足の靴づれ騒動以来半年を経過し、足そのものは完全に癒えているが、事件前後の行動には可成りの差が生じている。従来は当然のことながら、朝寝床から起き上がったり、椅子に座っていても、歩きたくなれば立ち上がって家の中を歩いていた。しかし、現在は朝は起こさないと寝たきりである。また椅子に座らせていると、座ったきりで、自ら立ち上がって家の中を歩き廻ることがなくなった。
それでは体力が落ちたのだろうか。先ず立っている時のバランス感覚は従来同様、非常に良く、倒れたり転んだりするようなことはない。また立っているのが辛くなり倒れ込むようなこともない。どうも歩くことも歩けないのでなく、歩くと言う行動に対する信号が発せられていないように思えてならない。これもまた我々一般常識では理解しにくいのだが、どのような時にどのような行動を取るべきか、我々は既に学習し記憶しているので、体調が回復してきた場合、正常時の行動に戻ろうとする。しかし、脳障害を持つ妻にとっては脳の記憶による行動と言うよりも、体で覚えた経験則によって行動を起こすようだ。
従来からも病院など待合室で待っていて呼出で立ち上がったり、診察室で診察終了後、立ち上がる際には、手を出して声かけと共に立たせている。本人は呼出や診察が終了したことが分からないので、座ってから立つまでの時間が短い時には「今座ったばかりなのに、急に立てと言われても体は理解できていない。」そこで2,3回手を引いて声かけをすると、やっと立つのだと分かり、徐々に足に力が入り始め立ち上がっていた。
特に騒動後は、足の痛さから本人自らベットから起き上がったり、椅子から立ち上がったりすることはなく、抱きかかえたり、手を引いてかけ声と共に立ち上がるのが習慣となった。正常者はけがの回復と共に、当然のことながら元の自らの行動に戻るのだが、妻にとっては新しい行動パターンから、従来の行動パターンに切り替えるのは非常に大変なことのようである。古い行動パターンの記憶に戻るのでなく、新しく体で覚えた行動が正しいのだと思っているようである。即ち、昔のように自分で起き上がれるようにするためには、少しずつ起こす体勢を変えて、自立できる体勢を徐々に覚え込ませる必要がありそうである。
散歩に関しても騒動前の状態に中々戻れていない。靴擦れで出来た黒ずんだ血豆の跡は2ヶ月程かかって、やっと取れた。春を迎えそろそろ散歩を本格的に再開しようと思っていたが、今年は天候不順で雨が多かった。昨年は少々の雨でも散歩に出掛けていたが、今年はさすがに歩き始めたばかりであり、雨の日には散歩を中止せざるを得ず、中々連続して散歩を続けることが出来ずにいると、梅雨入りとなり、暑さも加わってきた。妻は暑さに弱く、行動が鈍くなり、毎年夏の散歩は苦労していたが、今年はそれに輪を掛け、自分から歩こうとしないため、少々手を引いて歩くが、数歩歩くとまた立ち止まってしまうの繰り返しとなっている。
以前はデイサービスから帰って来ると往復1km程を40分程掛けてスーパーへ買い物に行き、夕食後再び1〜2km程散歩に出掛けていた。しかし最近はスーパーに出掛けるのに1時間以上かかるようになり始めたので、日によっては買い物に出掛けるのを省略して、夕食後散歩に出るようにし始めた。
従来は夕食後は散歩であり、スーパーに向かうことなく、好きな散歩道の方向に出掛けていたので、当然散歩道の方向に出掛けるものと思っていた。しかし、特に誘導しているわけではないが、スーパーへ出掛ける。帰宅後は買い物、そして夕食後は散歩と理解しているのだろうと勝手に思っていたが、これは全く違っていて、妻からするとその日の1回目はスーパーへの買い物であり、2回目が散歩であると理解しているらしい。
そこでスーパーへの買い物1回だけで終わっているケースが多くなっている。それでも、たまに2回目の出かけで散歩コースを歩いてはいるが、殆どが自宅周辺でその歩く距離も昨年に比べると1回り小さくなっている。現在は夏の暑さのためやむを得ないと思っているが、秋を迎え体調も整った時に昨年と当程度まで回復してくれることを期待しているが、果たしてどうなるだろうか。 |