良い子は信じちゃいけません
超偏向極私的 各話解説
(ウド編)

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2話「ウド」

「百年戦争は、メルキア軍を脱走したときに協定が結ばれて休戦となっていた。それから半年、軍の目を逃れて、俺はウドの街に紛れ込んでいた」

……いきなり、「半年間の空白」。
コレについては、フィアナフリークとして思うところが色々あるのですが、しばしお待ちいただくとして、まずは前回同様、キリコちゃんの行動をトレスしてみましょうか。

◆キリコの行動フローチャート◆ チャートのみ呼び出す

ウドの露天でカエルを突きつけられる >> ブーンファミリーの人間狩りに捕まる

>> ジジリウム掘りに駆り出される >> 話しかけてきた男から情報収集(?)

>> 酸の雨に降られる >> 監視に反抗してタコ殴りされる*1

>> 脱走計画を持ちかけられる >> 脱走。治安警察とファミリーの癒着を知る

>> 逃亡*2 >> 追いつめられたところを、「謎の銃弾」*3に助けられる

>> 一息ついた途端、ゴミ捨て場に転落 >>スクラップのATの中で眠る。
「そこはおれにとって、懐かしい匂いのするところだった。手には冷たい鉄の肌触りしかなかったが、慣れ親しんだ温もりが甦ってきていた。おれはおふくろの胸に抱かれたような気持ちになって、いつの間にか眠ってしまった」……この、メカフェチ小僧(-_-;;)

>> お目覚め

ジジリウム、酸の雨といった重要な小道具が顔を揃えた話……ではありますが、肝心のキリコちゃんはっていうと、1話に続いて「それでいいのか主人公!?」ってな展開ですね(^^;;)。
特に、いきなり拉致されて、強制労働に駆り出されたっていうのに、妙に淡々としているキリコちゃんって、ジツは結構ヘン(^^;;)。

「一体やつらは何を掘っているんだ。あのバケモノ連中は、おれに何を掘らせようとしているんだ」

まだぎこちない郷田さんの演技とも相まって、キリコの「ズレている部分」というか、「目の前の状況に対して情緒的な反応ができない」病んで壊れた心が垣間見える……なんて思うのはわたしだけでしょうか?
「情緒反応がない」のとは対照的に、「自分に課せられた目的」ないしは「誰かからの指示(命令)」を知ることには執着している……ように見えちゃうんですよ。
これが、長年「兵士=命令に従う人形」として生きてきた習慣だとしたら……ちょっとコワイかもしれない(-_-;;)。

でも、キリコが完全に「兵隊人形」になってしまったわけではない、という証拠も随所に見られます。突発的というか、発作的には妙に「感情的」だったりもする部分。

まずは*1のタコ殴り(正確には“殴られ”ですね)。そのそもそもの原因はって言うと、隣で作業中の(最初に色々と教えてくれた)男を気遣って、そこを監視に見とがめられたからだし…。
で、*2の脱走シーン、ココでキリコちゃん、ちょっと奇妙な行動を見せるんです。
ダングに乗りかけたところで、前述の男(本編中では出てこなかったけど、ラベという名前らしい)が、ファミリーのアジトに入って行く姿を見つけて、わざわざ引き返して、後をつけていっちゃうんですよ!
で、その先で、治安警察の署長他の死体を発見。続いて、せっかく追いかけた(?)相手の死に目を看取りついでに、ファミリーと治安警察の癒着を知らされる……わけなんだけど、一体、何故こんなシークエンスが入るのでしょうか? 「ウドの街の荒廃ぶり」を視聴者に知らせたいのなら、脱走シーンの前に、えんえんとブーンと署長の会話がありますし。
キリコがそれを知ったからって、義憤に駆られてラベの敵討ちに出るというわけでもなく、つまりは話の展開には何の関係もないでしょう?
それだけにいっそう、あそこで引き返したキリコの行動が、わたしには謎なのです。
相手はまったくの「行きずりの人間」だというのに、なぜそこまで? ウドの事情に疎いキリコには、情報源が必要だったってだけでもないでしょうに…。たまたまお近づきになって(収容された部屋も同じだったみたいだしね)、一緒に脱走することになったことで、その場限りとは言え、『仲間』意識みたいなものがあったのかしら…?
#でも、キリコ本人は絶対そんなこと「意識」していないだろうな〜。
わたしとしては、「なんだかんだ言っても、根はイイ奴なんだよね、キリコってさ」という結論に行き着いてしまうのですが、いかがでしょうか?
この回のラストシーンが、「ATの中で眠るキリコ」ではなく(あそこで終わらせた方がまとまりはいいのに)、一見、蛇足にも思える「目覚め」であったように、「作劇的には不自然」な部分に、「キリコの人間性(の獲得過程)」が隠されている…わたしは、そんな風に思います。


*3:『野望』『赫奕』ではお馴染みとなった「奇蹟の銃弾」。
キリコの「異能者」を象徴するシーンとして、賛否両論の観がある(主に「異能者」をキリコのキャラクターとして受け入れるかどうかで)シークエンスですが、ジツは、こんなに初期から使われていたんですよね〜。こっちの方には「キリコを監視しているメルキア軍の仕業」という、「科学的」な説明がついていますけど…。
わたし自身は、「異能者」は「元RS」同様に「肩書き」に過ぎず、キリコのキャラクターの「本質的な部分」に及ぼす影響は乏しい……と考えております。ですから、「奇蹟の銃弾」にも、さほど抵抗感はないです。「そんなに目くじら立てることもないじゃん」程度。
#だから、この回の「何者かの放った銃弾」と同列に扱えちゃう(^^;)。


フィアナフリーク、大いに語る。

空白の半年。どうせ新作を作るのなら、ここにすればよかったのに…。フィアナ出てこないし。
そうは言っても、『ボトムズ』=「ラブストーリー」をあくまで主張する身としては、この半年さえも、ふたりの…と言うより、キリコの側にとって重要な時間だったと思うのです。

独りきりで放浪している間、自分の「運命を変えた」リドのこと…もっと言っちゃうと、『アレ』のことを、キリコは当然何度も繰り返し思い出していたはずで、その「記憶の反芻」を通じて、『アレ』への「衝撃(びっくりした〜! 何だアレは!?)」が、無意識ながらも「親近感」に繋がっていったんじゃないかしら…なんて、憶測を逞しくしているのです。

キリコの、物言わぬ「無機物」に対して「親しみ」を覚える傾向ってのは、この回のラストでも明らかですが、じゃ、生身の人間との関わりはどうか…っていうと、まったく、「できない」ってわけではないですよね。前述のように、「奇妙に感情的で、人なつっこい」部分も、同じくこの回の中では現れているんですから。

とは言え、彼にすれば、予測のつかない行動を取る「人間」よりは、何も言わずに受けとめてくれる「物」を相手にしている方が、落ち着くんじゃないかしら…。

何が言いたいかと申しますと……

もしフィアナ(というか、素体)が、はじめからイキイキした(例えばココナみたいな)、「普通の人間の女」だったら、はたしてキリコは彼女に恋したでしょうか?
出逢いの時の「何だこれは!?」って「衝撃」が「恋」に熟成するまでの間には、相手が自分にとって「好ましい」と感じる(つまり「なんか、イイなぁ」って思う)必要があると思うんです。キリコにとっては、『アレ』の「無機質」な感じが「好ましかった」のでは…?
そうでないにしろ、「孤独」な人間の中には、自分の中に「仮想の話相手」を持つタイプがいますが、「無口な割にモノローグが饒舌」なキリコちゃんも、実はそのタイプなのかも…。とすると、『アレ』は、彼にとって、そういう「話し相手」の役割も果たしていたのかもしれない。
「恋におちる」には、それなりの下地が必要だとするならば、この空白の半年はそのための期間だった…なんて、わたしは解釈しちゃっているのです。

ありゃ、今回はキリコちゃんのことしか話してないな(^^;;)。

 

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