+手紙+
2 長方形の白い封筒が、太陽に透けて薄ピンク色になる。 わかった瞬間、あったかいものが胸いっぱいに広がった。 |
ピンク色の便箋に、女の子らしい、丸みを帯びた字が並んでいる。 どうやら気が付かない間ににやにやしていたらしく、友人の口から露骨なため息が漏れた。 吊り革に両の手を掛けた格好で、友人はますます困惑した表情になった。 「みんな、俺らと同い年だって?」 「うん、そうらしい」 森高が、封筒からはみ出していた写真を奪い取った。 どうやら教室で撮られたらしいその写真のアングルと、同じ教室と名のつくところを思い浮かべて、重ねてみようと。 無理だって、と夏雪は笑いながら、友人の手から写真を取り返した。 うちの高校は、高層ビルどころか、畑と田んぼに囲まれている。 でっかいピースサインの向こう側は、とても同じ日本だとは思えなかった。 「ウワサのはじめちゃんは映っとらんの?」 ぷしゅーと空気を吐き出して、バスが、停留所に止まった。 「ここ、どうぞ」 発車の合図の前に、夏雪は慌てて封筒と写真をカバンのポケットに押し込んだ。 かくん、という衝撃と同時に、ほ、という安堵の息が隣から聞こえた。 半年前、トラックと交通事故に合って、右手の肘から下の感覚がなくなった。 今まで、自転車で通っていた学校には、バスで通うようになった。 森高の横に並び、過保護な友人に、大丈夫だよ、これぐらい。と告げる。 「それで、はじめちゃんには言ったのか?あのこと……」 夏雪は黙って首を横に降った。 事故から一ヵ月ほどして。 電話でもメールでもない、手紙では、はじめに嘘をつくこともごまかすこともできかなかった。 その事実には、とても格好悪く、とてもみじめな気持ちにさせられた。 バス内には冷房がバンバンにきいていて。 |
はじめさま 写真、ありがとう。拝見しました。 ……というわけで、突然だけど、今日は報告があります。 今度、右手の手術をすることになりました。 はじめとは、今までどおり、こうやって文通を続けていけたらいいなと思っています。 夏雪 |