《連れ合いに 似た子憎いか 可愛いか》

 連れ合いは女性には名の知れているらしい,あるアクセサリーの会社に勤めています。時折小さなピンブローチを買ってきて,背広の左襟元にさしてくれます。対称なものであればいいのですが,デザイナーの愛犬の形をしているものなどはすぐ上下が逆向きになってしまいます。せっかくつけているのだからと叱られますが,無頓着さは直りそうもありません。
 普段からファッションには無関心で,ネクタイの選択などはあるものを順番に締めているだけです。連れ合いはもうあきらめています。父は身につけるものにはうるさくて,良いものをさりげなくというおしゃれさんです。次男が似ていて連れ合いとは話が合うようで,いつも蚊帳の外にはずされています。
 隔世遺伝ということがあるのでしょうか。親よりも祖父母に似ていると思うことがあります。生まれ変わりという言葉がありました。ちょうど祖父母が亡くなるのと入れ替わりに孫が生まれていたことから,そのように感じられていたのかもしれません。今のような長寿社会では実感できなくなっています。
 我が家は男の子二人ですので,連れ合いの姿を残してやれないことが最大の悔いになっています。ただ遺伝子は伝わっているはずですから,孫に女の子が生まれることを密かに願っています。隔世遺伝を信じたい事情もあります。
 ところで,上の子が可愛くないと言うお母さんがいるようです。その理由は長男が夫に似ているからということだそうです。似ているから可愛いのではないかと思いますが,どうも夫婦とは分からないものです。親が仲良くしていることが子どもにとっては心の平安を得る必須の条件です。夫婦円満が子育ての第一歩であると言われていますが,子どもに対する思いが夫婦の円満度を測る目安になることもあるようです。

(リビング北九州掲載用原稿:99年2月)