ATUを使うダイポール(平衡)アンテナのATU電源供給の注意(Jul 7, 2007)
単身赴任先でλ/4スローパー(上部ATU給電)を鉄筋コンクリートマンションの4F軒先から引き下ろしていた。どうしても建物の影響を受けるため建物反対側への輻射が弱い。それでATUを屋上の縁に移動し、スロープ部分はそのまま使い、更にλ/4ワイヤーを追加して屋上に展開し、変則「への字ダイポール」を構築した。エレメント長は其々20mで、3.5MHzバンドをメインにしているが、実はこれで1.8〜50MHzまでの運用が可能である。
ところがこのシステムで地元のJOFG(NHK第一/729KHz)を聞くと様子がおかしい。9+50dBものSレベルで入感しているにも関わらず、非常に大きなレベルでバズ音が混入している。ダイアルを回すとAMバンド全体にノイズが散らばりSレベルは9+30dB近くまで達している。AMバンド内は殆どノコギリ状態で、初めて見ると「何だコリャ!」となる。受信機IC-756の周波数スケールは2.5KHz/divで、その中に3個のピークがあるのでノイズの間隔は約800Hzと読み取れる。それにしてもこれだけのノイズが出ると全くお手上げである。
写真はマンション屋上の縁に設置したATU(SG-230)。縁はノッペラボウなので、ATU底の取付金具に長めのボルトを固定しコンクリートに引っ掛け、反対側を2mmバインド線で排水口の金具まで引張り3点支持で固定。白っぽく見える線がステンレスワイヤーのエレメント。右側がスロープ状に、左側はTVアンテナ支柱に添えた「のぼりポール」を介してへの字に張られている。

(1)IC-756で受信したJOFGのスペクトラム
写真は1.9MHzバンドにATUの同調を取ってから受信したJOFG。写真は無音時を狙ってシャッターを切ったもの。キャリアの先端にノイズが重畳している様子が分かる。
この原因が何か最初は分からなかった。前日まで使用していたスローパーアンテナでは問題なかった。以下調査を行なった・・・。
@小型ラジオを片手にマンション周辺や屋上で様子を診る・・・ノイズは確認できない。
Aシャックの無線機以外の電源を全てOFFにする・・・変化無し
B最後に無線機に関係する電源を一つずつ外していく・・・ATU電源を外すとノイズが無くなる
CATU電源は12V/1Aの安定化スイッチング電源・・・別型の電源にすると問題ない
Dどうも解せない・・・前の電源でもスローパー時はOKだったから
Eダイポールに変更した事でATUのRF系も電源系も浮いている・・・スローパーの場合はRF系のコールドは接地される
Fそれで浮いている電源系のマイナス側を無線機の筐体へ接地するか、無線機と電源を共通にすると相応の改善が見られる事が判った。

(2)対策後・・・JOFGのスペクトラム
アダプタ式の電源を取り止め、ATU電源をIC-756と共通の電源から供給する事にした。これにより写真が示すように良好な受信が出来るようになった。今回のノイズ発生原因を整理すると。
@アンテナが接地型システムが平衡型システムに変わった
Aこの際、接地型では気にせず終わっていたが、電源ラインと同軸の結合を考慮する必要があった
Bたまたま使用した電源のノイズ輻射は多機種に比べ相当に大きかった
C電源はACラインが後押しする形で浮いたATUに供給されるため、更に影響を増長させていたと推測
D電源のDC側とAC側のアイソレーションも良くなく、DC(-)とATU(-)の間に40V程度のAC電位がある
E電源(-)側を無線システムに接地し電位固定を図ることで制御線と同軸やATUへの結合を遮断し大幅な改善を見た
F電源は単体機器で使用している分には何も問題は無い
という事でとんだ回り道だった。しかしこれを電源の問題とするかシステムの問題とするかは議論のあるところだ。知らない内に問題が解決してしまい本質を見誤る可能性があるので多角的にみる事が大切に思う。

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