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〜75000HIT記念リクエスト小説<HU7様へ>〜

アトリエ大王 Vol.3


Part−5 演出

縦ロール

「こんにちは〜、親父さん、衣装合わせに来ましたよ〜」
「おぅ、マリーにエリーか! 準備はできてるぜ、まあ入ってくれ!」
「それじゃ、まず王女様の衣装からですね。このピンクのドレスを着ていただいて・・・」
「お、こいつは豪勢だな・・・どうだ、似合うか、ええ?」
「うっぷ・・・は、はい、よく似合ってます」
「く・・・(正面から見ないようにしよう)」
「それで、あと、王女様の髪型なんですけど・・・」
「おぅ、それよ、それ! どんな髪型なんだ?」
「いろいろと相談したんですけど、やっぱり王女様なら金髪縦ロールかな・・・って。はい、着けてみてください」
「お・・・おおおお」
「どうしたんですか、親父さん」
「い、いやな・・・。以前、あんたやエリーに育毛剤を作ってもらった時のことを思い出しちまってよぉ・・・。あん時ゃ、いい夢見させてもらったよなぁ・・・。うううう」
「泣いてる・・・」
「マジ泣きだ・・・」

青春

「さあ、じゃ、今度は勇者の方の衣装合わせをしましょう」
「おぅ、服の方は自前で用意しといたぜ。昔、冒険者だった頃に着ていた服とマントだ。あと・・・アレの方は言った通りにしてくれたかい?」
「はい、ちゃんと用意しましたよ。長髪で黒髪のカツラですね」
「おぅ、ありがとよ! そうだ、これだよ、これ!」
「あ、あの〜・・・」
「あああ、あの頃はよかったなあ・・・。長い、つやつやの黒髪も自前でよぉ。冒険求めて、王国の端から端まで駆け巡ったもんだ・・・。髪はなが〜い友達たぁ、よく言ったもんだよなぁ・・・。ああ、リリー、おまえは今どこにいるんだよぉ・・・」
「あの〜、親父さん?」
「だめだ、浸りきってるよ・・・」
「帰りましょうか」
「そうだね、ほっとこ」

ねこ

「こんにちは〜、フレアさん」
「あ、ふたりとも、いらっしゃい」
「衣装の方は、進んでますか?」
「ええ、大丈夫よ」
「すみません、こんなにたくさん。お手数かけちゃって」
「いいのよ。お裁縫は好きだし、他のおかみさんたちも手伝ってくれてるし」
「ところで、フレアさん、自分の分の衣装はできてます?」
「ええ、このねこの着ぐるみでしょ」
「わあ、かわいい」
「ねえ、着て見せてくださいよ」
「いやだ、恥ずかしいわ。ひとりの時に着てみたことはあるんだけど、本番まではお預けよ。お父様にも内緒なんだから」
「なんだ、残念」
「でも、ひとつだけ気になることがあるのよ。首から下はこの着ぐるみでいいんだけど、作ってみた猫耳が、もうひとつ気に入らないの」
「あ、それならご心配なく! 奥の手を用意しましたから」
「マ、マルローネさん!? その薬びんは・・・!?」

禁断の秘術

「はい、フレアさん、ちょっと頭を出してください」
「こう?」
「はい、いきますよ〜、ちょいちょいっと」
「きゃっ、冷たい!」
「はい、おしまい」
「ねえ、今の、何だったの?」
「明日になればわかりますよ」
「あ、あの・・・マルローネさん?」
「ん? どうしたの、エリー?」
「今、フレアさんの頭にかけた薬って、もしかして・・・」
「そう! ケントニスから持って帰って来たあたしの秘薬よ」
「やっぱり・・・(汗)」
※この秘薬についての詳細は、「マリーの禁断の秘術」をご覧ください。

不安要素

「ロマージュさん、お疲れ様です」
「あら、エリーちゃん」
「すみません、今回はお芝居の振付を全部お願いしちゃって」
「いいのよ。新しい踊りを考えるのは楽しいし・・・。ただ、メインの踊り子役の役者が、なかなか踊りを覚えてくれないのよね」
「おいおい、無理言わないでくれよ。俺はあんたと違って、本業は冒険者なんだぜ」
「あ、『踊り子』役のルーウェンさん」
「剣を振りまわすのとは動きがまったく違うもんだから、たまらないぜ。しかも、ロマージュときたら容赦なくしごくしな。だいたい、なんで俺が『踊り子』で、ロマージュが『大臣』の役なんだよ?」
「あ〜ら、文句を言うなら動きをちゃんとこなしてからにしなさい。それとも、また手取り足取り特訓してあげようかしら、うふふ」
「勘弁してくれ〜!!」
「あ、逃げちゃった・・・」
「それはそうと、エリーちゃん、このラストシーンなんだけど。あたし、ちょっと気になってるのよね。この台本だと・・・」
「ええ、でも、マルローネさんはともかく、クライスさんが気付かないはずはないですし、きっと何か考えがあるんだと思いますよ」
「そうね。でもなんだか不安だわ・・・」

黒騎士

「あら、ミルカッセ、こんな裏庭で練習してるの?」
「あ、マルローネさん、こんにちは」
「へええ、これが『黒騎士』の衣装かぁ。なかなかの迫力ね。まさに“悪の権化”って感じ」
「ちょっと身長が足りませんけど」
「まあ、そのへんは気にしないってことで。舞台の上では、きっと真に迫って見えると思うよ」
「ええ、わたしもそう思います。実はさっき、教会の祭壇でセリフの練習をしていたら、お父様が・・・」
「え? 神父様が・・・?」
「いきなり聖書と十字架を振りかざして迫ってきて、ものすごい勢いで『悪魔よ去れ!!』って絶叫されて・・・。びっくりしてしまいましたわ」
「こ、この娘は・・・(汗)」

七人衆

「あ、そういえば、『黒騎士』の手下の役で妖精さんを割り振っておいたんだけど、ちゃんと練習してるかしら?」
「はい、さっきまで一緒に練習していて、今は休憩してもらってます。『黒の乗り手』の服を着せるのに苦労しましたけど」
「へ? なんで?」
「なんでも、黒い服を着るのは、ランクが下がってしまったような気がしていやなんですって。あ、ひとりだけ『オイラには関係ないぜ、ベイベ!』とか言ってる妖精さんがいましたけど」
「ふうん。ちょっと見てみたいな〜、練習風景」
「はい、いいですよ。・・・みなさ〜ん、練習再開ですよ〜、集合してくださ〜い」
「は〜い!!」
「うわ、黒妖精の集団・・・」
「ううう、うまくできなかったらどうしよう・・・。森へ帰りたいよぉ」
「フッ、ボクの才能をもってすれば、この程度の演技は他愛もないものさ」
「思うに、この台本には多少の欠陥がありますな。ボクの計算では・・・」
「嵐の予感がするぜ、ベイベ」
「は〜い、それじゃ、始めますよ〜。『今こそ奈落の底から甦れ! 闇に息づくものたちよ、大地を生贄の血に染め、地獄の炎でなめつくせ! 勇者たちを皆殺しにせよ!』
「このセリフ・・・。シスターが口にするセリフじゃないなあ。神父様が錯乱するわけだわ・・・」

逃走

「やれやれ、これではどうにもなりませんね」
「たしかに・・・」
「あれ、クライスにエリー、いつ来たの?」
「マルローネさん、本当にこれでいいと思っているのですか? この場面は、勇者と魔物軍団が対決するクライマックスシーンですよ。それなのに、『黒騎士』はともかく、妖精さん集団では、迫力のかけらも感じられません。これではまるで、“白雪姫と七人の小人”ですよ」
「いいじゃない、ウケれば」
「そういう問題ではありません」
「もう、わかったわよ! 迫力を出せばいいのね。・・・あ、そうだ!」
「どうしました?」
「ちょっと出かけてくる! エリー、『空飛ぶホウキ』、借りるわよ!」
「あ、ちょっと、マルローネさん!」
「行っちゃいましたね・・・」
「まあ、気にしないことにしましょう。あの人がいない方が、準備作業がスムーズに進むでしょうからね。さあ、明日は本番ですよ」
「でも、マルローネさん、いったいどこへ・・・?」


Part−6 楽屋

気合十分

「よっしゃああぁ!! 今日は本番だぜぃ!! 主役は俺様だぁ!! 気合入れていくぜ!!」
「まあ、あれ、何かしら」
「なんか、得体の知れないものが走っていくわね」
「ピンクのふわふわしたドレスと、金髪?」
「あんな人、『職人通り』にいたかしら」
「とにかく、関わり合いにはなりたくないわね」
「ママ〜、あれ、何?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
「おぅ、待たせたな! とっととおっ始めようぜ!」
「親父さん・・・。その格好で来たんですか?」
「ああ、昨日のうちから、待ちきれなくてよぉ! ああ、うずうずするぜ! ・・・あ、何するんだ、こら!」
「準備の邪魔です。出番まで楽屋に閉じ込めておいてください」

リアリティ

「さあ、これでよし!」
「マルローネさん、どうしたんですか? 楽屋のドアに『立ち入り禁止』なんて紙を貼ったりして」
「あ、エリー、あなたは関係者だから入ってもいいよ」
「何が入ってるんですか、この部屋」
「まあ、見ればわかるよ」
「・・・うわあ、魔物の人形ですか。実物大のアポステルですね。リアルだなあ・・・。まるで、生きてるみたい・・・。あ、動いた!」
「ああ、それ本物だよ」
「え・・・? ひえぇ!!」

調教師

「クライスに、戦闘シーンに迫力が足りないなんて言われちゃったからね。昨日、『エアフォルクの塔』へ行って、キリーさんに頼んで借りてきたんだよ」
「で、でも・・・」
「あ、だいじょぶだいじょぶ。人に慣れてる種類だって言ってたから」
「だけど、急に暴れ出したりしたら・・・」
「ん〜、あたしもそれが気になってね。念のために専属の調教師を頼んだんだ」
「調教師?」
「こんにちは、エリー」
「シ、シアさん・・・!?」
「そう、一晩シアに預けて、徹底的に仕込んでもらったんだよ」
「仕込むって・・・」
「けっこう楽しかったわ。この『はたき』を使うと、思い通りに動かすことができるのよ。子供の遊び相手に、1匹飼おうかしら」
「シアったら、すっかりその気ね」
「こ、この人たちって・・・(汗)」

釣り名人

「う〜ん、困ったなあ。どうしようかなあ」
「だからマルローネさんは思慮不足だというのです。私は知りませんからね」
「待ってよ、クライス〜」
「やっほ〜、久しぶり〜。ずいぶんにぎやかだね〜」
「あっ、ミュー! いつ帰って来たの?」
「ん〜、ついさっきかな〜。ねえねえ、お芝居やるんだって〜?」
「あ、そうだ、ミュー、手伝ってくれない? 人手が足りなくて困ってたんだよ」
「ん〜、いいよ。何をすればいいの?」
「ミューは、釣りはやったことあるよね」
「ん〜、けっこう得意だよ」
「よかった。それじゃ、この釣り竿を持って舞台の袖で待機して・・・。あたしが合図したら、針に引っ掛けて釣り上げてほしいのよ」
「何を〜?」
「王女様の、金髪縦ロールのカツラ・・・」

カンペ

「あ、あの・・・」
「あ、ルイーゼさん、どうしたんですか・・・。うわあ、似合いますね、『王様』の衣装」
「あの・・・、わたし、一生懸命練習して、セリフを覚えたのだけれど」
「はあ」
「あがってしまっているのかしら・・・。今朝になったら、セリフをひとつも思い出せなくなってしまっていたのよ」
「えええ!?」
「ん? どうしたの、エリー」
「あ、マルローネさん、大変なんです! 『国王』役のルイーゼさんがセリフを全部忘れちゃったって」
「もう・・・仕方ないなあ。まあ、こういうこともあろうかと、ちゃんと準備はできているしね。はい、エリーも手伝って」
「どうするんですか、こんな大きな紙」
「にぶいなあ。この紙にセリフを書いておいて、舞台の袖から見せるんだよ。頭はこういうふうに使わないとね」
「マルローネさんの頭は、非常時の帳尻合わせにしか働かないようですがね」
「クライス、うるさ〜い!(怒)」

落ち着いて

「え〜と・・・『よぉし、行くぜ、野郎ども! ぬかるんじゃねぇぞ!!』・・・やっぱりしっくり来ないなあ」
「ノルディス、大丈夫? もうすぐ本番だけれど」
「あ、アイゼル。正直に言ってしまうけど、ちゃんと演じられるかどうか自信がないよ。何回練習しても、迫力が出ないし」
「大丈夫。落ち着いてやれば、できるはずよ」
「でも・・・」
「とにかく、お茶でも飲んで、気を鎮めたら?」
「あ、ありがとう。・・・なんか、変わった味のお茶だね」
「実家から送ってきた、薬効のあるハーブティなのよ」
「なんか、がんばれるような気がしてきたよ」

ねこみみ

「フレアさん、仕度はできましたか?」
「あ、ハレッシュさん。今、行きます」
「う、うわ・・・」
「え?」
「あれ、どうしたんですか」
「あ、エリーさん。わたしを見たら、ハレッシュさんが急に凍りついたみたいになっちゃって」
「うわあ〜、かわいいですね、その猫耳(ハレッシュさんが壊れるのもわかるよ・・・)」
「びっくりしたわ。朝、起きたらこんなふうになってしまっていて。お父様は卒倒するし、クーゲル叔父様は赤面してどこかへ行ってしまうし」
「あ、でも、心配しなくても、1週間もすれば消えますから」
「でも、気に入ったから、ずっとこのままでいようかしら。お店の名前も『猫耳亭』に変えたりしてね」
「ディオさんが絶対に許してくれないと思いますけど・・・」

瀬戸際

「さあ、みなさん、準備はできましたか〜!? もうすぐ開演ですよ〜」
「マルローネさん、ずいぶんと余裕ですね。私は不安でたまらないというのに。細かい詰めが終わっていない部分も、まだたくさん残っているのですよ」
「もう、クライスったら、弱気ね。やるべきことはすべてやったんだし、もっとどっしり構えてなきゃ。『人事を尽くして天命を待つ』ってやつね」
「まったく人事を尽くしていないあなたが言うべきセリフではありません」
「まあ、いざとなったらこのメガホンで、舞台裏から指示をするようにするから。これも監督としての役目だもんね」
「まったく、あなたという人は・・・。本当に『火事場のバカ力』というやつですね」
「誰がバカですって!?」
「あ、ほら、開演のベルですよ」
「よぉし、いっけえぇ〜っ!!」


創作劇 『アルケミィ・クエスト』 あらすじ

昔、とある王国に王女が誕生した。
誕生を祝うパーティが行われ、王国のすべての人民に招待状が送られた。ところが、なぜか北の山奥に住む魔女のところにだけは、招待状が届かなかった。魔女は激怒し、王女に呪いをかけた。それは、王女が15歳になった時に、大切なものをふたつ(きれいな髪ときれいな声)失うという呪いだった。
呪いのことを知った国王は、錬金術師に命じて、呪いから王女を守る魔法の護符を作らせ、常に王女の身の回りにそれを置いた。しかし、王女が15歳になった誕生日の夜、魔女の命令を受けた盗賊の一味が城に侵入し、魔法の護符は奪われてしまう。同時に、呪いが効果を現し、悲しいかな、王女は髪と声を失ってしまう。
悲嘆にくれる国王のもとへ馳せ参じたのは、ひとりの勇者だった。志願したふたりの騎士と共に、勇者は盗まれた護符を求めて魔女の住処へ向かう。
しかし、ふたりの騎士は出自の違いを理由に反目を繰り返し、勇者を悩ませる。また魔女の手下の黒騎士が指揮する“黒の乗り手”をはじめとする様々な魔物が勇者一行を襲う。
無数の冒険(村人から情報を得たり、ねこを助けたり)を乗り越え、一行はついに魔女の本拠にたどり着く。力を合わせて危機を切り抜けるうちに、反目していた騎士の間にも友情が芽生えてくる。そして、一致団結した勇者たちは魔女を打ち倒し、護符を取り戻す。
呪いは解け、王女は髪と声を取り戻す。喜びに湧きかえるお城。祝賀パーティは、いつまでも続くのだった。

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