《ほめる恋 忘れた夫婦が 愛感謝》

 テレビで料理を話題にした番組の中で,「お酒のつまみにちょうどいい」という料理の感想があります。これはほめているのでしょうか。お酒で麻痺した舌でないと食べられないというのであれば酷評になります。しょせんおつまみということです。遊ぶのにはいい人だけど結婚の対象ではないという言い方に近いかもしれません。
 ほめるのは難しいものです。女性を口説くときは,二番目をほめなさいとその道の達人が言っていました。例えば目が魅力的な人には,形のよい唇をほめます。目の魅力は本人も自覚していますが,思いもしないほめ言葉に出会うと,この人は私を分かってくれていると思い好感を持つそうです。本当かどうか確かめようと連れ合いに試したら,軽く一蹴されてしまいました。お互い知り尽くしているので,相手を間違えたようです。
 連れ合いにはほめる手だては通用しません。よい面も悪い面も丸ごと抱え込んで夫婦をしてきたのですから,何もかもが当たり前になっているからです。考えてみると,連れ合いの誕生日にささやかなプレゼントと一緒に短いラブレターを渡していますが,そこでは感謝の気持ちを伝えているだけです。
 子どもはほめて育てなさいと言われます。幼いうちはほめてやれますが,成長するにしたがってほめることができなくなるようです。もちろん親の目が子どもの気になる点だけを見すぎているせいもありますが,よい点を当たり前と思っているからです。子どもが手伝いなどのよいことをしてくれたときには,必ずありがとうと感謝することが自然なしつけになるでしょう。それが子どもに家族の一員であるという愛を伝え,またしてあげようという励みを与えます。
 ほめ言葉は恋の手練手管,愛には感謝が相応しいのかもしれません。

(リビング北九州掲載用原稿:99年9月-2)