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3 「馬鹿じゃねえの」 って言った男の子がいた。 すごく嫌な人だって思った。すごく、……すっごく!! |
* * * 奈保は電車のドアが開いた途端、逃げ出しそうになった。 座席がほとんど埋まっている状態で、立っている人は数えるほどもいなかった。だから気付かないふりをするわけにはいかなかった。 実際のところ、彼は外の景色に目をやっていて、こちらに気付いたのかどうかも分からなかった。 こっちが、こんなに見ているのに気付かないっていうのは、無視ってことですか。 扉が開きます、ご注意ください。 女性の丁寧なアナウンスが流れて、ドアがまた開いた。 すみません。とか、ありがとう。とかって笑顔を期待した。 すっごいムスっとされて、「結構です」って。 (え) 頭の細胞上手く繋がらない。しばしの間。 立ちつくしてしまった。高校最寄の駅に着くまで。ずっと。 奈保はずっと立っていた。 扉が開きます、ご注意ください。 丁寧な女性のアナウンスが何回目に聞こえてきたんだか。 降りるとき、ドアのところで。 (わ、言わないで) 耳をふさいで、早足で上見ないようにして駆け抜けちゃえって思った。 振り返ってしまった。 ガラス一枚隔てた向こう側から、しかも高いところから見下ろすみたいに睨まれた。 ガラス一枚が音を遮断した。 でも、でも、でも。 |
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