《間違いを 嫌がるときが 不健全》

 結婚当初,連れ合いが料理をしている途中,小皿にスープを取って,私に味見をさせることがありました。最近はベテランになったのでしょうか,そういうことはなくなりましたが,味加減は多少揺れているようです。
 ものごとの始めには必ず試しがあります。とにかくやってみて,具合が悪い点を見つけだし改めることで望ましい結果を引き出します。スポーツの訓練も能力の限界で起こる失敗を少しずつ乗り越えることであり,同じプロセスです。子どもの育ちも同じように考えることができます。失敗や間違いをすることで気をつける点を見つけだし,その対応を身につけることが育ちです。
 育ちの途上は,小さな間違いをたくさん経験する時期です。まず間違いや失敗に気づくこと,次に反省から間違いの原因を見つけ,さらに修復する法を学び,最後に再度挑戦しやり遂げること,つまり「失敗・反省・学習・挑戦」という育ちの4サイクルエンジンを回し続けることが育ちです。このサイクルが順調に働いている状態を健全と呼びます。
 友だちつきあいの場合には,多少のいざこざは起こり得ます。間違いに早く気づき,「ゴメンナサイ」と反省すれば,仲良くなれます。しかし,もし間違いに気づかないと悲惨な関係に陥ります。いじめという症状も,悪ふざけで相手が泣いたらそこでやめるという気づきと歯止めを欠落していることから起こります。思いやりという健全さも「間違いへの気づき」から生み出されるものです。

(リビング北九州掲載用原稿:96年12月)