《お笑いも 立場変われば 不愉快に》

 ジョークが好きで,仕入れたばかりのジョークを連れ合いに試してみますが,あまり好評ではありません。下手な話術のせいばかりではなく,私が面白がっているものが男性の立場からのジョークであるせいもあります。
 例えば,明石家さんまと所ジョージのトーク番組で,ゲストの女性の「グイグイ引っ張ってくれる人が好き」という発言に,さんまが「そういってついてきた試しがない」とフォローしたお笑い。別のさんまの番組で嫌いな言葉として視聴者から出された,待ち合わせのとき遅れてきた彼女の弁が「待った!」であるとか。
 外国の古典的なジョークを一つ。有名な女優がパーティで会った天才に「あなたと結婚したら,あなたの頭脳と私の容貌を兼ね備えた子どもが生まれるでしょうね」とにこやかに話しかけると,天才は「もしあなたと結婚したら,あなたの頭脳と私の容貌を兼ね備えた子どもが生まれるでしょう」と皮肉な答えをしました…。同じ言葉が立場の違いで逆転します。天才だが醜い,美しいが愚かという天は二物を与えずという類型化のおもしろさを前提にしたジョークです。
 ジョークではありませんが男性には妙に受け入れられる,近世フランスの才媛の言葉として「私は男性に生まれなくて幸せだった。もし男性に生まれていたら女性と結婚しなくてはならないから」という言葉も,現代女性は反論ありかも。
 ジョークは必要最小限の言葉で隙を作って楽しむものですが,意を尽くそうという会話には言葉の飾りが必要です。用件だけではなく前後に無駄とも思える言葉をちりばめることで精度が確保でき,余計なことを言うことから温かさが生まれます。コラムは大変!

(リビング北九州掲載用原稿:98年9月)