《つながりが 積もり積もって お陰様》

 運転中のことです。信号待ちをしていると,突然前面ガラスに水滴が降り注いできました。一瞬小雨が降ってきたのかと思いながらも,快晴なのにおかしいなと見回しました。前の車を見ると運転している中年の女性がウィンドウォッシャーを盛んに使用しています。洗浄液は前の車の窓をはるかに飛び越えて後続の私の車に飛んできていました。前の車の窓はいっこうにきれいにならないようで,のぞいてみると前車の窓はほこりがワイパーの形に切り取られています。前日の小雨で土埃が窓に定着していたようです。運転前に濡れた雑巾でサッと拭うのがドライバーの始業点検でしょう。とにかく後続の車にとっては,ウォッシャー液をボンネット上にまでまき散らされて迷惑この上ないことです。洗浄液がどこに飛んでいるのかちょっと確認を願いたいものです。
 子どもが頭をしぼって算数の宿題をしているとき,ノートの字が汚いのを見とがめて,字はきれいに書きなさいと注意しませんか。子どもは算数の問題を考えることに没頭できなくなります。あれこれと注文をつけるのは足を引っ張るようなものです。育ちでは一度に一つのことを学んでいくことが大切です。慣れてから別の学びを加えていけばいいのです。
 大人になるとそうはいきません。「すればいいんでしょう」と言うと,「ただすればいいというものではない」と叱られます。静かに,丁寧に,きっちりと,早く,正確に,などの条件が満たされなければなりません。それらが社会生活の円滑さを生みだしているからです。趣味であればいくら遅くても,間違えても誰にも迷惑はかけません。大人とは周りにいる人とのつながりに気配りを怠らない人です。

(リビング北九州掲載用原稿:99年6月-1)