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図面からの制作・T グァルネリ型 テンプレート・内型の制作
図面からの制作・U グァルネリ型 裏板・表板の削り、側板の組み立て
図面からの制作・V グァルネリ型 側板の完成、裏板・表板の仕上げ
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図面からの制作・Tグァルネリ型
 
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テンプレートの制作
内型の制作
この内型の特徴
その他の型

ヴァイオリンを最初からつくるには、 何から、何を、どのようにしてつくるのか。
ここでは一枚の図面から、テンプレートや内型からつくっていく様子を記録しました。
いままでつくった型は、ほとんどストラド型でしたから、今回はガルネリ型に挑戦。
     
  ◇ 図面をチェック   
ラジコンなどの図面の違い、ヴァイオリンの図面では、細かなところでいろいろ苦労させられる。

この図面は、イギリス人のヘロン・アレン著『ヴァイオリン製作 今と昔』という本にについていた、
1734年ヨーゼフ(ジョゼッペともいう)・ガルネリの作品。

何しろこの図面は、百年前の、それも技術系の人間ではない、雑誌の編集者であり、
弁護士でもあったヘロン・アレン氏が、本物の楽器から転写して作成したものらしい。

この図でいうと、例えば、図面の中心線で二つに折り、光に透かしてみたとき、本来、裏も表も、
左右の線がぴったりと重なり、同じであるべきなのに、実際には多少の狂いが出ている。

しかも、それが場所によっては1ミリや2ミリの違いではないから問題。

さて、それでは反割にするテンプレートだけに、その、両者の違いを足して2で割るか、
大きい方をとったらいいか、小さい方にするか・・それがまた、大いに悩ましいところ。

写真のように、1/2のテンプレートだと、製品では倍の数値となって反映してしまうから問題なのだ。

製図法がまだ確立されていなかったのか、 あるいは、採寸したほんもののガルネリが左右びっこで、
そのまま忠実に計測し、図面化したものか、今となっては分かるすべはない。

別の資料によると、ガルネリ兄弟の作品にも、それぞれの作品により、多少の寸法上の差はあるようだ。

しかし、今回の製作は、ガルネリの完全なレプリカではなく、あくまで、私の「ガルネリ型・現代ヴァイオリン」にしたいのだ。

そうすると、ボディの大きさは、現代の標準になっている355mmに対し、当時よりネックも指板も伸びているはず。

ところが、この図面のボディは349mm程しかないし、ネックも少し短め。

別の、ガルネリ・デル・ジェスの図面ではボディは351mmになっている。

それで、図面を比例計算し、2〜3%、コピー機で拡大して使うようなことも必要になる。

だから、他の資料からアッパーバウツ、インナー、ローアバウツなどの数値を参考にして、アレンジしていくしかない。
(とりわけ小生は、そのスリーサイズにこだわり、できだけバランスがよく、スタイルもいい、グァネリらしいプロポーションにしたいのだ。)

そうしたことからも、一枚の図面を多角的に検証し、縮尺を実寸に照らし合わせてみたり、調整しなければならないわけである。
    ◇ テンプレートの製作    

まず最初に、その図面から修正した寸法の反割のテンプレート(上の写真・ベニヤ部分)をつくることになる。

このテンプレートは、内型をつくるときのもっとも基本になるものだし、ブロックの形を成形したりするのにも使う。

ここでは、仮に内形テンプレートという名前で呼んでおく。

私は、このテンプレートを3mm(実際は2.7mmの襖用べニア)でつくっている。

ミシン鋸で切っても、楽に切れるし、あとはペーパーでならし、簡単に、正しい寸法に仕上げられるから便利がいい。

ベニヤは安い上に、加工しやすく、意外に安定したプレートとなる。

プロの方は、真鍮の板やアルミ板、それにプラスチック板で半永久的なものをつくっている人もいる。

金属類などは、固くてつくりにくく、アクリル板は無理すると割れたりする。

それで不確かなものにするより、つくりやすくて正確につくれるものの方がベターという考えだ。 (*参考記事)
図面からは、カーボン・ペーパーなどを使って転写し、切り抜く。

自分が描いた線だから、その線を残すように切るか、線で切るか、1mm程度大きめに切って、あとでペーパーで整えるか。それくらい正確につくっていく。

併せて裏板・表板用の、外形抜きのテンプレートもつくっておく。(写真・左)
  
 そうした外形用テンプレートの図が載っているものもあるが、もし、外形図がない場合でも簡単につくることはできる。
 
内型のテンプレートに対し、所定の巾のワッシャー(外形-内径=約5mm)などを利用しても、均等な巾で大きくひろげた外形図を描くことができる。

つまり、外形用テンプレートは、内径にリブの板厚を加え、エッジの出っ張り分を加味した巾があればいいことになる。
 
リブの板厚が1.5mmとすると、エッジ3mmでプラス4.5mm、それに、万一の場合のゆとりを0.5mmを考慮すると5mmあればいいということですね。

外形図がなくても、こうやって描いていく。
   ◇ 内型の制作   
ドイツ式の内型は、21mmのベニヤに、9mmベニヤを加えて、30mmの板厚にして、リブ巾の厚さに等しく設定する。

でも、この二枚は接着しない。イタリア式の内型だと、21mmベニヤだけでいい。

この1/2テンプレートは、中心線から裏・表、ひっくり返して使う。

テンプレートには、上下2カ所にピンホールが空けてあり、目打ちや、右の写真のように、画鋲でずれないようにしっかり固定しておいて、線で写し取る。
ブロックのつく6カ所の出隅・入り隅には、ドリルで、あらかじめ少し大きめな穴をあけておき、そこから、ジクソーやミシン鋸でくり抜いていく。

私は、できれば切り落とす外側も外枠として、使いたいときがあるので、内外、両方を使えるように、丁寧な切り抜き方をしている。

手持ちのミシン鋸の容量が小さいため、21mmと9mmベニヤは、別々にカットしている。

電動ミシン鋸が、衝動買いしたリョービの安物のため、スムースに切れる厚さが9mmベニヤが限度、 とても、30mmの厚さのものまで安定して切れないからだ。

やむなく、21mmの方だけは、ジクソーに鉄工用の細かくて丈夫な刃をつけて切っている。

木工専用の刃では薄くて刃先がぶれてしまうし、刃が粗くベニヤのバリもいっぱいでる、鉄鋼用はそれよりも肉厚だし、その上、刃数が多く切り口がきれいにカットできる。

あぁー、こういうときこそ、○万円の小型ベルト・ソーが欲しい!

(その後、チェロ製作にあて込み、中国製の安物だが卓上型の小型ベルト・ソーをゲット!)


内型をくり抜いた外枠も、外型として使えるようにしておくと便利

ここでも、鉛筆の線上を切ったらいいか、線を残すべきか、または、1mm程度の余裕を残すべきか、実物のテンプレートに合わせ、ここはきっちりと切ってきめる。

私は二度に分け、ふたつの工具を使って切っているから、1mm程度の余裕を残し、あとでペーパーやヤスリで処置して修整している。

切り抜いたものは、ここで一旦、9mmと21mmの両方をぴったりと合わせ、ビスで数カ所しめて固定。

製作段階では、側板が完成し、裏板のライニングを張る際のために、9mmの方は止めたビスをとって外すことになる。

さて、修整は、板に貼り付けたペーパーで、丁寧に削ってならす。相手がベニヤだから、

ここでは100〜200番程度のペーパーを使う。ヤスリで削るのも結構。

ペーパーを、手にもってこするのはよくない。

ここでは、出っ張っている分だけを削りたいのだから、平らな板や、内側の曲線部分では

太めの丸棒などを利用して、正確に削らなければならない。

そして、周囲全体が、水平面に対して直角になるようにする。

写真上は、イタリア式・内型製作では必需品のヴァイオリン製作専用ツールの直角定規でチェック。

カーブのきついところでは、ジグソーの刃がぶれて、不安定になったところが少し凹んでしまった。
水平面に対しての直角を見る

この直角定規もお手製



悪いところには、コクソによるパテ詰め
さて、その凹みには、ペーパーがけした際にでる「削り粉」に、デンプン糊あるいは木工用ボンドと水を少々加えてよく練り、 パテとして補填しておきます。

子供の時、近所の建具屋さんのおじさんが、ときおり、オガ屑(大鋸屑=ノコの切り屑)とご飯粒とを練って、節の穴やキズなどを埋めていました。

学校帰りによく立ち寄って、よく見ていたものです。

確か、このことを『こくそ』といっていたと思いますが、漢語林で調べても載っていません。

多分、練って埋めることですから漢字で書くと「刻塑」になるのではと思うのですが・・・、

いずれにしても、すでに、死語に近い言葉です。

メーラーのおひとり、関東の、ある地区の大工さんからの情報ですが、

その地方の大工さんや木工職人さんたちは、「とくそ」とか「でんぶ」と呼んでいるそうです。

乾いて水分が蒸発した分、痩せて、凹むこともあります。そのときにはもう一度、追加して埋めます。

このテクは、あやまってキズにしてしまったところや、 古いものの修理・修復などにも利用できます。

ただし、ここでは、糊は絶対にデンプン糊です。ボンドではニスが乗らないし、

ペーパー掛けした結果でも、デンプン糊が勝っています。

ニスよりも強度を重視、というところではニカワがいいでしょう。昔からの、ご飯粒もいいです。



その後、いろいろ調べたら、刻苧(こくそ)もしくは木屎(こくそ)と書くようで、 漆の現場では飛鳥や奈良時代、仏像製作の歴史の中で使われてきました。仏像は、法隆寺にある土偶に近い塑像から、コクソを経て、 木彫に推移していったことが分かるというのです。そのコクソは 生漆ケヤキの粉少量の米糊を混ぜたものであり、興福寺の修羅像などはこの技法で作られた最も有名な仏像だそうです。ということでしたから、 別ページでコクソを取り上げました。
型の成形ができたら、所定の位置にクランプで絞めるときの穴を空けます。

それから、側板のさわる部分にロウを溶かして塗ります。

まかり間違っても、ニカワがはみ出して、内型に側板がべったり・・ということのないようにするためのものです。

ジュースの空き缶でつくった簡易コンロ?と、水ようかんの入っていたアルミパックのナベ?を使い、アルコール・ランプでロウを溶かします。

この写真では分かりにくいですが、ジュース缶の中に、ほぼぴったりのアルコール・ランプが入っています。

ロウは、植物ロウでも、普通の、白いロウ(動物性)でもかまいません。

要は、ニカワをはじく効果があればいいわけです。

溶かしたロウを、筆か刷毛で塗ります。

なにしろ、溶かしたロウを塗りますが、手際よく、6カ所のブロックを仮付けする以外のところに塗ります。

筆でも刷毛でも、ブタ毛のような、固いものがいいでしょう。油絵用の、馬の脚、かかとの毛のものでも結構です。

知人は、丸棒のロウを何度も何度も、ちょうど弓毛にロジンを塗りつけるように塗り、

あとからアイロンでなじませている・・という方法もあります。

私は、短時間で済ませたいから、あえて煮て溶かして塗る方法をとっています。

もし、塗り上がったものを見て、白っぽく浮いているようなところや、

ベニヤの木の組織に十分に食い込んでいないところがあったら、あとからヘヤー・ドライヤーであぶったり、

アイロンか半田ゴテでなでつけて、しっかりしみ込ませておきます。

あとで、余ったニスがビンの中で固まってしまったりしますから、そうした使い残したニスを塗っておくこともいいでしょう。

これで内型は、きれいに完成です。
  ◇ この内型の特徴   

この型をみて、図面と違っているのをお気づきでしょうか。図面のC部ブロックは四角になっていて、内型も直角に切り込んであります。

ところが、私は、あえて出来上がったもののように、外周と平行に少し凹ませて欠いただけです。

これは、Edmund Fraserの著書[ PRACTICAL VIOLIN MAKING(実用・ヴァイオリン制作)]、

および、H.E.Brownの[ THE VIOLIN MAKER'S GUIDE]など、アメリカ系の本で見た内型と、

今までの経験則をあわせ、とくに今回はこの形をとりました。

図では、ブロックが斜線で示されていますが、私は、ちょうど向かって右側の斜線のように、

木目をC部先端に向けて木取りをしています。そうすると、次の写真・赤線のように、

尖った先端にまでしっかりした晩材(年輪)部分が入り、丈夫になるからという配慮からです。

そして結果としては、どうせブロックの内型に食い込んでいる直角部分は、

所詮、あとで切り捨てることになります。

(写真のように、ライニングの内側・延長でブロックはカットしています)

それなら、最初から直角部分はいらないことになるわけだし、ブロック材にしても、

直角の柾目に木取りをすればいいわけですから、一目瞭然、作業がやり易いということにもなります。

こうしたところに、アメリカ人らしい合理主義がうかがえますね。
  ◇ その他の型   

ついでに、リブを貼り付けるための圧着・補助材もつくります。

リブ巾の30mmの木片から形どおりに切り抜き、私はクッション材として、

本業(インテリア)で出たニードルパンチ・カーペットの端切れを裁断して、貼ってあります。

薄いコルクシートでも、ラシャやフェルトのようなものでもいいでしょう。

リブ材のカエデは固いので、何も貼らなくても、ペーパーで仕上げてあればキズのつく心配はいらないでしょうね。

ただ、こうしたパッキンがあると、すき間がなく、ぴしっと押さえつけられますよ。

図面の、ここでつくった圧着用の押さえ型の下に、

ネックの形や表板・裏板用のアーチング・ゲージ(カーブ・ゲージ)が描かれています。

当ページのトップの写真にあるように、ネックのプロポーション・プレートは、100円ショップで買った

赤い下敷きのプラスチック板、アーチング・ゲージはテンプレート同様、ベニヤでつくりました。

グァルネリのエフ字孔には大きな特徴があり、ストラド型より、少し長くて大きい。

しかも、上のカーブがきつく曲がっていて少しびっこに見えるぐらいです。

そうした、独特の特徴があるわけですから、ここは慎重につくります。

いままで、私は、エフ字孔の型だけは、透明なブラスチック・シートでつくっています。

これだと、正確な作業がしやすい上に、表板に転写する際、アーチに沿って楽に曲げられるとか、

中心線や、C部の突端からの位置など、はっきり掌握できます。


これ以下の、全5ページ分の簡略化した流れをスライドショーでもご覧になれます。


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