《子の姿 家族しないと 見えてこず》

 子どもの具合が悪くなり病院に駆け込むと、始めに問診を受けます。お医者さんに「平熱は?」と尋ねられて、返事に困ったことがあります。赤ん坊の時ならいざ知らず、育った子どもの元気なときの熱など計ったことがないからです。
 いじめや非行に関する親への啓発では、子どもが普段と違っていないか気づきなさいということが求められています。ここでも大切なことは普段の子どもの姿を知ることです。その場合に気をつけておくことは、子どもだけの姿を見るのではなく,親子や夫婦を含めた家族全体の普段の姿を見ておくということです。
 親は子どもが自分と違ったときにしつけを発動する一面があります。静かな親であれば子どもが騒いだときに「静かにしなさい」としつけます。静かな子どもには何も言いません。陽気な親であればおとなしい子どもが気になります。親が片付け上手であれば散らかす子どもに「片付けなさい」と命じます。子どもは親が受け入れてくれるように育っていきます。親は似せようとしつけをし、子は似せられていくので、家族としての生活の中で子どもは親に似ていきます。
 夫婦も同じです。生まれも育ちも違った夫婦が、お互いに影響しあって家庭を作っていく中で似たもの夫婦になります。気がつけば連れ合いに飼い慣らされたという思いがしないでもありませんが、お互いに望ましいと思う夫婦の形を二人で作り上げたようです。
 子どもが生まれ家族ができて、わが家という家庭を作ることが日常的なしつけのベースです。子どもをしつけると考えて子どもを家族から切り離しては、親子も無理をしてしまい、お互いに普段の家族の姿を見失うことになります。

(リビング北九州掲載用原稿:98年1月)