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3月初め妻の簡易保険満了の通知がきた。そしてその手続のため、かんぽ生命の職員が訪ねてきた。妻は今は書くことも話すこともできないので、代筆処理で済むものと思っていた。しかし、現在は「本人自筆が必要であり、また書けない場合には口頭による確認が必要である。」とのことである。それらが不可能の場合は成年後見人を立てる必要があるとのことである。
成年後見人制度(平成12年制定)のできたことは知っていたが、言葉だけで詳細については承知していなかった。身の回りの世話をしてくれる人が近辺にいない人にとっては良い制度だなと単純に考えていた。従って、夫婦間においてもこの制度が適用されるとは考えてもいなかった。
また成年後見人が必要と言っても、夫婦間の問題であり、弁理士を介せば簡単な手続きで済むと思っていたが、区役所などを調べていくと、被後見人と後見人が夫婦であるか、他人であるかに関係なく、後見人を決めるのは家庭裁判所であり、家庭裁判所に対して申請書を提出し、裁定を仰ぐ必要があることが分かってきた。
即ち、成年後見人用の書類を提出し、その書類審査を受けるという単純なものでなく、全く一般の訴訟事件と同様に「一つの事件」として申立をし、その裁定を受けることが必要になる。その申立をするための提出書類の内容を聞いてまた驚いた。 遺産相続時の手続書類に匹敵するとも劣らない、書類の準備が必要となる。それらの書類は以下の通りである。
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書 類 の 名 称 |
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申立書 |
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申立事情説明書 |
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後見人等候補者事情説明書 |
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親族関係図 |
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財産目録・資料(預貯金通帳の写し、不動産登記簿謄本など) |
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収支状況報告書・資料(領収証の写しなど) |
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書 類 の 名 称 |
1 |
戸籍謄本 |
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住民票(世帯全部) |
3 |
登記されていないことの証明書 |
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医師の診断書 |
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(3)後見人候補者等についての書類(但し、申立人と同一の場合は不要) |
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(4)申立人についての書類(但し、被後見人と同一の場合は不要) |
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先ず親族関係図には本人(被後見人)から見て、配偶者、子供、両親及び兄弟、並びに配偶者の両親までを記載する必要があり、それを証明する戸籍謄本が必要になる。本人の財産目録として預貯金、保険類及び不動産などを全て整理する必要がある。そして本人の収支報告書をまとめねばならない。医師の診断書と共に、必要に応じて精神鑑定を実施するので、その鑑定料10万円(最大)を準備しておく必要がある。本人に関する書類中「登記されていないことの証明書」とは本人が現在『後見人を置いていないこと』(登記がなされていないこと)を証明して貰うものであり、その取得のためには東京法務局まで出向き(郵送も可)、取得する必要がある。若干余談になるが、法務局には成年後見人用の窓口が有り、列をなしてるまでではないが、登記の無いことの証明書の取得並びに後見人登記簿の取得のために、途切れることなく人が訪れている。以上のように可成り大量の資料であり、資料の収集やまとめのために約1ヶ月程掛かってまとめ上げた。
書類の準備ができたところで、家庭裁判所に「申立て」の予約のために電話をして、約半月後に日程が決まった。当日、東京地裁に出向き、審査のための審査料の印紙及びその後の郵便物用の切手を地下売店で準備し、手続を済ませ、事情聴取を受けた。
提出書類に従って2時間ほど、事情聴取は行われたが、提出書類の医師の診断書によって、本人の認知度が確認できたため、本人に対する再度の精神鑑定は不要となり、直接審判を受けることとなった。そして半月後に審判の結果が送られてきて後見人として認定された。
家庭裁判所に確認したところ、半月ほどで法務局に登記がなされるとのことであったが、結果的には1ヶ月ほど掛かってやっと登録済みの通知を貰い、再び東京法務局に出向き登記簿を取得して、やっと簡易保険を受け取るための手続ができた。最終的に保険を受け取るまでに3ヶ月以上費やしたことになる。
今回の処置によって、妻の財産は家裁の管理下にあり、後見人として妻の財産を管理していく必要があり、年度毎に預貯金など収支報告が義務づけられたことになった。
余談だが被成年後見人になることによって、妻は選挙権を失った。早速7月に都議の選挙があったが、今まで投票券は2枚送られてきたものが妻の投票券は無く1枚となっていた。ここ数年選挙権はあっても棄権していたので、投票券が送られてきても投票には行かないのであるが、来るべきものが来ないと「人権」を失ったことを実感し、一抹の寂しさを感じる。 |