《忙しい その一言に 泣かされる》

 地域やPTAの役員をお願いするとき,「忙しくてできない」という断りが返ってきます。それが通用している間は活性化は望めません。じっくり時間をかけた世話をしてくれる人を求めている間は,結果としてすべてを押しつけることになります。自分たちみんなですべきことを世話役にお願いするからです。
 人はどうしても自分の世界に縛られています。時間のある人が立てる企画は時間的に余裕があって実行できるものになります。そこで多くの人にとってついていくのが大変なので,いきおい世話役が自分ですべてを抱え込んでしまいます。その結果,誰も協力してくれないと愚痴が残されます。忙しい人の立案は忙しくてもできるものになりますから,大部分の人が受け入れることができます。どんなに精緻な計画でも参加してもらえなければ無意味です。それよりたとえ小さな活動でも実行できれば,事態は確実に前に進み活性化します。
 忙しい人はとにかくできることを考えているので周りの人に頼られて,さらに忙しくなるというサイクルの中にいます。地域を活性化しようとするなら,最も忙しい人の力を借りることが打開策の一つです。もちろんみんなが自分の持っている力を出し惜しみしないことが前提です。忙しい人がやってくれているのだから手伝わなければと思うのが人情でしょう。もし時間に余裕のある人がやってくれているのなら,任せておこうとおんぶするのもまた人情です。人情とは相手の状況をどう判断するかによって変わってきます。
 誰でも忙しいのが現実ですし,逃げ口上に過ぎないかもしれません。本心は面倒なのでしょう。子どもたちも勉強を盾にして面倒なことは逃げています。家庭の世話役を引き受けている母さんはたまりません。みんなですれば楽なのに。

(リビング北九州掲載用原稿:00年3月-1)