が的確であり、演奏しやすいものになっているかどうか、よく、チェックします。
(以下に記述したA〜Fのようなことをチェック)
写真のように、毛が均一iに入っていて、上下からすかして見ても、あたかも、一本、一本の毛が、
ロシアとか北朝鮮の軍人の行進のように、 ぴっちりと並んでそろっていると、じつに気持ちがいいものです。
A. 全体の毛に、ねじれや、ばらつき、大きな交錯がないかどうか。
B. あたかも、一本のリボンを張ったように、毛が、巾に対して均一になっているかどうか。
C. 金属類に、サビや汚れはないか。
D. スティックのバネ性や(真っ直ぐみたときの、左右の)曲がりがないかどうか。
E. アジャスター・ネジで調整してみて、ゆるすぎて、目一杯締めても張らないようなことはないか、
あるいは、いちばんゆるめても、まだ突っ張っている状態になっていることはないか。
F. また、アジャスター・ネジを締めても締めてもゆるんでくるようなことはないか。
A.のような場合、ヘッド側なり、フロッグ側なり、やりやすい方のクサビ(プラグ)を抜き、もう一度、クシやブラシで梳き直し、縛lり直します。
2、3本、4、5本の毛がたるんでいる場合、もう一度ブラシに水をつけて毛束に塗ります。
そうして濡らしておき、アルコールランプの芯を少し持ち上げ、火の高さを高くします。
その炎の上に、毛がたるんでいる部分を手早くくぐらせます。すると、火であぶられたために、たるんでいた毛が縮みます。
動作があまりゆっくり過ぎると、毛に火がついて燃えてしまいますから要注意。さりとて、手早すぎては効果がありません。
ほどほどの炎にあてないと縮んでくれません。
これは、毛替えが必要になったものを、新しく毛替えしたときと同じ条件にするため、一度、シャンプーして、
ロジンをすっかり洗い落とした状態にしてから、わざと3、4本の毛を引っ張ってゆるめ、それで、お試しになって下さい。
それなら失敗しても、火が燃えついても何の問題はありませんよね。
B.では、主として半月リングの隙間に入れる、タンの調整でかなり改善することができます。
タンを差しながら、半月リングの巾全体に平均して毛がそろうように、少し左右に引っ張りながらタンを差し入れます。
C.金属類サビや汚れは、トランペットなどの金管楽器を磨く「金属磨き(商品名「ビカール」など)」か、
車の塗装を研いだり磨くための「コンパウンド」が有効です。 磨いたあと、そのままだと、またサビたり汚れたりしますから、少し薄めたアルコール系のクリアー・ニスを塗っておくといいでしょう。
このアルコール系のクリアー・ニスは、ホームセンターの塗料売り場「トールペイント」用の資材売り場に小瓶ものが売られていますから、
ひとつおいておくとこんなときには便利です。この場合のアルコール系は、乾燥も早いのでとてもいいですよ。
D.スティックのバネ性も、アルコールランプであぶって修整します。 弱すぎるものはカーブを大きくし、
きつすぎるものは、のばす方向に戻します。
E.では、毛の、カットした長さに問題があります。目一杯締めても、使える強さに張らないのは、毛が長すぎるからです。
(当たり前だよね。)
フロッグをいちばん前(ヘッド側)にしてゆるめた状態で、毛がスティックより2、3センチも下にダラーンと垂れ下がるようでは、
カットした毛の長さが長すぎます。
3mmずつつめて試してみて、ほどよくゆるむ長さで固定します。
いちばんゆるめた状態でも、突っ張っていてゆるまない場合で、もし、フロッグ側のホゾ穴が大きく空いている場合などでは、
毛束がヘッド側から出るように、反対に差し入れることでカバーできます。
(上のイラストでは、アジャスター・ネジ側から毛束がでて、ヘッド側にプラグが差し込まれていますね、
それを逆にすることで、その分だけ、毛の有効長が伸びることになります。)F.の場合、プラグ(クサビ)がゆるみ、毛束が、アジャスター・ネジで張る張力のため、 抜け出す方向に動いている証拠になります。
プラグ(クサビ)をはめ込む際、その張力でゆるんでこないように、 少し薄めた木工用ボンドとか、
事務用のデンプン糊程度のものでも構いませんから、少し塗っておくと、こうしたことが起こりにくくなります。
少し、弱めの接着剤を使うのは、毛替えの際には取り外しますから、あまり強力な接着剤では、かえってマイナスになるからです。
これ以外にも、メーカーや形の違いなど、いろいろな問題もおきてくるでしょう。 そんなときには、メールして下さい。HS jp * * *
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