《勘定の 間違い見つけ つらくなり》

 ある団体の世話役をしている連れ合いが,班毎に集金してもらったお金の最終計算をしています。勘定が合ってほっとしています。もし足りないということになったら,誰が間違えたのか探し出して追徴しなければなりません。お金のことですから気が重くなり,信頼関係を壊さないためについ不足分を被ってしまおうかという気持ちにもなりかねません。
 お金を数えるとき,千円や百円はことさら一を付けずに言い表します。一百円とは言いにくいですね。ところが,億円とか万円とは言いません。一万円と,四桁毎の位取りには一の数詞を付けています。
 漢数字を縦書きに書くときに,四千三百二十一円とか三百二十一番地ですか,それとも四三二一円とか三二一番地ですか。後の書き方は福沢諭吉が始めたと,最近読んだ本に書いてありました。
 一から十まで声を出して数えて,次に十から一まで逆に数えて下さい。ところで四は昇順で「し」と言い,降順では「よん」と呼びませんでしたか。
 一つ,二つと数えるとき,九つまでは「つ」が付くのに,十には「つ」がありません。なぜでしょう。それは五つ=「いつつ」が「つ」を一つ余計に横取りしているからという他愛のないなぞがあります。
 子育ての相談では,「つ」が取れたら一人前扱いをしなさいとアドバイスされます。年齢が九つまでは「つ」が付きますが,十には「つ」が付かないことからそのような表現がされています。英語では十代に対してティーンエイジという表現がありますが,それに倣うと「つ世代」と言えるのかもしれません。
 成人するのは二十歳ですから,十代は一人前としての仮免許期間にあたります。子どもの側に付いてしっかり見守り,もし成長上の勘定間違いが見つかったら親が背負わなければなりません。親とはつらくて損なものです。

(リビング北九州掲載用原稿:99年8月-3)