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楽譜(参考運指つき)
楽譜(音の高さと長さの情報以外はほとんど削除した状態)


ゴルトベルク変奏曲〜アリア

親子兄弟のつながりを示す主題のバスラインが分かりやすい形で提示されていないので、予備知識なしにぼんやり聴いていると変奏曲だといわれてもピンとこない。
第9変奏第10変奏第18変奏第22変奏あたりを同じリズム同じ速度で立て続けに弾くと、バス主題自体の効果というよりはおそらく転調のタイミングというかカデンツのタイミングというか(1/4ト長調、2/4ニ長調、3/4ホ短調、4/4ト長調)、同じタイミングで調確定の安心感が得られるために、「ん、もしかして兄弟?」ぐらいの漠然とした印象は残るかもしれません。
まあバスあっての和声と思えば親としての最低限の役割は果たしていると考えていいんでしょう。

何にしてもこのバス、後続の子供たちに対するしばりはとてもゆるい。

ソ ファ# ミ レ シ ド レ ソ(レソでト長調カデンツ)
ソ ファ# ミ ラ ファ# ソ ラ レ(ラレでニ長調カデンツ)
レ シ ラ シ ソ ラ シ ミ(シミでホ短調カデンツ)
ド シ ラ レ シ ド レ ソ(レソでト長調カデンツ)

大体のところこんな並びですが、大体、なんて言葉がこの時点で出てくるぐらいだから、もはや何をかいわんやという感じ。
曲によっては「鳴っていない」箇所もけっこうあったりします。
もちろんカデンツ間をうめる和音も一様じゃない。
これで本当に変奏曲なのかという声も出そうですが、だったら他に何て呼べばいいのさと開き直れる程度には変奏曲です(無理すれば「ちょっと変則的でついでに退屈かもしれない組曲」ぐらいでも通せたかもしれないけど、バッハとしては、とりあえず定型のバス主題があることはあるんだぞ、ゆるゆるだけど30曲全部しばってるんだぞ、ということについて黙っていることはできなかったんでしょう)
穏やかでお人よしという以外どこといって取り柄のないドイツの片田舎のおばさんさんみたいなアリアの後に続く子供たちは、このしばりのゆるさのため、悪戯好きで手のつけられないクソガキが多いです。